⑩ウォール・マリア最終奪還作戦(進撃の巨人 考察まとめ)
進撃の巨人の最終回はいつだろうか? エレンが巨人の力を世界からなくしたときだろうか? 違う。ウォール・マリア最終奪還作戦だ!!
何もかも投げ出したくなるような絶望的な巨悪と、それに心臓を捧げ立ち向かう兵士たち。まさに進撃の巨人を象徴するエピソードだ。
エルヴィンとアルミンの命が天秤にかけられるシーンも壮絶である。
進撃の巨人は『選択』がテーマになっているときがいくつかある。例えば、エレンが女型に追われているとき、巨人化するかどうかで逡巡するところだ。
単行本7巻の表紙は、エレンが巨人化して、ペトラたち旧リヴァイ班の面々と共に女型の巨人を迎撃した未来だといわれている。
話をウォール・マリア最終奪還作戦に戻そう。
⑪グリシャの手記、世界の真実(進撃の巨人 考察まとめ)
全世界が待ち続けたネタバレ回である。
よくあった予想は、巨人は人間が科学的に開発した戦闘兵器というものだ。
また、ピクシスが初登場した際にこんな台詞を言っていた。
「人類は種族や理(ことわり)の違う者同士で果てのない殺し合いを続けていたと言われておる。その時に誰かが言ったそうな。もし…人類以外の強大な敵が現れたら、人類は一丸となり争い事をやめるだろうと…」
このことからも、巨人は人為的に開発された種と予想する人が多かった。
しかし諌山先生は北欧神話と近代史を見事に融合させたエピソードを用意しており、誰も予想しえぬ結果となった。
ナチスによるユダヤ人強制収容所がエルディア人収容所のモデルなわけだが、拷問のシーンまでキチンと描写したのには驚きだ。
エルディア人収容所とは、『無垢の巨人』という人間兵器を生み出すための牧場なのである。
子供の頃からの憧れ、『海』にたどり着いたエレンは、笑うことはなかった。
個人的な話だが、私は海に面していない埼玉県の出身で、11歳くらいまで海で遊んだことがなかった。初めて海にいったとき、波と空と太陽と砂浜のコラボレーションが楽しすぎて、夢中になって泳ぎ、遊んだことを覚えている。
だからアルミン、ミカサと共に、エレンが海で笑い合う姿を夢想していた。
⑫軍事大国マーレ編(進撃の巨人 考察まとめ)
主人公も世界も、何もかもがここで変わった。舞台は『マーレ』という戦争真っただ中の近代国家。
しかし立体機動装置と超硬質ブレードがあったことから、ガス関連と製鉄技術だけは発展していたのだろう。
哀しいことだが、戦争が人類の技術を飛躍的に発展させる。我々の世界でも、医療技術や航空・造船技術、嬉しくはないが爆弾なども二度の世界大戦で急激に発展した。
マーレとパラディ島の位置は、上下左右が逆のアフリカ大陸とマダガスカル島の位置で間違いないだろう。『進撃』の登場人物はヨーロッパ系の顔立ちが多いが、アフリカ大陸に住んでいると考えると面白い。
エレンたちが海を見てから4年の歳月が経過しているが、あまり外見的特徴の変化は見られない。
表面的な楽しさではなく、リアルな人間模様を描くと決めた諌山先生の決意の表れだろうか。
ヴィリー・タイバーの演説の最中に巨人化する演出は最高である。
ここで完全に登場人物の善悪が逆転した。ここまで主人公が敵キャラに回る作品がかつてあっただろうか? 『機動戦士ガンダム』は戦争の話なので、どちらの陣営も悪くない、みんな戦いたくないという物語だったが、アムロ・レイは悪役扱いされなかった。
しかし『進撃』はどうだ? 生きるために主人公たちが他国を侵略するという問題作なのである。
人類のため、知恵を振り絞って超大型巨人と戦ったアルミンが、同じ超大型の力で港を吹っ飛ばすシーンが印象的だ。
⑬パラディ島内乱編(進撃の巨人 考察まとめ)
『機動戦士Zガンダム』よろしく、パラディ島での内乱が描かれる。戦う相手が人間というのは王政奪還編以来だが、ジークやマーレ義勇兵がいるからか、こちらの方がシリアスで惹きつけられる。
どのキャラクターにもそれぞれの考えと正義があるのが面白いところで、例えばエルヴィンとピクシスも完全に同じ志を持っていたわけではなかった。
群像劇としてもクオリティが異常に高い。
エレンが完全に悪者になってるわけで、壮絶なイメチェンである。ペトラたちがこの大人エレンを見たらどう思っただろうか。
後半ではジークの過去が描かれる。進撃の巨人屈指のクソ野郎であるジークにも大切な人と信念があったわけだ。
ここはアニメだと子安さんの演技がすごいので見てほしい。おっさんジークと青年ジークで声が違うし、青年ジークはイケボでびっくりする。
⑭マーレ・カウンターアタック(進撃の巨人 考察まとめ)
一か月ほどでマーレが逆襲してきたわけだが、完全に軍備が整ったわけではないだろう。しかし早々に殴り返すというのは戦術として効果的だ。
奇襲性があるので心の隙間を突けるのである。どんな軍隊でも油断があればそこから崩せる。
アニメでいうとFinal season1期のラストから2期の序盤に当たる。車力の巨人がバックパックを換装したが、お前ゾイドみたいで面白いなと思ったのは私だけではあるまい。
