19
Feb
芦原妃名子先生の全作品を紹介。代表作『砂時計』は700万部の大ヒット、過去にも複数回の実写化
(画像引用 : Amazon)
2024年1月29日に天国へ旅立った芦原妃名子先生に哀悼の意を表し、先生が生前に残した全作品をまとめました。
代表作の『砂時計』、最後の作品となった『セクシー田中さん』など、単行本化された順番にご紹介していきます。
遺作となってしまった「セクシー田中さん」に関しては、こちらの記事で詳しく紹介させていただいておりますので、併せてどうぞ。
Girls Lesson
(画像引用 : Amazon)
芦原妃名子先生が漫画家デビューを果たしたのは別冊少女コミック1994年10月号。
当時絶大な人気を誇っていた田村由美先生の『BASARA』、小学館漫画賞を受賞した渡辺多恵子先生の『はじめちゃんが一番!』などの作品と共に、デビュー作『その話おことわりします』が掲載されました。
その後も1994~1996年にかけて同雑誌にて恋愛をメインに描いた短編を次々と発表し、それらをオムニバス形式でまとめたのがこの『Girls Lesson』です。
全3巻が発売され、1巻には『Girls Lesson』『クリスマスプレゼント』『魔法の小瓶』、2巻には『お姫様の憂鬱』『天然ダイエット』『浪花人生哀歌』『大きなくるみの木の下で』『その話おことわりします』、3巻には『グリーン・楽園(パラダイス)』『ハートにバンドエイド』『子牛カンパニー』『STEP UP!』がそれぞれ収録されています。
一部の作品ではキャラクターが共通しており、同じ世界の物語である事を匂わせています。
Homemade Home 芦原妃名子傑作集①
(画像引用 : Amazon)
2冊目の単行本となったこの本には、初の100ページ超えとなった表題作『Homemade Home』と『家に帰ろう』を収録。
『Homemade Home』は売れない女優でシングルマザーの娘・夏女愛と劇団員の出会いと交流を描いた物語です。
扱うテーマはやや重めながらコミカルに描かれていて、この時点で既に作風が出来上がりつつありました。
星降る部屋で 芦原妃名子傑作集②
(画像引用 : Amazon)
こちらも傑作集として発売された3冊目の単行本。
『星降る部屋で』『夏にごようじん』『犬になった私。』の3作品が収録されています。
表題作となった『星降る部屋で』は約120ページの長編。
インテリアコーディネイターを目指し専門学校に通うと訴える女子高生の小花和が、両親に出された「高校卒業までの1年間、家を出て学費以外の援助なしで生活してみろ」という条件を呑み、オンボロの部屋で暮らす最中に隣人のワケあり男子と出会う……という物語です。
コミカル、シリアス両方を描いたガール・ミーツ・ボーイです。
天使のキス
(画像引用 : Amazon)
芦原先生にとって初の本格連載となったのが、この『天使のキス』です。
別冊少女コミック1997年6月号~1998年9月号で連載された本作は、バレエを主題にした物語。
怪我への恐怖によって踊れなくなっていた少女・藤井彩が男性だけのバレエ団「COOL」の公演を見て再び踊りたいと感じ、加入の条件として出された「全国コンクール1位」を目指し奮闘する物語。
彩の成長や男1女2の三角関係を描いた作品です。
単行本は全4巻。
連載終了後、番外編となる『kiss+α』がデラックス別冊少女コミック1998年12月5日号に掲載され、そちらも4巻に収録されました。
また、各巻に『プリンセス・ライン』『倖せの国』などの読切作品も収録されています。
Derby Queen
(画像引用 : Amazon)
別冊少女コミック1999年2月号~2000年2月号で連載された本作は、競馬のジョッキーに焦点を当てた物語。
幼少期にジョッキーだった父をレース中の落馬事故で亡くした主人公の大友緋芽がその10年後、落馬の原因となったジョッキーの息子・荒川仁が日本ダービーを制覇したと知り、彼に勝って父の無念を晴らす為にジョッキーを目指す……という、少女漫画としては異例の内容です。
ただし冒頭の展開から抱くイメージほどシリアスな作品という訳ではなく、ある程度コミカルな描写もありつつスポ根として描かれています。
