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Jun

アイドルアニメの40年の歴史をまとめてみた! 2次元アイドルコンテンツやアイドルキャラはどう変わった?


(画像引用 : Amazon)

1980年代のマクロスから2023年放送の【推しの子】まで、アイドルを題材としたアニメは40年以上も続いています。
そんな歴史ある定番ジャンルを徹底検証! 各時代の代表的なアイドル作品を取り上げ、その違いについて考察します!

アイドルキャラを定着させた「マクロス」と「クリィミーマミ」


(画像引用 : Amazon)

初めてアイドルを扱ったアニメと言われているのは、1971年に放送された『さすらいの太陽』という作品です。
虫プロダクション制作による少女漫画原作のアニメで、貧しい家に生まれた少女が芸能界デビューし波乱の日々を送る……という内容。
当時のアニメらしくスポ根っぽかったり妙に暗かったりと、現在のアイドルアニメのイメージとはあまり合致しませんが、虫プロダクションの公式サイトでも「日本初、芸能界を描いたアイドルアニメ」と紹介されているように、本作をアイドルアニメのパイオニア的存在と紹介しているメディアもあるようです。

ただ、この作品の後にアイドルアニメが市民権を得た訳ではなく、1970年代には他に『ピンク・レディー物語 栄光の天使たち』くらいしか作られていません。
この作品も、実在する人気アイドルをアニメ化したもので、実写撮影パートを織り交ぜるなどドキュメンタリー的な要素が強く、アイドルアニメの基盤を築いた作品という訳ではないようです。

アイドルアニメが本格的に市民権を得たのは、1980年代になってからと言われています。
とはいえ、そのきっかけになった作品はいずれも純粋なアイドルアニメではありません。
作中でアイドルとして活躍する「アイドルキャラ」が大人気となり、2次元アイドルの存在を世に知らしめた事が大きな要因となりました。

最初にその流れを作ったアイドルキャラは、『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイです。
ただこのキャラは、当初から万人に愛されていた訳ではありません。
ヒロインらしい可愛さ、無邪気さを持ち合わせる一方で、かなりワガママで奔放、加えて八方美人で空気を読めない……などの嫌われる要素もかなり持っている人物として描かれていた為、賛否両論真っ二つというタイプだったようです。

この「嫌われ要素」が、彼女をアイドルキャラとして羽ばたかせる一因となりました。

マクロスが放送された1980年代前半は、松田聖子や中森明菜など現実のアイドルが爆発的なブームを巻き起こしていた時期。
まだインターネットなど全く普及していない時代だった為、アイドル側が自分の意見を発信する手段は限られており、人々はアイドルに対して「見た目通り清純に違いない」と思い込んだり、「本当は性格が悪いんじゃないか?」という穿った見方をしたりと各々勝手なイメージを抱いていました。

その為、リン・ミンメイの性格は世間がアイドルに対して抱いていたイメージと重なる部分が多く、その結果「アニメファンに好かれる為に作られたキャラ」ではなく「私達の思うリアルなアイドル像」として周知されるようになったのです。
その後、1984年公開の劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』でかなりマイルドな性格に変更され好感度は上がりましたが、「リアルなアイドル」というイメージもそのまま残り、アイドルキャラのレジェンドとして定着する事になりました。

そしてもう一つ、アイドルアニメの普及に大きな貢献をしたアニメがあります。
1983年に放送された『魔法の天使クリィミーマミ』です。

タイトルからもわかるように、本作はアイドルアニメではなく魔法少女アニメです。
魔法少女クリィミーマミに変身する力を得た主人公の森沢優が、変身した姿で芸能界デビューを果たし、小学生・魔法少女・アイドルという三つの顔を持つようになる……というお話。
この作品およびマミが当時の女児に絶大な人気を得た事で、アイドルに憧れる子供が急増したと言われています。

本作の特徴は、芸能界の光と影を両方とも描いている点です。
前述した『さすらいの太陽』は子供が憧れを抱くようなタイプの作品ではありませんでしたが、クリィミーマミはアイドルの華やかさ、アイドルならではの悩みを両方描く事で、子供に夢を与えつつリアルさも打ち出し、マミは多くの女児から「マミのようになりたい」と思われるようなキャラになりました。

