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Nov
【名探偵コナン天国へのカウントダウン】灰原哀の孤独、少年探偵団との絆に泣ける!【ネタバレ】
出典 : Amazon.co.jp
2019年現在、23作が映画化されているロングヒット作品『名探偵コナン』の映画シリーズ。その5作品目が「天国へのカウントダウン」です。
主人公・工藤新一を薬で小さくした黒の組織が劇場版に初登場し、また、人気キャラクター灰原哀にフォーカスを当てていることで人気の作品です。2015年に公式サイトで行われた「名探偵コナン歴代映画人気投票」では第4位という好順位を獲得し、根強いファンが多いことを見せつけました。こんなに長く愛される人気の秘密はなんなのか?内容を解説しながら考察してみました。
人気の秘密①:人気キャラクター・灰原哀の内面にスポットが当たる作品
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「天国へのカウントダウン」は、灰原哀が少年探偵団や阿笠博士とのキャンプの夜に不審な動きをするところから始まります。
最近では明るい面や実年齢の18歳らしい素顔を見せることが多くなった灰原ですが、公開当時は無口で無表情、周りと関わる気がないキャラとして描かれていました。灰原は、コナンの倒さねばならない敵「黒の組織」を裏切ってコナンの味方になりました。しかし言葉もあまり発せず、表情も変えず、コナンや少年探偵団に協力する気のないようにみえるせいで、視聴者は「灰原が何を考えて行動しているのかわからない。本当に味方なのか?」と思ってしまう状態でした。
今回灰原哀はいくつかの不審な動きをしますが、実はそれはすべて孤独のさびしさからくるものだったのです。しかし、灰原が「何を考えているかわからない」せいで、映画序盤は「もしかして灰原哀は組織を裏切ったふりをしているだけで、敵なのではないか?」と視聴者に思わせ、それが心理的な伏線となっています。そして中盤では、「何を考えているかわからなかった」灰原の血を吐くような心情の吐露、終盤では灰原と少年探偵団との絆がしっかりと描かれており、灰原の内面の変化が非常に繊細に描かれていることが「天国へのカウントダウン」最大の見どころです。
人気の秘密②:少年探偵団・吉田歩美の意外な特技がいい伏線に!
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西多摩市に新しくできた日本一大きな双子のビル、ツインタワーに向かう少年探偵団と阿笠博士。その車の中で手持無沙汰になった子供たちが、ゲームを始めます。それは「30秒当てゲーム」。ストップウォッチを見ずに30秒計って、1番30秒に近かった人が勝ちというゲームです。このゲームでは、吉田歩美が思わぬ才能を発揮。なんと30秒ぴったりをたたき出すのです。
このシーンはかなり冒頭にあるのですが、物語終盤の生死をかけたピンチのときに大活躍します。しかもニクイのが、物語中盤でも30秒当てゲームをする場面があり、そこでは歩美は30秒を当てることができません。この当てられたときと当てられなかったときは何が違ったのか?とてもなにげなく行われたこのゲームが、最後の最後に大きな鍵を握るのです。
伏線がきれいに回収されたり、「あれって伏線だったんだ!?」という鮮やかなシーンがあると、視聴者の満足感はかなり上がりますよね。「天国へのカウントダウン」の伏線回収の鮮やかさは歴代の劇場版『名探偵コナン』でもかなり上位にあるのではないでしょうかランクインします!。
人気の秘密③:少年探偵団が大活躍!独自に調査を進めちゃう!?
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少年探偵団といえば、映画でも原作でも、たまに事件に巻き込まれてコナンの助手のような仕事をしている役割という印象が強いです。しかし「天国へのカウントダウン」では、少年探偵団が大活躍!まず、『名探偵コナン』は、目暮警部などの警察が捜査した情報をもとに毛利小五郎が容疑者を集めて推理を披露することが多いですが、「天国へのカウントダウン」では少年探偵団が容疑者の自宅へわざわざ出向いて捜査をしてしまいます。犯人かもしれない人のところに、子供だけで行っちゃうの!?というハラハラ感と、容疑者の大人たちの少年探偵団への対応が様々なところ(子供の捜査だからと軽くのってあげる、警察の真似事をするなと追い出すetc.)の妙なリアルさが視聴者に新鮮さを与えています。
人気の秘密④:殺人現場に残されたお猪口の意味は!?
ツインタワーでコナンが会った人たちが次々に2人の人物が殺害されてしまいます。それぞれの殺人現場には、割られたお猪口が。このお猪口の意味とは?ここのキモは、これが被害者のダイイングメッセージではなく、犯人からのメッセージという点です。被害者のダイイングメッセージを解明するケースは多いですが、殺人を犯した犯人がわざわざ痕跡を残していくメリットとはなんなのか?犯人はなにを訴えようとしているのか?犯人にどんな背景があるのか?深読みしたくなるこの「殺人現場に残された犯人のメッセージ」は、視聴者にコナンと一緒に謎解きをしているワクワク感を与えてくれます。
人気の秘密⑤:灰原哀の孤独。耐えきれない寂しさから、亡くなった姉に電話をしてしまう
先述したように、「天国へのカウントダウン」は、深夜、少年探偵団が泊まるキャンプ場の公衆電話で灰原哀が誰かに電話をしているシーンで始まります。それを見た小嶋元太に、後日「あんな時間にだれに電話してたんだ?」ときかれ、灰原は「電話なんてしてない」とごまかします。その後、黒の組織・ジンの愛車がツインタワーの前に停まっているなど、視聴者が「灰原哀は実は組織を裏切ったふりをしてまだつながっているんじゃないか」と様々な憶測をしたくなるように黒の組織の影がちらつきます。
しかし、灰原哀の謎の行動の実態は、「黒の組織に殺された姉の留守電の声がききたくて、姉の家に電話をかけて近況報告をしていた」だけでした。もう二度ときけない姉の声を、留守電では聞けたのです。それに気づき、ツインタワーのオープニングパーティー前夜に灰原がメッセージを入れているとき、入れ終わる前にコナンは電話を切ります。黒の組織の裏切者として命を狙われている灰原が、組織の一員だった姉の家に電話するのはやつらに気づかれる可能性があって非常に危険なのです。
「気持ちはわかるがやめておけ」というコナンに、灰原は「私の気持ちなんて誰にも分らない」と言い放って自分の部屋にかけこんでしまいます。
クールで何を考えているかわからなかった灰原が初めて激昂した瞬間でした。
姉を殺した組織に属することが耐えられず脱走した裏切者。そのせいで常に命を狙われている危機感を感じる重圧感。それらを吐露する灰原哀の人間臭い一面をみることができるこのシーンは「天国へのカウントダウン」一番のみどころと言ってもいいかもしれませんです。