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Apr

【平家物語】アニメで学べる日本の教養と現代語訳ならではの面白さに迫る

出典 公式サイト

 

琵琶法師によって語り継がれ、現代人の多くが一度は名前を耳にする『平家物語』。その『平家物語』がアニメという形で現代に復活した。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」。日本人なら誰もが知っているこのフレーズから、平家の没落が描かれる。

現代に復活した『平家物語』は、実力派クリエイターが集結するサイエンスSARUによって制作された。そして監督は、京都アニメーションで数々の名作を生み出してきた山田尚子だ。

今回は『平家物語』の面白さや魅力について解説していく。

日本の教養『平家物語』をアニメで学べる

『平家物語』は、日本人なら誰もが知るコンテンツであり、教養でもある。だが、日本人の多くは『平家物語』の内容をそこまで知らないのではないだろうか。大まかに「平家が源氏に負けた」ということを知っているぐらいで、その過程でどのような事件が起こったのかについては、よく分からないのが現状だろう。しかし歴史は、流れを知ることでようやく面白さが理解できる学問だ。そういった意味では、堅苦しい文字ではなく、誰もが楽しめるアニメで『平家物語』流れを学ぶことができるのは素晴らしいことのように思える。

現代語訳ならではの面白さ

『平家物語』の原作は、鎌倉時代の軍記として有名な『平家物語』そのものだ。だが、当時の日本語は古文なので、現代語に翻訳されたものが必要になる。今回は古川日出男が訳者の『平家物語』が底本として採用されているようだ。

現代語訳は、訳者によって表現がわずかに異なるため、誰の現代語訳を原作にするのかが重要になってくる。そのため同じコンテンツでも、全く違う雰囲気になることも珍しくない。解釈のやり方が異なるからだ。ただ、『平家物語』に関して言えば、現代語に近い形で訳されているのは古川日出男先生が訳した『平家物語』一択になる。

豪華クリエイター陣によるエンターテインメント

出典 公式サイト

 

『平家物語』は豪華クリエイターが集結していることで話題になった作品だ。筆者も、クリエイター陣を見て「この作品は絶対に見なければ!」と思い、『平家物語』を視聴した。

まず、監督は山田尚子が担当している。山田尚子監督は京都アニメーションで数々の作品を担当してきたクリエイターだ。代表作としては『けいおん!』シリーズ『聲の形』『たまこまーけっと』が挙げられる。山田尚子監督の作風の特徴としては、非常に柔らかな動きと、まるで本物の人間のような表情描写がある。特に表情描写のセンスはとても秀逸で、筆者個人の感想としては「人間よりも人間らしい」と思うほどだ。山田尚子監督の作風は『平家物語』にも相性抜群で、平安時代を想起させる優雅で柔らかなタッチが印象的だった。

そしてシリーズ構成・脚本は吉田玲子が担当している。吉田玲子は山田尚子監督とタッグを組み、『けいおん!』『たまこまーけっと』などの京アニ作品のシリーズ構成・脚本を手掛けてきた。そのほかにも『のんのんびより』のような日常作品や『ドラゴンボールZ』のようなバトル系作品、ジブリ作品の『猫の恩返し』の脚本を担当したこともある。実力派で経験豊富な脚本家であり、原作を踏襲するだけでなく、アニメオリジナル的な要素を取り入れるセンスにも長けている。『平家物語』でも独自の要素を挿入することで、誰もが楽しめる現代エンターテインメントに昇華させた。

また、音楽を担当した牛尾憲輔にも注目だ。牛尾憲輔はアニメの劇伴作品として『ピンポン』『ブギーポップは笑わない』のような個性派作品を担当してきた。また、山田尚子監督が手がけていた『聲の形』『リズと青い鳥』などの劇伴も担当している。『平家物語』でも個性的な音楽が採用された。平安時代を想起させる琵琶を用いた劇伴は何となく想像つくだろう。しかしそれだけでなく、『平家物語』にゴリゴリのロック曲も挿入したのだ。一見するとマッチしないように思えるが、不思議なぐらいにマッチした。

そして声優陣も人気声優ばかりが名を連ねる。主人公のびわを担当する悠木碧を始め、櫻井孝宏早見沙織岡本信彦花江夏樹千葉繁杉田智和梶裕貴水瀬いのりなど、他作品なら主人公を演じているような声優が起用された。『平家物語』は堅苦しい内容のように思えるので、見るのに少し躊躇してしまうこともある。だが、声優陣の顔ぶれを見て、『平家物語』を見始めた人もいるはずだ。

京アニが作っているようなもの?

アニメ業界で最も信頼されているアニメ制作会社の1つに、京都アニメーションが挙げられると思う。そして『平家物語』のクリエイター陣は、京アニ作品を担当してきたクリエイターだ。それがなぜ、サイエンスSARUでアニメを作るようになったのか。考えられる理由として、放火事件によって京アニのリソースが大幅に削減されてしまったことが挙げられる。リソース的に京アニでアニメを作ることが厳しくなったため、他のアニメ制作会社のリソースを使ってアニメを作ったのだ。

つまり『平家物語』は、京アニのクリエイターがサイエンスSARUのリソースを使って制作したアニメだと捉えてもいい。そう考えると『平家物語』は京アニが製作しているようなものなので、『平家物語』が面白くないわけがないのだ。

史実に則りながらSF要素を散りばめる

『平家物語』は原作の内容に則った上で、SF要素が散りばめられた。具体的に言うと、未来視する能力や死者を視ることができる能力が登場するのだ。もちろん、実際の史実にそのような記述はない。つまり、クリエイター陣がリメイクしたということだ。

『平家物語』は、当然のことながら結末が目に見えている。日本人の誰もが習った内容だからだ。そのため、現代アニメにありがちな、次回が気になるようなシリーズ構成をするのが難しい。そこで、『平家物語』を視聴している人が結末を知っていることを、逆手に取ったのだ。「平家が滅びる」というゴールをあらかじめ説明した上で、平家の幸せな日常を描く。しかも「幸せな日常」は、山田尚子監督のような京アニクリエイターが最も得意とする構成だ。

このようにして、『平家物語』が現代エンターテインメントに昇華され、誰もが楽しめるアニメに仕上がった。

シェイクスピアと同じ技法

世界の教養とも言われているシェイクスピアも、『平家物語』と同じ手法を取っていた。史実をベースにファンタジー要素を散りばめたのだ。シェイクスピアの場合は中世ということでキリスト教やギリシャ神話のような神話の要素を取り入れていった。魔女を登場させたり化物を登場させたのだ。それによって人間の本質を浮き彫りにし、物語に仕立て上げる。

『平家物語』も「未来視」という能力を登場させることで、日常シーンの意味合いを全く異なるものに仕立て上げることに成功している。今後は古典をベースとしたファンタジー作品が登場するようになるかもしれない。

まとめ

それでは本記事をまとめていく。

・『平家物語』は訳:古川日出男の原作が底本となった
・『平家物語』は京アニ系のクリエイターが集結していて、声優も豪華
・『平家物語』はファンタジー要素を取り入れることで、誰もが見やすいアニメに仕上がった

2022年5月28日、サイエンスSARUによって『犬王』が公開される。『犬王』は『平家物語』から数百年後の室町時代が舞台となっている。『平家物語』を視聴したのであれば、『犬王』もぜひとも視聴するべきだろう。

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