この両作品の出現によって、2次元アイドルは子供からも大人からも認知されるようになりました。
その結果、アイドルキャラが登場する「アイドルアニメ」の需要も自然と高まり、アニメの一ジャンルとして定着していく事になります。

アイドル斜陽の時代に生まれた参加型コンテンツの雛形「サクラ大戦」


(画像引用 : Amazon)

ほとんどのアイドルアニメは、実在するアイドルをそのまま描写する事はありません。
ですが、当時流行のアイドルを参考にして、現実のアイドルのイメージを投影させる事でリアリティを保ち、古臭く見えないようにする努力は常になされてきました。
よってアイドルアニメは、その時その時のアイドルの流行や空気感が反映されています。

1990年代は、アイドル業界にとって斜陽だったと言われています。
音楽チャートはアイドルよりも歌姫やアーティスト達が目立ち、特に女性アイドルの存在感はかなり希薄になっていました。

この世相の影響もあって、90年代のアイドルアニメには後世に残るような大ヒット作がほとんどありません。
また、この時期はバブルが弾け経済的に低迷し、世紀末に向かって行く中でノストラダムスの大予言や終末論が一定の支持を得るなど、全体的に暗い話題が多く、アニメも自然と『新世紀エヴァンゲリオン』のような暗い要素を含む作品が評価されていました。
アイドルの最大の魅力とも言える明るさと華やかさが、この時期には本来の輝きを放てなかったようです。

そんな中にあって、アイドルアニメではないものの2次元アイドルコンテンツの歴史に欠かす事の出来ない作品が登場します。
それは『サクラ大戦』です。

本作はセガサターン用ソフトとして1996年に発売された家庭用ゲームで、戦闘パートと恋愛アドベンチャーパートを備えたゲーム。
個性的なヒロインが多数登場し、彼女たちの魅力もあって一定数のコアなファンを獲得する事に成功しました。

この『サクラ大戦』がアイドルコンテンツ市場に与えた影響は、「2.5次元舞台」にあります。
本作のヒロインたちは作中で「帝国華撃団」というチームを構成していますが、1997年からキャスト陣が担当キャラに扮し歌謡ショウを実施。
これが好評を博し、長年にわたって開催され続ける人気イベントとなりました。

今でこそ人気アニメやゲームを題材とした舞台、キャストが担当キャラに扮したライブイベントは当たり前のように行われていますが、当時はそういった前例がなく、このサクラ大戦がパイオニア。
特に近年の2次元アイドルコンテンツはライブありきの企画になっている為、その雛形となった本作の影響は計り知れないものがあります。

たくさんの女児に夢を与えた「きらレボ」


(画像引用 : Amazon)

1990年代後半から、アイドルの低年齢化が顕著になっていました。
1996~1999年にSPEED、90年代末~00年代初頭にかけてモーニング娘。がそれぞれ爆発的な人気を獲得し、10代前半~半ばのアイドル達が躍動。
この現実のアイドル達の活躍によって、かつて憧れの対象だったアイドルが「身近に感じられるアイドル」として、新たな需要を開拓していきました。

そんな中で、2006年に生まれたのが『きらりん☆レボリューション』です。

きらレボの略称で知られる本作は、中学2年生の月島きらりを主人公とした少女漫画原作のアイドルアニメ。
本作も現実のアイドルの変遷を反映し、憧れを抱かれるよりも親しみを持てるアイドルとして描かれたきらりが人気を博し、女児を中心にたくさんのファンを生み出しました。

また、このきらレボが人気作品になった背景として、『プリキュア』シリーズの台頭も無視できない要素です。
プリキュアはアイドルアニメではなく変身して戦うアニメですが、80年代のクリィミーマミに代表されるように、アイドルアニメと変身ものには「変身願望の充足」という大きな共通点があります。
プリキュアシリーズを好んで観ていた女の子の中には、「あんなふうに違う自分になってキラキラ輝きたい!」という願望を持つ子が少なからずいて、普通の女の子がアイドルになって活躍するきらレボはそんな子供達の変身願望を満たすアニメとしても高い需要を得たのだと思われます。

2008年に大ヒットした『マクロスF』も、「憧れの存在である歌姫」シェリル・ノーム、「普通の女の子から変貌したアイドル」ランカ・リーを二大ヒロインに据えて大ヒットを記録。
過去のアイドル像、現在のアイドル像をそれぞれのキャラに投影させ、どちらも絶大な人気を集めました。

