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Sep
純粋な子供と闇を抱える大人たちのギャップ…【うらみちお兄さん】
『うらみちお兄さん』とは?
漫画家久世岳によるWeb漫画作品です。
『comic POOL』にて2017年より連載を開始し、2021年9月現在で単行本は6巻発売しています。
6巻までの累計発行部数は、電子版を含め150万部を突破しており、第3回「次にくるマンガ大賞」の『Webマンガ部門』第1位、2017年度の「WEBマンガ総選挙」の『インディーズ部門』第1位受賞と数々の賞を受賞している人気の作品となっています。
2021年7月からアニメも放送されますます注目を浴びている作品です、
あらすじは、教育番組「ママンとトゥギャザー」で体操のお兄さんを務める表田裏道、31歳独身彼女無しが主人公で、彼を取り巻く人物や日常を描いたブラック系ギャグ漫画です。
“うらみちお兄さん”として、番組内では子供たちに笑顔を振りまく優しいお兄さんですが、彼には裏の顔があります。
「しんどい」、「辛い」等マイナスな単語を吐き、表情筋が死んだ真顔で生活をするのが彼の裏の顔。
子供の純粋な質問に落ち込んだり、プロデューサーに忖度したり、とんでもな衣装を着させられたり、生意気な後輩や個性豊かな同僚たちと共に不安定ながらも安定した毎日を送っているのです。
『うらみちお兄さん』の登場人物
表田裏道(おもた うらみち)
本作の主人公。
教育番組「ママンとトゥギャザー」に“うらみちお兄さん”として体操のお兄さんを務めています。
31歳、独身、彼女無しで元体操選手、趣味は筋トレ。
外見は爽やかな筋肉質のイケメンですが、情緒が安定しなく、暴言を吐いたり、後輩である兎原をしめたり、子供の前で思わず大人の世界の闇を暴露したりとネガティブな面が見え隠れします。
それでも、子供たちの信頼で成り立っている仕事を全うするため、作り笑いで子供の前に立つ日々。
プロデューサーの無茶な指示にも逆らわず、お偉いさんの子どもに忖度をして腰を痛めながらも頑張って仕事を続けます。
毒を吐きながらもその核心めいた発言にハッとさせられることが多いキャラクターです。
蛇賀池照(だが いけてる)
「ママンとトゥギャザー」に“いけてるお兄さん”として歌のお兄さんをしています。
27歳、独身で、音大卒の元ミュージカル俳優。
名前通りのイケメンで高身長だが、性格が天然で空気や行間が読めない、さらにはハサミを使えない、アナログ時計を読めないなど残念な性格の持ち主。
これだけでもすでに残念なイケメンですが、彼にはさらに残念なことがいくつかあります。
「チンアナゴ」や「チンダル現象」など「チン」のついた言葉に笑ってしまうほどレベルの低い下ネタが好きで、うらみちが面白がって「チン」のついた言葉を連発するたびに一人ツボに入って笑い続けてしまうほど。
それ以外は基本ぼーっとしており、なぜかいつもおにぎりのことを考えています。
小百合という愛犬を飼っていますが、小百合も基本おにぎりのことを考えて、下ネタが好きという共通点があります。
ピュアな人物で、兎原がお金を貸してほしいといきなりお願いしても、理由も聞かずに「いいですよ」と答えてしまうほど、サンタさんのことも信じています。
うらみちとは違い基本毒は吐きませんがちょっとズレている人物です。
多田野詩乃(ただの うたの)
「ママンとトゥギャザー」に出演する「歌のお姉さん」。
うたのお姉さんと呼ばれている32歳、独身、彼氏は売れない芸人で6年同性していますが、なかなか結婚には結びつかない様子。
有名音大を卒業後、売れないアイドル、ものまね演歌歌手、ナイトクラブのジャズシンガーをしていた経験があります。
お酒が好きで、飲み会などには率先して参加していますが、飲み会ではよく結婚できないことについて愚痴をこぼしています。
結婚について闇を抱えているため、子供たちの前で男選びがどれだけ大切かを熱弁していたこともあります。
うらみちほどではないが、結婚が絡んだりすると情緒不安定な面がある彼女ですが、面倒見がよく常識人。
うらみちが着せられるコスプレがツボで歌えなくなってしまうことが多々あります。
兎原跳吉(うさはら とびきち)
「ママンとトゥギャザー」で“ウサオ君”という着ぐるみを担当する京都出身の28歳で独身。
うらみちの大学の後輩で熊谷とは大学の同期。
ギャンブルとガールズバーとお酒が好き。
常に金欠で、よく「お金を貸してほしい」とうらみちや熊谷に持ち掛けているくらいダメ人間。
また、うらみちにちょっかいをかけたり、一言多かったりするためよくうらみちに八つ当たりをされていますが、自宅にいきなり遊びに来ても家に入れてもらえたり、大学時代は京都旅行に熊谷と3人で行くなど、かわいがられている様子です。
酒好きですが、お酒に弱いためすぐに酔っぱらい「面白くなってモテたい」とよく嘆いていて、キャラが薄いのがコンプレックスなよう。
熊谷みつ夫(くまたに みつお)
「ママンとトゥギャザー」で“クマオ君”という着ぐるみを担当する福井県出身の28歳の独身。
釣りが好きで、兎原と同じくうらみちの大学の後輩で、大学時代は兎原と同居していました。
基本兎原とよく一緒にいますが、性格は真逆でクールかつ無表情で大人しく、人付き合いが苦手で猫の前でしか笑顔を見せません。