この『対巨人法装備』はマーレ編が始まったときに争っていた中東連合から鹵獲した対巨人砲台を元に設計されている。
復讐に燃えるガリアードが勇ましくて好きだ。
『男子三日会わざれば刮目してみよ』。負けた男の再挑戦には心を動かされる。
『戦鎚エレン』のお披露目となったわけだが、相当手ごわいらしく、鎧、顎、車力の3人がかりである。
ジークに「巨人化の咆哮を止めてくれ!」とコルトが懇願する。
「弟を想う気持ちは…よくわかる…」とジークがつぶやくのだが、この場にはジークとエレン、コルトとファルコ、さらにマルセルの記憶を見たポルコと、兄弟が3つも存在していたのである。
無垢の巨人になったファルコがやけに強いが、ファルコはジークの脊髄液を大量に摂取したわけではないので、『どの巨人を強くするか』はある程度ジークが決められるようだ。
ジークとエレンの『記憶ツアー』だが、これができた理由は2人が王家の巨人と始祖の巨人で、なおかつ時間の概念のない『道』に入っているからである。
『地均し』ではないのがポイントだ。
⑮最終章 天と地の戦い(進撃の巨人 考察まとめ)
ついに最終章である。ここからは物語を展開するというより、まとめに入った感がある。
なるべく『良い終わり方』になるように、予想を裏切る形で、捧げた心臓が報われるようにしたのだろう。
地鳴らしを発動したエレンを放置していれば「パラディ島は安泰」と言っているキャラがいたが、実はこの段階でパラディ島はズタズタである。
ジークの叫びでピクシスを始めとする首脳陣が一斉に巨人化したため、遺憾だがフロックが上位権力者になってしまった。ハンジとリヴァイも行方不明の状態だったし、国としてかなりマズイ状況である。
巨人化したナイルをガビが殺したシーンは業が深いとしか言えない。
104期生はエレンを止めに行くフェーズに入るわけだが私なら行かない(笑)
でも、それで良かった。あの結末で死んでいった兵士たちは満足したのだ。
ダズとサムエルがまさかの大活躍である。
この港での戦闘シーンは比較的コニーの出番が多い。
エレンから神託を授かった神官気取りのフロックだが、キヨミに固められる(笑)
このときの極め技は合気道に近い。ヒィズルは日本モチーフなので、格闘技ファンの諌山先生は日本の古流武術を調べたのだろう。
エレンの記憶が少し明かされるシーンがあり、ここでヒストリアと密会していたことが明らかになる。
進撃の巨人七不思議のひとつに、『ヒストリアの旦那の影が薄い』ことがあり、「実はエレンと付き合ってたんじゃ…」という噂が流れた。
確かにエレンとヒストリアは美男美女だし、境遇も似ていてお似合いである。
しかし最終回まで見ればミカサ一筋だったのは明白だ。
33巻の表紙が1巻と対になっているのは有名である。
あばら骨で歩くとかだいぶ思い切ったな。
ここで注目したいのが、進撃の巨人の世界地図だ。
先述のように、現実世界の地球と上下左右が逆になっている。現実世界のアフリカ大陸南端がマーレの場所なのだが、マーレ人、エルディア人はヨーロッパ系の顔立ちが多い。そして逃げ惑う人々の中に、黒人が多くいるカットがあるが、明らかにイギリスの首都ロンドンの風景なのである。
つまり、現実世界から人の位置は変わらずに、地球が上下左右逆になっているのだ。
ヒィズルっぽい国に巨人が上陸する描写もあるが、ヒィズルの位置も日本とは違うのかもしれない。
クサヴァ―さんは羊の巨人で、確かにジークと比べると手足が短く、戦闘向きではなさそうだ。
アニメではクサヴァーさんの妻が、子供を道連れに自殺したことが明かされるシーンで、羊のぬいぐるみが映っていた。
しかし車力はどれだか分からないな……。
エレンの進撃の目的は、『パラディ島の104期のみんなを、人類滅亡から救った英雄にすること』だった。
恋愛というものは大なり小なり気持ちわるいものだ。
エレンは始祖の力でエルディア人の記憶を操作することができた。
パラディ島を出航してから、飛行艇で飛び立つ前に(33巻)エレンは104期全員と話をして、一時的にその記憶を消していた。自分が死ぬことが分かっていたからだ。
アルミン以外との会話の内容は謎だが、ジャンは「律儀なクソバカ野郎め」と言っている。
ジャンといえばエレンの死後、ミカサの旦那になった説があるが、これだけミカサがエレンのことを思っているにもかかわらず、まだミカサのことが好きだったのは確かだろう。
もしかしたら、エレンは「俺の死後はミカサを支えてやってくれ」などと言い残したのかもしれない。
ユミルがミカサに興味を持っていたのは、自分のように重い愛情を持っていて、なおかつ東洋人のため始祖の力の強制力が及ばない存在だったからだろう。
しかしミカサはユミルと違い、愛する人を殺す決断をした。
まとめ(進撃の巨人 考察まとめ)
諌山創先生は意図的に考察が盛り上がるよう謎を残している。『進撃のスクールカースト』を本編の100年後の設定にしたこともそうだ。