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Apr
【ハイスコアガール】日高小春という負けヒロインの概念を変えたヒロイン
「負けヒロイン」を超えたヒロイン
出展 : Amazon.co.jp
小春にとって、ハルオへの恋は最初から無謀でした。
彼女がハルオと親しくなった時、既にハルオの中には晶がいて、晶もまたハルオを必要としていました。
二人の間にある何者も寄せ付けないような絆を感じていた小春は、自分の恋が成就するのは難しいと早々に理解していたと思われます。
それでも、小春は諦めませんでした。
高校生になって、ハルオとは違う学校になって、他の男子から告白されるようになっても一途に彼だけを想い続けます。
ハルオに振り向いてもらうために晶と同じように髪を伸ばし、ゲームの腕を上げてハルオに勝ち続けることで関心を持たせ、「ゲームで勝負して勝ったら付き合って」と持ちかけ、挙句にはどうしても自分を女として見てくれないハルオを「布団がある所」に誘うという最終手段にまで出ます。
そこまでしてでも彼を手に入れようとしたのです。
しかし悲しい哉、これらはメタ視点だとどうしても「負けヒロイン」ならではの行動に映ってしまいます。
実際、結果としてそうなったことを考えると、日高小春というヒロインは最初からそのポジションに収まるべくして生まれたキャラなのかもしれません。
けれど彼女は、最後の最後で恋の呪縛から逃れます。
きっかけは恐らく、8巻での晶との直接対決でしょう。
『スーパーストリートファイターII X』で晶と対決することになった小春は、どんな手を使ってでも恋敵である彼女に勝とうと意気込みます。
使用キャラの性能や相性もあって、結果的には小春の勝利。
しかし、晶のひたすらまっすぐな強さに、自分と彼女の想いの明確な違いを感じ、身を引く決心をしました。
けれど、小春の恋が偽物だった訳では決してありません。
ただ、「楽しいことにまっすぐなハルオ」と「ゲームにもハルオにもまっすぐな晶」の間に入り込む余地がないと感じた以上、小春の想いは完全なまっすぐではなかったのでしょう。
例えまっすぐでなくても、純粋な恋心は存在します。
小春の想いもそうです。
しかし、まっすぐ同士の方がやはり相性は良いのです。
小春にとって、ハルオは相性の良い男子のはずでした。
でも、小春以上にハルオと相性の良い女子がいた。
それだけの差だったのだと思います。
引き下がると決めた小春は髪を切り、ハルオに対する少し歪んだアプローチを自らの手で断ち切りました。
そしてその上で、再び海外へ行くことになった晶と袂を分かとうとしたハルオを叱咤し、晶の元へと向かわせました。
結果的に恋に破れた小春は、負けヒロインというポジションになるのでしょう。
でも、最後にまっすぐハルオの背中を見つめる小春にその言葉は相応しくありません。
初恋が終わる切なさと、最後にまっすぐになれたことへの満足が入り交じったようなその表情を、どんなヒロインよりも魅力的に感じた読者はたくさんいたはず。
恋に負けて、小春は誰よりも素晴らしいヒロインになったのです。