兎原と違い頭がよく、世渡り上手で、保身のためには平気で兎原を裏切ります。
出会った当時はうらみちに対し苦手意識があったようですが、今は映画のDVDを貸し合ったり、うらみちの姪へのプレゼントを一緒に考えてあげたりするほど仲が良いです。
『うらみちお兄さん』の魅力
名言の数々
うらみちお兄さんと言えば、闇を抱えまくっているキャラクターですが、そんな彼が発する毒というか暴言と言うか心の闇というかは、核心をよくついてくるなと実感できるものが非常に多いです。
社会人の方にはよく刺さり、子供には大人の辛さがよくわかるそんな言葉ばかりです。
1巻の1話から
「諦めても終わらせてはもらえない試合だってあるんだよ…「人生」とかね…」
2巻の10話から
「周りの人間は最後まで付き添ってはくれないんだよ。努力も苦悩も誰も一緒に抱えられないし最後はみんな等しく一人なんだからね」
3巻の28話から
「…お兄さんだけじゃないたくさんの大人達が、どうして今日も生きているか知ってるかな? ”責任”という呪いのような言葉に縛られて、悪くないことにもごめんなさいしてきたからなんだよね」
とブラックな発言もありますが、人生の先輩としてうらみちが言う優しいセリフもまた刺さります。
1巻3話から
「よい子のみんなも疲れに心を蝕まれて頭がおかしくなる前に休み休み頑張るようにしようね!」
1巻4話から
「誰かと張り合うことだけを目標にしてしまったら、その誰か以上のところへは行けないからね」
と呼んでいると何かに気が付かされ、異常に共感できるところがあるのもこの漫画の魅力です。
純粋な子供と闇を抱える大人たちのギャップ純粋な子供と闇を抱える大人たちのギャップ
教育番組が舞台となっているため、子供たちとうらみちや池照といった登場人物のやり取りが多いのがこの漫画。
子供たちはまさしく純粋無垢として描かれているのですが、そんな子供とは対照的に、うらみちたちはよく言えば場数を踏んできた、悪く言えばすれてるためその対比が絶妙です。
1巻4話で、子供たちからのおたよりコーナーで「結婚するならうらみちお兄さんといけてるお兄さんのどっちがいい?」と聞かれたうたのおねえさん。
子供のおたよりなので、そんなに重い返答を求めていないはずなのに、うたのおねえさんは自身の経験から、「表面や面白さだけで男を選んじゃダメよ」と迫真の表情で答えます。
見た目や愛嬌には魅力があるものの、そんなもの将来は一切役に立たないので、無駄な苦労なんてしないでスムーズに幸せになってと答え泣き出してしまいます。
うたのお姉さんのリアルすぎる発言に、ショックを受けてうらみちといけてるは固まってしまい、そのせいで収録はストップになってしまいます。
特に私が好きな子供とのやりとりは、1巻の1話で、「今日もママンとトゥギャザー始まるよ」と番組オープニングをしゃべったうらみちに、子供が「声ガラガラ」と指摘をします。
すると、うらみちは、酒焼けだから大丈夫と笑顔で返すのです。
もう、この場面だけでうらみちがどんな人物なのかなんとなくわかるやり取り。
純粋な子供と場数を踏んでしまった大人との対話がまた面白い。
でも、純粋な子供の発言は時としてうらみちの心をえぐるようなものまであり、落ち込んでしまううらみちの姿もくすっと笑いがこみ上げてしまいます。
登場人物の名前
うらみちお兄さん→表田裏道、いけてるお兄さん→蛇賀池照、ウサオ君→兎原跳吉という名前を見ただけでなんとなーく気が付くと思うのですが、登場人物は基本個性豊かすぎるのですが、名前からしてその個性がよく表れています。
新キャラが出てくるたびにその名前のセンスにくすっと笑ってしまいます。
職種や役職、キャラクターなどが名前に現れているので、名前を見ればどんな人なのかよくわかります。
主要5キャラ以外のキャラクターの名前を数名紹介したいと思います。
出木田適人(でれきだ てきと)彼は、番組のディレクターで思いつきで行動します。
木角半兵衛(きかく はんべえ)「ママンとトゥギャザー」を放送するテレビ局の販売企画部の社員。
カッペリーニ降漬(カッペリーニ ふりつけ)→「ママンとトゥギャザー」の振付師。
と名前も魅力的です。
魅力的な歌
教育番組なので、多くの歌が登場します。
しかし、この歌、歌詞を見ると絶対子供むけではないと思ってしまう歌詞ばかり。
『傘持ってないときに限って雨降るのなんで』、『得手不得手』とか曲名から大人向けの歌なのでは?と思ってしまうものばかり。
曲名に歌詞も魅力ですが、各歌に合わせたいけてる、うたの、うらみちの衣装も魅力です。
特に、うらみちの衣装!
絶対いじられているだろうという衣装ばかりを着させられているうらみちですが、きっちりその衣装でお仕事をします。
偉い!
漫画でも面白い歌のシーンですが、アニメ化により実際にこの歌を聞くことができるようになりました。
しかも、いけてるお兄さんを宮野真守、うたのお姉さん水樹奈々のお2人が演じられているので、歌が上手い!
いい意味で、無駄に歌がうますぎる!
この歌だけでも、アニメ化してくれてありがとうと感じてしまうほどです。
原作漫画大好きなのですが、歌のシーンだけは実際聞いてみたいなぁと感じていたので、その物足りなさを解消してもらえるため、アニメも漫画も両方面白い作品となっています。