19
Feb
芦原妃名子先生の全作品を紹介。代表作『砂時計』は700万部の大ヒット、過去にも複数回の実写化
月と湖
(画像引用 : Amazon)
砂時計の連載終了後に描かれた短編『月と湖』『12月のノラ』を収録。
表題作『月と湖』は、祖父の未発表の小説「月と湖」を巡り想いを馳せる少女・一菜の葛藤を描いた作品です。
長期連載後の作品とあって絵柄もかなり変わり、より精巧で洗練された絵になっています。
コンビニS 芦原妃名子コレクション3
(画像引用 : Amazon)
既に単行本に収録済みだった『コンビニS』『Happy? Happy!!』『倖せの国』の3篇を再収録した短編集。
本作の発売に合わせ、コレクション1~2の新装版も同時リリースしました。
Piece
(画像引用 : Amazon)
砂時計以来となる長編作品で、ベツコミ2008年5月号~2013年5月号にて連載。
連載開始当時は『Piece ~彼女の記憶~』とサブタイトルを付けていました。
感情表現の乏しい女子大生・須賀水帆が、19歳という若さで亡くなった高校時代のクラスメイト・折口はるかの母から「娘を妊娠させた男子を見つけて欲しい」と依頼され、彼女の足跡を追う過程で自分自身と向き合っていく物語。
これまでの作品とは大きく作風を変え、サスペンス要素の濃い内容になっている所が特徴です。
本作も1話目から引き込まれる内容になっていて、早く先を読みたいと思わせる展開の連続に心を掴まれます。
評価も高く、第58回小学館漫画賞(少女向け部門)を受賞しました。
全10巻。
2012年に日本テレビによって実写ドラマ化されています。
Bread&Butter
(画像引用 : Amazon)
Pieceの連載終了後、集英社のヤング・レディース誌「Cocohana」で2013年11月号~2020年5月号に連載された作品です。
芦原先生が小学館以外の出版社で手掛けた唯一の作品となります。
34歳で婚活を始めた元教師の深田柚季と、パン作りもしている風変わりな文具屋店を営む39歳の原洋一による、逆プロポーズから始まる大人の恋愛ストーリー。
レディース誌という事で登場人物の年齢が一気に上がりましたが、作風は前作『Piece』よりも若返った印章で、人間のエグみも時折覗かせるものの全体としてはライトな作風になっています。
全10巻。
全編を通して読者の期待に応えた名作です。
芦原妃名子傑作集1 記憶
(画像引用 : Amazon)
芦原先生のデビュー20周年を記念して2014年に発売されたベストセレクションです。
収録されているのは2014年夏にビッグコミックオリジナルで発表された新作短編『乞う女(ひと)』と、過去に単行本化されている『中学1ねんせい -恋未満-』『月と湖』『オルガン』『カッコウの娘』『蝶々雲』の計6作品。
『乞う女』は老齢の大企業の会長と結婚した若き後妻・彩香を巡る異色作です。
芦原妃名子傑作集2 祈り
(画像引用 : Amazon)
『記憶』と同時発売。
こちらにはベツコミのオムニバス単行本シリーズ「Pure Love Seasons 4 冬~ずっといっしょ~」で発表した『スゴロク』、そして過去作『12月のノラ』『コンビニS』『カナリヤ ~30 years ago~』『中学2ねんせい -男嫌い-』を収録。
『カナリヤ ~30 years ago~』は砂時計の番外編として9巻に収録された中編です。
これらベストセレクション2作をリリースするにあたり、芦原先生は「全て新作!!とかではないので、だまされて買っちゃわない様に、くれぐれも気を付けて下さいねー!! 新作は、あくまでほんの少しです。」とコメントしています。
先生の優しく真面目なお人柄が現れています。
セクシー田中さん
(画像引用 : Amazon)
姉系プチコミック2017年9月号~2024年1月号で連載。
遺作、そして未完という事になります。
アラフォーで独身の地味な経理部OL、そして夜にはベリーダンサーSaliとしての顔を持つ田中京子と、彼女に影響を受けていく周囲の人々を描いたヒューマンライフコメディ。
タイトルからも想像できるように、これまでの作品の中で最もコメディに振り切った内容ですが、決して軽薄ではなく人間の浅い部分から深い部分まで丁寧に描いた内容になっています。
エンタメ作品として非常に優れた漫画で、6巻発売時に100万部を突破するなどメディアミックス前からヒットしていました。
2024年2月現在、7巻まで発売。
2023年に日本テレビによってドラマ化されました。
尚、ドラマ及び関連する出来事ついては主旨から外れるのでここでは触れない事とします。
その他の読切作品
(画像引用 : 『Fujisan』公式サイト https://www.fujisan.co.jp/)
単行本未収録の読切作品として、月刊flowers2016年11月号に掲載された「winter fool」があります。
年末を舞台に、故郷へと帰ってきたバツイチの主人公・あづさが死んだ兄を名乗る男と出会う「嘘」の物語。
今後、何らかの形で単行本化されるかもしれません。
まとめ
初期の作品から順を追って読み返してみると、ずっと右肩上がりで漫画が上手くなっているなあ……と思わずにはいられませんでした。
特に砂時計以降は、人間の強さと弱さを常に表現し続けていて、その腕前は年々磨きがかかっていたように思います。
作風の幅も広く、重いテーマに対し読者が少しでも読みやすいように……という配慮も随所で感じました。
これから芦原妃名子先生の作品に触れたいという方には、まず砂時計をおすすめします。
それとBread&Butter、この2作品をまず読んでみて肌に合うと感じた方はぜひ他作品や短編も読んでみて下さい。
最後に、未完という形になってしまいましたが『セクシー田中さん』は老若男女におすすめ出来る名作でした。
もう続きが読めないという悲しみを味わってしまう事になりますが、それでも読んで欲しい漫画です。