このように、アイドルアニメ黎明期から四半世紀が経過する中、アイドルアニメやアイドルキャラは随分と様変わりしました。

アイドルゲームから新たな扉を開いた「デレマス」と「うたプリ」


(画像引用 : Amazon)

2000年代、アニメ業界には大きな革命が起こりました。
それまでアニメと言えば朝、夕方、ゴールデンタイムが基本でしたが、00年代から深夜に放送されるアニメが増え、視聴率ではなくDVD(円盤)の売上が人気のバロメーターになっていきます。
特に2006年放送の『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒット以降、この流れは一気に加速し、アニメの年間制作本数も爆発的に増加していきました。

また、時期を同じくしてキャラクタービジネスの市場規模が急速に拡大していきます。

アニメ内に登場するキャラ名義でキャラクターソングを歌い、それをCDでリリースする。
様々なグッズを販売、人気商品とコラボなど、実際のアイドルのような売り方で大きな利益を生み出す。
大勢のヒロインを作中に出し、人気投票で各キャラのファンの熱意を煽り、購買欲に繋げていく。

そういった手法が確立し、アニメ市場の規模は年々拡大していきました。

また、現実のアイドルにも革命的な存在が現れます。
AKB48の登場です。

立ち上げ当初からコンセプトは「会いに行けるアイドル」で、握手会などファンとの交流を積極的に行い、憧れの存在ではなく身近な存在としてのアイドル像を更に強化。
その結果、国民的アイドルグループと言われるほど巨大な存在になり、数々の姉妹グループと共に一時代を築きました。

その大きな特徴の一つが「大人数」と「メンバー追加」です。
単にメンバーが多いだけでなく、そこから更に追加されていく事でコンテンツとしての話題性と鮮度が保たれ、それまでグループ内にいなかったタイプのアイドルが新たに加わる事でファン層の拡大にも繋がる。
大所帯ゆえの問題は決して少なくないものの、それを補って余りあるメリットがAKBを過去に類のないグループへと押し上げました。

この「大人数」「メンバー追加」という二つの要素を兼ね備えた2次元アイドルコンテンツが、『アイドルマスター シンデレラガールズ』です。

アイマスの愛称でお馴染みアイドルマスターは、2005年にアーケードゲームとして稼働を開始
その後は家庭用ゲームとしても展開し、2011年にはテレビアニメ化されました。

このアイマスは765プロの13人のアイドルがメインで、そこからキャラの増減はほぼありません。
それに対し、派生作品として2011年にサービスを開始したデレマスは、当初から100名以上のアイドルが登場。
その後も次から次に追加されていき、どんな人の趣味嗜好にも刺さるアイドルが必ずいると言われるほど大所帯となりました。

また、当初はボイス実装はなく徐々に担当声優を付け、総選挙の結果によってボイスを追加するアイドルが決まるという形を採用。
ボイスを担当した声優はイベントやリアルライブにも参加し、その数が増えるにつれイベントの規模や会場も拡大していきます。
これまでのアイドルコンテンツは作り手がキャラを描いていましたが、このデレマスはファンがキャラの活躍の場を作っていく参加型コンテンツとして人気を博しました。

2015年にはその人気に応える形でテレビアニメを放送。
自分達が育ててきたと言っても過言ではないアイドル達がアニメという晴れ舞台で活躍する姿に、多くのファンが感動していました。

そしてもう一つ、デレマスとほぼ同時期に生まれたアイドルコンテンツがあります。
うたプリこと『うたの☆プリンスさまっ♪』です。

2010年に家庭用ゲームとして発売された本作はプレイヤーが主人公の女性を操作し、芸能専門学校のアイドルコースに通う魅力的な男性達と交流を深める女性向けの恋愛アドベンチャーゲーム、いわゆる「乙女ゲーム」
ゲームとしてのクオリティが特別高かったというよりは声を含めたキャラの魅力が強烈で、多くのファンを生み出し2011年にテレビアニメ化され、大ヒットを記録しました。

