ウェイバーとは思えないヒロイン力のなさ

出典 : © 三田誠・TYPE-MOON / LEMPC : TVアニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-」公式サイト

我々の知るウェイバーと言えば、『Fate/Zero』においてヒロインの座を揺るぎないものとした作中最強の萌えキャラで、これはファンだけではなくFate及びZEROの生みの親たちの総意でもあります。
その中性的な容姿もさることながら、豪傑なライダーと対照的な細さ、なよっとした佇まいと声、圧倒的なヘタレっぷり、マスターとしての威厳のなさ、泣き虫、「ナルシストなようで単に自分が認められたい気持ちを肥大化させただけ」という面倒臭さ、「自分の矮小さを理解しているため自虐的な泣き言が多い」という女々しさ、そして何よりマスター権を放棄するため令呪でライダーを激励するという健気過ぎる行動が、Fateファンの心を鷲掴みにしました。
これほどのヒロイン力を持ち合わせたキャラは、登場人数が膨大なFateシリーズであってもほとんど存在しないでしょう。

しかし、『ロード・エルメロイII世の事件簿』に登場するエルメロイII世には、ヒロイン力らしきものはまるで見当たりません。
容姿は成長後も中性的な美形のままで身体も依然として細く、しかも髪を長く伸ばして女性性がアップしているようにも見えますが、以前のなよなよした感じはなくなり、常にイライラしていそうな顔付きで乙女感はゼロ。
相棒的なポジションのグレイは少女らしい少女という見た目なので、彼女と並ぶと余計にヒロイン感がありません。

何より、『ロード・エルメロイII世の事件簿』における彼は主人公ということもあり、非常に有能。
相変わらず魔術師としてはポンコツのようですが、それを補って余りある指導力・分析能力を駆使し、講師としても探偵としても抜群の実力を発揮しています。
ヘタレだった頃の面影はほとんど残っていません。

性格に難アリなところも基本変わっていませんが、聖杯戦争を体験して成長したこともあり、自己顕示欲や女々しさをかなり抑えることができており、対人関係は基本良好。
そのため、『Fate/Zero』の頃とは対象的に周囲の評価は高く、庇護欲を生み出すタイプのキャラではなくなってしまいました。

よって、ウェイバーというキャラの定義を「萌えキャラ」「ヒロイン」と認識している人にとって、エルメロイII世とウェイバーを同一キャラと認めるのは非常に難しいと言わざるを得ません。

ウェイバーらしさも健在

出典 : © 三田誠・TYPE-MOON / LEMPC : TVアニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-」公式サイト

見た目もかなり落ち着き、優秀さが前面に出るようになったエルメロイII世は、口調も年齢相応の大人びたものになっており、一見すると10年前のウェイバーとは似ても似つかないキャラに思えます。
挑発や煽りに対しても冷静に対処するなど、精神的にも成熟しているようです。

しかし、実は随所にウェイバーらしさも残っています。

他者に対するお人好しなまでの面倒見の良さは、かつてライダーに対し憧れのような眼差しを向け、彼の生き様を語り継ぐ役割を背負い生き延びることを選んだ「献身力」がそのまま残っていると解釈できます。
魔術師としての基本性能の弱さに対するコンプレックスは一流講師となってからも持ち続けており、未練がましさを感じさせます。
これもまた、昔の彼が持っていた女々しさの残滓と言えるでしょう。

戦闘力は皆無に近いため、自分が身の危険に晒される殺人現場では恐怖を和らげるため酒を呷るなど、落ち着いたとはいえ脆弱さの名残もあるようです。

また、生徒から「デレ期の無いツンデレ先生」とも言われており、ライダーに対して見せていたツンデレっぽい感じも割とそのまま。
デレ期がないのは単に繋がりの深さの問題で、自分の教え子、特にグレイにそれを見せる日はそう遠くないでしょう。

そして、2019年夏に放送されるアニメに先駆け第0話を放送した際には、10年前を思わせる顔芸をしっかり披露してくれました。
特に足をぶつけたシーンの声は当時の彼そのままで、ここでようやくエルメロイII世＝ウェイバーと認識できた人も多いのではないでしょうか。

まとめ

コミック版と比較して、アニメ版のエルメロイII世はウェイバー君だった頃の彼を思い出させるシーンが多いように思えます。
とはいえ、ヒロイン要素のないウェイバー君をウェイバー君だと脳が認識するためには、人によってはかなりの時間を必要とするかもしれません。

『ロード・エルメロイII世の事件簿』はジャンル的にはミステリーに分類されますが、エルメロイII世の中からウェイバー君の要素を見つけ出すというのが一番の謎解き要素かも？