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【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】ポップは何故ここまで支持されるのか? 徹底検証
あまりに多い見せ場
出典 : Amazon.co.jp
前述したように、ポップのヘタレ期間は全36巻の中で2巻分のみ。
以降は調子に乗ったり若干ヘタれたりするシーンが多少あるものの、友情・努力・勝利を重んじる当時のジャンプらしいキャラになり、数多くの見せ場を作っていきます。
というか、主人公のダイを食ってしまうレベルの多さです。
ダイ大自体、現在も語り継がれている名シーンが多い作品として知られていて、「アバンのメガンテ」「バランの最期」「『…今のはメラゾーマではない…メラだ…』で有名な老バーン戦」「ハドラーの覚醒と最期」「ヒュンケルの最終戦」「若バーン戦でのダイの覚悟」……など、ポップがメインではないエピソードの中にも名場面がたくさんあります。
しかしポップ絡みの名エピソードはそれ以上の数が揃っています。
「クロコダイン戦の2戦目」「クロコダインと共にダイを置いて逃げるシーン」「メドローア習得」「老バーン敗北後のダイへの激励」「シグマ戦」「ダイを助けるためキルバーンの罠に飛び込むシーン」「カイザーフェニックス攻略」と、ダイ大ファンなら容易に思い出せる名場面ばかりですが、それらでもまだ序の口。
ポップの珠玉の名シーンといえば、ダイを守るため死を決意してメガンテを使用した「バラン戦」、ヘタレだった過去を逆手にとって仲間を騙し、単身で強敵の足止めに向かった「竜騎衆戦」、最終戦の終盤でバーンに向かって短命な人間の生き様を誇示した「閃光のように」こそが3強でしょう。
特に「閃光のように」は、現在も多くの人が座右の銘にしているくらいの名言で、作品の枠を越えた格言とさえ言えます。
このように、台詞やシーンで多くのファンの心にその存在を焼き付けたポップは、連載が終わり何年が経ってもジャンプ読者の記憶に残り続け、「漫画史上最も成長したキャラ」として頻繁にネット上で名前が挙がっています。
2020年にネットニュースサイト「ねとらぼ」が実施したアンケート「『ダイの大冒険』の仲間キャラ、あなたが一番好きなのは?」では、なんと全投票の50%以上を独占しダントツの1位を獲得。
連載当時はダイが常に人気投票1位でしたが、今やダイ大の看板キャラは文句なしにポップでしょう。
成長キャラの激減が追い風に?
出典 : Amazon.co.jp
ポップというキャラの魅力は、ヘタレで仲間内でも強い方ではなく、また特別な血筋でもなく、技術的にも精神的にも未熟だった平凡な人物が、長い時間をかけて成長し作中屈指の強さを得たことに尽きます。
こういったキャラは現代はもちろん、ダイ大が連載していた90年代にも滅多にいませんでした。
比肩する存在として『GS美神 極楽大作戦!!』の横島忠夫がよく挙げられますが、その横島も両親がかなり有能な人物で、凡人から生まれた子供とは言い難く、ポップは極めて特異な存在と言えるでしょう。
長年にわたってポップのようなキャラが誕生していない背景には、流行の変遷が挙げられます。
2000年以前は、「物語とは作中で主人公が成長していくもの」という風潮が根強くありました。
バトルものの主人公は特にわかりやすい成長キャラが多く、初めは非力で内面も幼かった人物が、次第に肉体的・技術的・精神的に成長し、やがてリーダーとなり巨悪を討つまでに成長する……というのが定番の流れであり、それが物語の大きな見せ場でもありました。
しかし近年はそういった風潮はなくなりつつあり、最初から主人公が最強の物語が多く、必然的に成長が描かれる機会が減っています。
昔であれば、特訓や修行を長期的に描くのが普通でしたが、徐々に「修行パートは不要」という見解が増え、そこを省略する作品が多くなりました。
そのため、劇的な成長を遂げるキャラはいても、その大半は才能の覚醒などの理由によって即座に成長するパターンであり、人間の成長をじっくり描く作品はかなり少なくなりました。
また、主人公は特別な血筋、もしくは並外れた才能の持ち主というのも昔からの定番の設定で、ダイもその例に漏れず「竜の騎士」の血を引く特別な存在なのですが、こういった設定がありふれているのは、急激に強くなることの理由付けとして最もわかりやすいからです。
才能があるから強くなる、という誰もが納得する設定だからこそ、その人物が強くなることに説得力が生まれるのです。
平凡な両親の息子であるポップが世界最強の魔法使いになったことに特別な裏付けはなく、修行パートを極力短くしようとする現代に同じことを行えば、ご都合主義と罵られるかもしれません。
じっくりと成長過程を描ける、また序盤のヘタレ描写をギリギリ許容できる大らかな時代だったからこそ、ポップはポップとなり得たのです。
つまり、近年はポップのようなキャラが誕生する土台そのものがなくなりつつあると言えます。
まとめ
2~3巻の頃のポップは今見返してみてもかなりヒドいので、これらの場面がアニメで放送されたら原作を知らない世代から総スカンを食らうことになりそうですね。
その後の約束された掌返しも含めて、かなり楽しみです!