本作の功績は、キャラクタービジネスの市場に多くの女性ユーザーを取り込んだ事です。
乙女ゲームのアニメ化自体は2000年代にも行われ成功例も幾つかありましたが、本作はアニメ円盤をはじめキャラソンCDやグッズが売れに売れ、2012年から始めたキャスト陣によるライブイベントはドームでの開催が定番化するなど、その成功規模は規格外。
2次元アイドルコンテンツに男性アイドルを本格参戦させたという意味では、本作のもたらした功績と影響は計り知れません。

成長型アイドルコンテンツの頂点「ラブライブ」


(画像引用 : Amazon)

2010年代に入ると、アイドルアニメはアニメ単体で企画される事が殆どなくなり、メディアミックスプロジェクトの一環として扱われる事が多くなります。
例えば2011年からスタートしたプリティーシリーズ、2012年から始まったアイカツシリーズは、女児向きのアーケードゲームが最初に稼働し、そのプロモーションも兼ねてアニメが放送されるというパターンでした。
アイドルコンテンツの人気拡大に伴いユーザー層も変化し、女児向けの作品であっても大人が熱中する作品が増え、前述した2作はまさにその典型例と言えます。

そんな中、メディアミックス系アイドルコンテンツの頂点に立つあのビッグタイトルが誕生します。
『ラブライブ! School idol project』です。

今や誰もが認める2次元アイドルコンテンツの代表ですが……発足当初は決して順風満帆ではありませんでした。

KADOKAWA、ランティス、サンライズの共同プロジェクトによって立ち上げられたラブライブの船出は、KADOKAWAの出版する電撃G’s magazine2010年8月号。
各キャラクターのビジュアルの開示、自己紹介と廃校の危機を救う為にアイドル活動を始めるというコンセプトを本人たちの言葉で綴る、という内容でした。(ちなみに当時と現在では絵柄が大きく異なりますが、この頃から室田雄平さんがデザインしています)

この後、2010年8月開催のコミックマーケット78でCDデビューを果たしますが、1stシングルとなった「僕らのLIVE 君とのLIFE」の売上は400枚強。
オリコンでの順位は167位でした。

発売当時はまだグループ名もなくキャストも明らかにしていない段階で、大企業が合同で企画したとはいえ知名度はゼロに近く、そんな状況を考慮すれば失敗とまでは言えないでしょう。
しかし、サンライズが制作したPVはかなり力が入っていて、その予算を考慮すると順調な出足とは言えなかったかもしれません。
当時はネット上で酷評する声もあがっていたようです。

その後、キャスト陣が発表されグループ名もμ’sに決定し、活動も徐々に増えて行きます。
同年12月発売の2ndシングル「Snow halation」ではオリコン74位を記録。
順位だけを見れば大幅アップですが、売上枚数は1000枚程度で、今やラブライブを代表する曲とは思えない数字に留まっています。

電撃G’s magazinemから出発した読者参加型プロジェクトの成功例と言えば、2000年頃に人気を博した『シスター・プリンセス』があります。
どちらも公野櫻子さんの原作という事で共通点も多く、当初はアイドル版シスプリという視点で見ていた人もいたようです。
ただ、発足から1年で雑誌の顔となり毎号表紙を飾っていたシスプリに対し、ラブライブは長らく雑誌内の一コーナーに過ぎない状態が続きました。

このように、ラブライブおよびμ’sは当初から華やかな舞台で活躍していた訳でも、めざましい成果を出していた訳でもありません。
ただ、地道に活動を続けていく中でメンバー間、メンバーを含むスタッフ側とファンとの間に確かな結束が生まれ、徐々にコンテンツ力を高めていきます。

2012年にはアニメ化が発表され、ライブ活動も本格化。
ここから一気に、ラブライブの快進撃が始まります。

2013年に放送されたアニメ1期は、突然ミュージカルが始まる不思議な演出、王道展開と思わせてからの鬱展開など、ジェットコースターのような浮き沈みで視聴者を翻弄。
その結果クール内で最も話題になり、Blu-ray(円盤)の売上が約3万枚を記録するなど2013年冬の覇権アニメになりました。

この後もラブライブとμ’sの快進撃は止まりません。
放送終了後も評判を聞きつけた人が再放送などで視聴し、ゲーム『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』がサービスを開始した事でファンの数は驚異的なペースで増え続け、CD売上でもオリコン1位を獲得。
2014年放送の2期は円盤売上11万枚以上(1巻)を記録し、深夜アニメの歴代売上記録を塗り替えるメガヒットとなりました。

