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May
【冴えカノ】澤村・スペンサー・英梨々が負け犬でも可愛い理由
正妻候補筆頭の幼馴染ヒロイン……でした
出典 : Amazon.co.jp
英梨々は冴えカノの栄えある第1巻の表紙に選ばれたヒロインです。
ラブコメ作品の1巻の表紙となると通常はメインヒロインが描かれるのですが、本作は「メインヒロインが空気」というコンセプトだったため、メインヒロインの加藤恵(かとう めぐみ)ではなく英梨々が抜擢されたのです。
繰り上がり当選的な選出とはいえ、1巻の表紙といえば紛れもなく作品の顔。
ライバルの詩羽先輩を差し置いてこのポジションを獲得した英梨々は、最も正妻に近い立場にいたと言っても過言ではないでしょう。
ただし、それはあくまで原作の話で、アニメは少し事情が異なります。
というのも、冴えカノの物語冒頭はアニメと原作とでかなり内容が違っているからです。
アニメ(1期1話)では倫也と恵の出会いのシーンから物語が始まり、英梨々はその後に登場しますが、原作ではプロローグからお披露目。
しかもヒロイン勢で最も早く登場します。
マンガ版の1巻ではより英梨々が目立つ形になっているため、原作やマンガ版を先に読んだ人の多くは英梨々がメインヒロインだと思ったことでしょう。
その後の英梨々と恵の初対面のシーンも、アニメと原作ではかなり違います。
アニメでは、疎遠になっていた幼馴染の英梨々と崇拝している詩羽先輩を倫也がサークルに勧誘し、放課後に視聴覚室に来るよう頼んだ……にもかかわらずそれをすっかり忘れ、恵とファミレスで話し込んでいたところを英梨々と詩羽先輩に発見され、そのまま四人でテーブルを囲むという展開でした。
一方原作では、英梨々と恵の本格的な初対面の場は倫也の部屋です。
倫也は校内の廊下で英梨々と会った際、彼女に萌えバトルアニメのDVD(ただし4巻だけラベルをそのアニメに偽装したグロいホラー映像)を貸していました。
それは、サークル加入に色よい返事をしない英梨々と再交渉するための布石。
ホラー嫌いの英梨々がDVDを観て、4巻になって突然ホラー映像が流れたことにブチ切れて家まで怒鳴り込んでくるに違いない……という狙いでした。
チョロインの名を欲しいままにする英梨々は案の定それにホイホイ引っかかり、倫也の部屋に乱入。
彼の家で一緒にゲームをしていた(アニメ2話で「俺を男にしてくれ!」と引き留めた後)恵とは、そこで実質的な初対面を果たします。
ちなみに本当の初対面はプロローグで果たしていますが、英梨々の方は恵のあまりの存在感のなさにその時は気付いていませんでした。
アニメの1~2話では詩羽先輩とセットという印象が強かった英梨々ですが、原作のこの場面では存在感が一際輝いています。
恵の英梨々への印象が、他の同級生と同じく「金髪ツインテで超美人のお嬢様」だったため、この時の緑ジャージ&髪ボサボサ&(倫也絡みの女には)性格超悪い子&稼ぎ重視の同人ゴロ丸出しの英梨々を目の当りにし、そのギャップに呆然。
その後も、英梨々の家庭環境についての話、オタク談義、詩羽先輩との関係、恵のプレイするギャルゲーに対する熱い思いなどを倫也と延々と語り続け、最終的には朝を迎えます。
アニメ1期2話では恵が「主人公と朝まで語らい合うメインヒロイン」として描かれていましたが、原作ではむしろ英梨々の方がそのポジションだったのです。
原作でも1巻の終盤は恵メインのストーリーになるため、基本的にはやはり彼女がメインヒロインです。
しかしこの時点では恵の性格がフラット過ぎることもあり、人気面では英梨々と詩羽先輩が冴えカノを支えていたと言っても過言ではありません。
特に、英梨々がストーリー上でもメインとなった原作3巻の終盤(アニメ1期9話)で、英梨々と倫也が小学生時代についてぶっちゃけるケンカのシーンは見応えがありました。
英梨々と倫也は元々英梨々の両親によってオタクに染められた幼馴染。
そのため、小学生時代はオタク同士、仲睦まじく毎日オタク談義に花を咲かせていました。
しかし圧倒的に可愛いハーフの女の子である英梨々と仲良くしていた倫也は他の男子に目を付けられ、英梨々共々いじめの標的にされます。
ただでさえ、男女が仲良くしているだけで冷やかされる年代。
しかもオタクということもあり、それを徹底的に突かれ攻撃されたようです。
ここで二人の人生は一旦分かれます。
英梨々はいじめを回避するためにオタク談義を一切止め、自分がオタクであることを徹底的に隠すようになりました。
一方の倫也はオタクであることがいじめの理由になった理不尽に納得できず、むしろオタク強度を大幅に上げ、布教運動をはじめ周囲から引かれるくらいの行動を重ね、委員長にまでなり、「白い目で見られようといじめられはしないオタク」の地位を得ます。
倫也はもう一度英梨々とアニメやマンガの話ができる「オタクの王国」を復活させたい一心で、一年掛けてその居場所を作りました。
しかし英梨々が望んでいたのは、倫也も自分と同じ隠れオタクになってくれること。
両者の想いは交わることなく、やがて疎遠になっていきました。
(余談ですが、これは「筋道を立てて理論を構築するあまり大事なことが欠落しがちな男性脳と、共感を望むあまり自己の目的や理想を他者に求めすぎる女性脳との男女差」を見事に表現した関係性です)
このことを2人はずっと、高校生になってからも根に持っており、仲直りしないまま宙ぶらりんになっていました。
結局このシーンでも仲直りはできませんでしたが、主人公とヒロインが過去の出来事に対するネガティブな心情を吐露し、想いをぶつけ合うという作中でも屈指のエモい名場面になりました。
のちに倫也は「あの頃の俺には英梨々だけだった」と述懐しています。
言わずもがな、彼の初恋は英梨々でした。
英梨々がメインヒロインになるルートも確かに存在したのです。