単行本は全3巻。
終了後にデラックス別冊少女コミック2000年4月5日号で両親の出逢いを描いた番外編「Special Day」を掲載、3巻に収録されました。
Miss
(画像引用 : Amazon)
別冊少女コミック2000年5月号~12月号で連載。
中学時代にイジメに遭った事で人間不信となった主人公・安西果津が、軽薄でワケありなクラスメイトの桐島健太と出会い、自分の事を理解してくれる彼に惹かれていく……という恋愛作品です。
前作とは打って変わって少女漫画らしい内容になっています。
絵柄も洗練されてきて、作家としての進化が感じられる作品です。
単行本は全2巻。
2005年に新装版が発売され、こちらも全2巻となっています。
天然ビターチョコレート
(画像引用 : Amazon)
別冊少女コミック2001年4月号~2002年4月号で連載。
何度も失恋を繰り返し、周囲に「身の丈にあった恋をしろ」と言われながらも無理めなイケメンを好きになってしまう主人公・遠藤千夏(えんどう ちなつ)の奮闘を描いた恋愛ストーリー。
高校生になった千夏がテニス部のエース・葛西由行を振り向かせるため健気に頑張る姿が印象的です。
等身大の主人公という事もあって、前作以上に王道の少女漫画になっています。
単行本は全3巻。
3巻には短編『コンビニS』『Happy? Happy!!』も収録しています。
ユビキリ 芦原妃名子コレクション1
(画像引用 : Amazon)
芦原先生の主戦場でありホームでもあった別冊少女コミックは、2002年5月号より誌名を「Betsucomi(ベツコミ)」に変更しリニューアル。
その後も付き合いは続き、短編作品を次々と発表しています。
そんな時期の作品を収録したのが2002年発売の短編集『ユビキリ』で、表題作の他『カッコウの娘』『60days』の3作品を読む事が出来ます。
連載作品では比較的明るい作風で描いていた芦原先生ですが、これらの短編ではドロドロした設定にもチャレンジ。
それが後の連載作品へと繋がっていきます。
SOS 芦原妃名子コレクション2
(画像引用 : Amazon)
『60days』以降に発表していた中編および短編の3作品を収録し2003年に発売。
当時急速に普及が進んでいたケータイを題材にした表題作『SOS』、大正浪漫を描いた『オルガン』、複雑な乙女の心理を描いた『恋・問・題』と3作とも系統が異なる恋愛ストーリーになっています。
芦原先生の作家としての幅の広さが発揮された一冊と言えるでしょう。
砂時計
(画像引用 : Amazon)
芦原妃名子という漫画家を語る上で、この作品を外す事は出来ません。
Betsucomi(ベツコミ)2003年5月号~2006年7月号で連載された本作は、芦原先生の出世作にして代表作です。
累計700万部の大ヒットを記録し、第50回小学館漫画賞(少女向け部門)を受賞。
また2007年にTBSによってドラマ化、2008年に実写映画化された事もあって、この作品で芦原先生を知ったという人はかなり多いと思われます。
本作を語る上で欠かせないのが、第1話の完成度の高さです。
画力の向上に加え、コマ割りの巧みさ、ストーリーの構成、タイトルにもなっている「砂時計」の絡ませ方、各キャラの心情の描写、コミカルとシリアスのバランス、そして衝撃的な展開。
100ページ以上を使って描かれた第1話「12歳冬・祈り」は、これまでの作品とは明らかに違うと思わせる飛躍的な進化が見られ、1話目にして大作になると確信させるほどの壮大さを感じます。
本作に関しては、あえてあらすじは書きません。
メインとなる女2人男2人の幼なじみによる四角関係とヒューマンドラマを巧みな表現で繊細に描いた物語、とだけ記しておきます。
詳細はぜひ御自身の目で確認してみてください。
本編8巻と番外編2巻の全10巻構成です。
蝶々雲
(画像引用 : Amazon)
『砂時計』連載前の2002年に発表した表題作『蝶々雲』、『中学1ねんせい -恋未満-』『中学2ねんせい -男嫌い-』『中学3ねんせい -サクラチル。-』の全3編から成る中学生シリーズを収録した短編集。
『蝶々雲』は砂時計の基となった作品で、人物や舞台は異なるものの、砂時計の序盤と似た物語になっています。