更に2015年には劇場版を公開し、当時の深夜アニメの劇場版としては史上最高となる興行収入28.6億円を記録。
年末には紅白歌合戦への出場も果たし、ワンマンライブの規模も横浜BLITZ(キャパ1700人)→ TOKYO DOME CITY HALL(3120人)→ パシフィコ横浜国立大ホール(5002人)→ さいたまスーパーアリーナ アリーナモード(17000人)→ さいたまスーパーアリーナ スタジアムモード(30000人)と猛烈な勢いで大きくなり、2016年に開催されたラストライブはなんと東京ドーム(55000人)での公演が実現。
その2dayを満員にして、μ’sは伝説にひとまず終止符を打ちました。

この期間にラブライブがファンにもたらしたエンターテイメントは、単にアニメや音楽だけではありません。
新人アイドルが頂点に立つまでのサクセスストーリーを、一緒になって駆け抜けたという途方もない充実感。
読者参加型のコンテンツとして始まった「みんなで叶える物語」は、最高の形で達成されました。

「憧れ」「親しみやすさ」「関われる喜び」と、時代によってファンに与えるものが変遷してきたアイドルアニメですが、ラブライブが与えた「昇っていく感覚」は、過去の作品にはなかったもの。
コンテンツ自体が成長していくケースはあっても、ここまでのスケールで駆け上がっていった作品は他にありません。
そんな本作の登場は、2次元アイドルコンテンツの市場に多大な影響を及ぼす事になります。

アイドルアニメへの回帰とアイドルの多様性を両立した「ゾンビランドサガ」


(画像引用 : Amazon)

アイマス、ラブライブ、うたプリの成功を受け、2次元アイドルコンテンツは2010年代中盤から後半にかけて一気にその数を増やしていきます。

このコンテンツの始祖と言っても過言ではないマクロスシリーズも2016年放送の『マクロスΔ』で、よりアイドルらしい方向へシフト。
作中に登場するメインキャラ5人による戦術音楽ユニット「ワルキューレ」のキャスト陣がリアルでもライブ活動を行い、多くのファンを生み出しました。

純粋なアイドルコンテンツではありませんが、2018年に発足した『ウマ娘 プリティーダービー』もこの流れの中で生まれたプロジェクトです。
競走馬を擬人化するというコンセプトでありながら、登場キャラはレースに勝つとステージで歌うというアイドル要素を加え、華やかさを演出。
のちにアニメ、ゲーム共に爆発的ヒットを記録しています。

特に盛況を見せたのは、男性アイドルの2次元コンテンツです。

うたプリに続けと言わんばかりに、ゲームを主軸としたメディアミックスプロジェクトが次々に誕生。
2014年に『アイドルマスター SideM』、2015年に『あんさんぶるスターズ!』『アイドリッシュセブン』がサービスを開始し、いずれも大人気ゲームとなってアニメ化を果たします。
また、キャラクターコンテンツとして『ツキウタ』『B-PROJECT』も人気を博し、女性向けのアイドルコンテンツは絶頂期を迎えました。

そんな大メディアミックス時代の到来によって膨大な数の2次元アイドルが生み出され、新たに生み出されるアイドルには他作品との明確な差別化が求められるようになります。
この課題を見事にクリアし、大ヒットとなったのが『ゾンビランドサガ』です。

本作は前述したようなメディアミックス時代の流れに乗って生まれた作品ではありません。
「ゾンビがアイドルをやるアニメ」というアイディアからスタートしたものの中々承認を得られず頓挫していたところ、Cygamesの社長の出身地である佐賀を絡めた作品ならOKという条件が出た為、「佐賀を救う為にゾンビのアイドルが奮闘するアニメ」として企画された作品です。

当初は内容を一切告知しない形でのプロモーションが行われ、タイトルに「アイドル」という表記がない事もあり、本作が新感覚ゾンビアイドル系アニメと判明したのは1話放送終了後。
かなり奇抜でセンセーショナルな内容でしたが、当時はまだピンと来なかった視聴者が多かったのか、それほど話題にはなっていませんでした。

