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【ゾンビランドサガ】はどうして成功したのか? 検証まとめ #ゾンビランドサガ
出展 : Amazon.co.jp
2018年秋クールを代表するアニメとなった『ゾンビランドサガ』が、なぜ成功することができたのかを徹底検証!
放送前の期待度、内容やキャラクター、ニコ動の再生数など様々な視点でこのアニメがヒットした理由を模索していきます!
放送前の徹底した情報規制
2018年初秋、様々なメディアで放送直前の秋アニメを対象にした期待度ランキングが発表されました。
『ソードアート・オンライン アリシゼーション』『とある魔術の禁書目録III』といった超メジャーなアニメの続編、原作小説とコミカライズが共に大ヒット中の『転生したらスライムだった件』などが上位にランクインする中、『ゾンビランドサガ』は以下のような結果でした。
アニメイトタイムズ「2018秋アニメ、何観るアンケート」……20位圏外
アニメ!アニメ!「2018年秋アニメ 期待値の高い作品は?」……20位圏外
アキバ総研「来期は何を観る!? 観たい2018秋アニメ人気投票」……10位圏外
PASH! PLUS『みんなが選んだ「2018秋アニメ期待作」ランキング』……10位圏外
キャラペディア「もっとも期待している2018年秋アニメ作品 TOP20!」……20位圏外
要するに、完全ノーマークな作品だったのです。
ただしこれには明確な理由があります。
放送前、アニメファンはゾンビランドサガに関する情報をほとんど得られなかったのです。
本作の制作・放送が告知されたのは2018年7月6日。
この時はタイトル、放送時期、MAPPA×エイベックス・ピクチャーズ×Cygamesによる製作のオリジナルアニメということだけが発表されました。
放送3ヶ月前の時点での告知は遅い方ではありますが例外的というほどではなく、この時点ではまだ普通のアニメという認識だったと思われます。
Anime Expo 2018で公開されたキックオフムービーやビジュアルにはキャラクターが一切登場せず、パニック系っぽい物々しい雰囲気をまとった風景のみが描写されていました。
キャストが公開されたのは、放送約1ヶ月前の8月31日。
しかしこの時点でも詳細は一切明かされず、9月10日になってようやくPVとメインビジュアルが公開され、各キャラクターのビジュアルや声が判明しましたが、内容に関しては秘密のままでした。
その後、9月22日に先行上映会が行われましたが……その公演名は「“ネタバレしません誓約書”先行上映会」。
徹底した情報規制が行われていたことがよくわかります。
こうして、放送寸前まで内容が一切明かされないまま、ゾンビランドサガは放送日の10月4日を迎えることになりなす。
内容を徹底的に隠すのは「第1話で視聴者に衝撃を与えるため」に尽きます。
もし第1話がなんの変哲もない内容だったら、視聴者は肩透かしを食らうことになるでしょう。
そうなってしまうと、隠していたのが却ってマイナスになってしまいます。
ゾンビランドサガの命運は、第1話に全て掛かっていたと言っても過言ではないでしょう。
衝撃の「1分14秒」
事前に一切内容を公開しないままスタートしたゾンビランドサガの第1話は、放送開始から僅か1分14秒で視聴者を釘付けにします。
アイドルに憧れる佐賀県出身の主人公・源さくら(みなもと さくら)がオーディションへの応募書類を持ち家を飛び出した瞬間、軽トラにはねられるという超展開!
しかもその主人公死亡のシーンをOPにするという(1話のみ)前代未聞の試みが実行されたのです。
この「開始1分14秒で主人公死亡」だけでも十分に情報規制の価値はありましたが、本作の第1話はそれだけではありませんでした。
ゾンビとして蘇っていたさくらを待ち構えていたのは、「ゾンビ少女でアイドルを結成して佐賀(サガ)を救え」と荒唐無稽な事を言ってくる謎のプロデューサー・巽幸太郎(たつみ こうたろう)。
彼のハイテンションかつ意味不明な言動に押され、なし崩しのうちに行った初ライブで、さくらは6人の自我なきゾンビ少女と共に文字通りのデスボイスと首が折れるくらいのヘッドバンギングを披露し、終始カオスに満ちた1話は幕を閉じました。
ゾンビアニメにありがちなパニックものと思われていたゾンビランドサガは、フタを開けてみるとギャグ要素の濃いアイドルアニメだったのです。
この大方の予想を覆した第1話の放送終了後、SNS上では「ぶっ飛びすぎ」「恐ろしいギャップ」「とんでもないアニメが始まった」と絶賛の嵐。
アニメ!アニメ!で後日実施されたアンケート「2018年秋アニメ 1話を見て期待が高まったタイトルは?」では堂々の4位にランクインし、圏外だった期待値ランキングから飛躍的な浮上を遂げました。
オリジナルアニメは「これから面白くなる」という保証がないので、1話目が面白くなければ容赦なく切られてしまいます。
その1話でこれ以上ないインパクトを残したことが、ゾンビランドサガが成功した理由の1つと言えるでしょう。
そしてもう1つ、この破天荒な1話によって生み出された効果があります。
視聴者視点の誘導です。
アニメの数が増え、視聴環境の選択肢が増えた近年、視聴者がアニメに求めるものも昔とは大分変わってきました。
より細かい部分にまで視聴者の目が行き届くようになり、大雑把な設定や強引なストーリーが以前よりずっと批難されやすい状況になっています。
ゾンビランドサガには、強引な設定や展開が多々あります。
ゾンビのさくらたちが「特殊メイク」で完璧に人間と同じ見た目になれるのも、生前は大人気アイドルだった愛や純子がなかなか顔バレしないのも、不自然と言えば不自然。
普通のアニメなら否定的なニュアンスでツッコまれても不思議ではありません。
しかし1話で型破りな世界観をいち早く披露し、「これは細かい所にツッコんだら負けのアニメだ」と思わせていたことが奏功し、本作はそこが批難の対象にはなっていません。
視聴者の視点をマイナスのツッコミ所ではなくプラスのツッコミ所へ導いた結果です。
ゾンビランドサガの第1話「グッドモーニング SAGA」は、近年稀に見る完成度の高い“掴み”だったのです。