しかし第2話が放送されると、作中で主人公の源さくらが披露したラップが好評だった事で徐々に知名度はアップ。
この2話をきっかけに公式フォロワー数も伸び始めます。

・『ゾンビランドサガ』公式アカウントのフォロワー数推移

**6,000 18年10月03日(放送前日)
**7,000 18年10月05日(第1話放送翌日)
*14,000 18年10月12日(第2話放送翌日)
*21,000 18年10月19日(第3話放送翌日)
*27,000 18年10月26日(第4話放送翌日)
*30,000 18年11月02日(第5話放送翌日)
*35,000 18年11月09日(第6話放送翌日)
*39,000 18年11月16日(第7話放送翌日)
*45,000 18年11月23日(第8話放送翌日)
*53,000 18年11月30日(第9話放送翌日)
*60,000 18年12月07日(第10話放送翌日)
*63,000 18年12月14日(第11話放送翌日)
*67,000 18年12月21日(第12話放送翌日)
*79,000 18年12月28日
170,000 23年06月16日(現在)

そして7話で描かれた「生きていた時代が違う女の子達がそれぞれの価値観で現代のアイドルと向き合う」というテーマと想像を超えるライブステージ、更には星川リリィのメイン回となった8話におけるストーリーが多くの感動を生み、一気に人気爆発。
最終回のライブシーンも好評で、放送後に発売された円盤は平均2万枚を超える大ヒットとなりました。

漫画やゲームなどアニメ以外の様々なメディアで展開し、アニメ放送時には一定以上の知名度を得ているメディアミックスプロジェクトとは違い、無名の状態で放送を開始した本作は、いわば原点回帰。
かつてのアイドルアニメがそうだったように、アニメの内容で爆発的な人気を獲得し、その放送期間中にだけしか得られない勢いとカタルシスを視聴者に提供した事が、このゾンサガの最大の功績と言えるでしょう。

2010年代以降、アイドルアニメはメディアミックスの一環である事が多くなり、中にはプロモーションと割り切っているかのような内容のアニメも増えていました。
そういったアニメはストーリーよりも「如何にアイドルを宣伝できるか」に注力し、ライブシーンや掛け合いには力を入れても、ストーリーはそれほど……というのがお約束。
結果的に、ゲームなどで既に前知識があるファンには楽しめても、新規で観るアニメファンには内容が頭に入ってこないようなアニメが多くなっていたのです。

しかしこのゾンサガのヒットによって、あらためて「テーマやストーリーを重視するアイドルアニメでも成功できる」という事が証明され、漫画原作のアイドルアニメやアニメがメインのアイドル企画も増加傾向に転じました。

サスペンスとアイドルアニメの融合【推しの子】


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漫画原作のアイドルアニメが増え始めた2020年代、その代表例となったのが2023年より放送を開始した【推しの子】です。
この作品は純粋なアイドルアニメではなく、サスペンスにアイドル要素が色濃く絡み合ったストーリーが展開されます。

原作は、『かぐや様は告らせたい』の赤坂アカ先生と『クズの本懐』の横槍メンゴ先生がタッグを組んだ漫画作品
アニメ化作品を手掛けたヒットメーカー同士が手を組むとあって、連載当初から大きな注目を集めていた本作は、「推しアイドルの子供に転生した主人公が、自分と母親の殺害を主導した犯人に復讐するため芸能界で暗躍する」という異色作。
『かぐや様』のように恋愛やコメディ要素もありますが、メインとなるのは暗く重い復讐劇です。

その【推しの子】、第1話を90分拡大枠で放送するという異例のスタートで一気に話題を攫います。
原作で描かれた「人気絶頂のアイドルが殺される」というセンセーショナルな内容を、アニメならではのドラマティックな演出で表現し、あっという間に視聴者のハートをゲット。
配信を中心に多くの視聴者とファンを生み、2023年春クールの話題を独占しました。

本作には、これまでアイドルアニメでは行われなかった事と、過去に行われていた事の踏襲の両方が共存しています。

まず前者ですが、本作は「駆け出しのアイドルは給料が安い」「女性アイドルグループはまとめるのが大変」「歌が下手でもなんとかなる」など、アイドルのネガティブな部分を積極的に描写しています。
過去のアイドルアニメでも、アイドルならではの苦悩や挫折、芸能界の闇といった点は描写されていましたが、本作はどちらかというと「一般人やネット民が想像するアイドルの裏側」を描いている印象です。
それによって、視聴者から多くの共感や納得を集めています。

一方で、それは「アイドルにネガティブ要素を加えている」とも解釈でき、これはかつてリン・ミンメイに対して行われた事と一致しています。
2000年以降、アイドルは「親しみやすさ」「関われる喜び」といった身近に感じられる要素をファンに提供し、ファンもそれを求めるようになりましたが、本作はアイドルの汚い部分を見せつつ、星野アイの圧倒的カリスマ性を強調して描くなど「アイドルへの憧れ」も前面に打ち出しています。
これらは1980年代に描かれていたアイドル像に回帰している、と表現する事も可能です。

また、アイドルにまつわる暗い事件、元アイドルやアイドルを管理する側の不祥事が繰り返し報じられる現代、本作はそんな世相を反映した作品と受け取る事も出来るでしょう。
常にその時その時のアイドルイメージを投影するのがアイドルアニメであり、本作はその点においても従来のアイドルアニメらしい作り方をしていると言う事が出来ます。

本作が視聴者の心を掴んだのは、決して偶然ではありません。
これまで2次元アイドル界隈が積み上げて来たもの、そして新進気鋭のストーリーテラーが創出した現代ならではのアイドル劇が高次元で融合し、制作会社の動画工房が総力を結集して美しい映像と巧みな演出を用意し、そこに「1話90分」という話題性を提供した事で、多くのアニメファンを唸らせ大成功に繋がったと思われます。

この【推しの子】の成功によって、2020年代中盤から後半の2次元アイドルコンテンツ市場は新たな展開を迎える事になりそうです。

ライブシーンの変遷と進化


(画像引用 : Amazon)

アイドルアニメの見所として外せないのがライブシーンです。
とはいえ、当初からライブに力を入れていた訳ではありません。
アニメのライブシーンと言えばマクロスシリーズが牽引し、涼宮ハルヒの学園祭ライブで一気に注目を集めるようになり、以降もけいおん、Angel Beatsとアイドルアニメ以外のジャンルが進化を担っていました。

そんな中、アイドルアニメならではのライブシーンとして喝采を浴びたのが、2011年に放送されたアイマスの25話で描かれた「READY!!&CHANGE!!!!」のライブシーンです。
まるでリアルライブの中継を見ているかのような臨場感溢れるカメラワーク、メンバー全員にしっかり見せ場を作る構成、一切止まる事なくキレキレの動きで踊り続けるアイドル達。
この多幸感を詰め込んだようなライブシーンは多くのアニメファンに絶賛され、その後のアイドルアニメのライブの雛形になったと言っても過言ではないくらい重要な位置付けになりました。

一方で、この頃からアイドルアニメのライブにCG技術が多用されるようになります。
3DCGによるライブシーンは手描きと比べてかなり滑らかに動き、ノンストップで様々な視点を描けるためカメラワークも自由自在といったメリットがある一方、通常時とはキャラデザが明らかに変わる点、滑らか過ぎて逆に不自然に見える点などのデメリットもあり、アニメファンの間では現在でも賛否両論となっています。

ただ、アイカツシリーズやプリティシリーズ、そしてラブライブシリーズといった長年続いた人気シリーズがCGを多用した事で、その技術は年々進化し続けています。
近年のCGは手描きと織り交ぜても違和感がほとんどないくらいになっていて、大勢を一度に動かす必要があるアイドルアニメのライブとは余りに相性が良い事もあり、欠かせない技術になってきました。

今やアイドルアニメは、アイドルのキャラクターだけに依存せず様々な要素を高次元で備える必要性が生じています。
その中でも特に、ライブシーンの進化は必須項目。
視聴者の度肝を抜くようなライブシーンを披露したアイドルアニメが、次の時代を担う事になるかも知れません。

まとめ

アイドルアニメ、2次元アイドルコンテンツの歴史に燦然と輝く作品が今年も出て来たのは、とても素晴らしい事だと思います。
このジャンルがこれから先どんな進化を遂げて、どれだけハイレベルな映像や音楽を提供してくれるのか、楽しみで仕方ありませんね!

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