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Aug
なろう最新の流行「ざまぁ系」って一体どんなジャンル? 検証まとめ
出典 : Amazon.co.jp
近年、小説家になろうで最も流行っているジャンル「ざまぁ系」について大特集!
一体どういう内容なのか、どんな作品が流行っているのか、アニメ化の可能性があるのかなど、ざまぁ系のあらゆる角度から徹底検証。
最新のなろう事情を掘り下げます!
悪役令嬢の一要素から独り立ち
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小説家になろうをはじめ、カクヨム、エブリスタといった小説投稿サイトで頻繁に目にするようになった「ざまぁ」というタグ。
これが「ざまぁみろ」から来ていることは、ほとんどの人が感覚的にピンと来ると思われ、そこから復讐劇の物語に用いられているタグだと想像するのもそう難しくはないでしょう。
実際「ざまぁ」のタグを付けている作品は、その多くが復讐を描いた物語です。
しかし、ざまぁ=復讐劇という訳ではありません。
ざまぁ自体は元々、ジャンルを示すものではなく要素を示すもので、主に「主人公を苛めていた悪役が報いを受ける」「偉そうにしていたキャラが失脚する」といった因果応報、或いは「あまり好感の持てない恵まれていたキャラが不幸になる」のようなスカっとする展開に対して用いられるタグでした。
ジャンルはどうあれ、これらの要素が作中にある場合は「ざまぁ」がタグとして使用されていたのです。
その「ざまぁ」が最初に使用されるようになったのは、pixivをはじめとしたイラスト界隈です。
『School Days』の主人公・伊藤誠(いとう まこと)や『魔法少女まどか☆マギカ』のキュゥべえといった、視聴者のヘイトを一身に集めるキャラを酷い目に遭わせ、見た人がスカッとするようなイラストに対して「ざまぁ」というタグが用いられていました。
その後、「ざまぁ」はWeb小説でも定着します。
なろうで「ざまぁ」というキーワードが使われ始めたのは2014年頃ですが、この時期はまだ流行の兆しはありません。
その後、2015~2016年に悪役令嬢・乙女ゲームのブームが到来し、その流れで転生した主人公が偉そうな婚約者の男をフる「婚約破棄」ものが流行。
この婚約破棄とセットで「ざまぁ」をキーワードに使用する作品が増え、タグとして定着するようになりました。
ただし、この時期はあくまでも悪役令嬢ものの中の一要素という意味合いが強く、「ほのぼの系じゃなくスカっとする系の悪役令嬢もの」と示すためのタグに過ぎませんでした。
しかし2017年後半頃から「ざまぁ」は悪役令嬢の一要素ではなく別個の一ジャンルとして独り立ちしていきます。
・「ざまぁ」タグを付けたなろう作品の数(カッコ内は悪役令嬢・乙女ゲームのざまぁ作品の数)
2014年時点 **44作品(**21作品)
2015年時点 *217作品(*104作品)
2016年時点 *466作品(*210作品)
2017年時点 *822作品(*381作品)
2018年時点 1623作品(*600作品)
2019年時点 2870作品(1017作品)
2020年時点 4683作品(1401作品)※8月3日現在
2014~2015年は「ざまぁ」タグが付けられた作品の50%が悪役令嬢・乙女ゲームもので、2016~2017年も45%前後を占めていましたが、2018~2019年は35%に減少。
2020年現在、30%にまで下がっています。
このデータからもわかるように、近年は悪役令嬢・乙女ゲーム以外の作品に「ざまぁ」が付けられるケースが急増しているのです。
そして、作品の数が増えれば自然に典型的な話の流れ、すなわちテンプレが生まれるもので、その結果それらを一括りにした「ざまぁ系」というジャンルが誕生しました。
現在主流の「ざまぁ系」とは?
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悪役令嬢ものから完全に独り立ちし、全く異なるジャンルとなった「ざまぁ系」。
そのテンプレは、主に以下のような内容です。
1. ジャンルはファンタジー。異世界転移/転生よりもハイファンタジーが主流
2. 主人公はハイレベルな冒険者や勇者のパーティの一員で、足手まといと思われている
3. 見切りを付けられる、裏切られる、気に食わないから、などの理由で主人公がパーティから追放される
4. 実は主人公には特別な才能があり、追放後に急速に力を得て最強クラスの存在になる
5. 一方、主人公を追放したパーティはその後落ちぶれ、主人公に戻るよう懇願
6. 力も富も名声も得た主人公は相手にしない
2~3はいわゆる導入部で、異世界転移/転生で言うところの「うだつの上がらない人物だった主人公が異世界に転移/転生した」という部分に該当します。
要するに序章であって、起承転結の「起」ですね。
ここが読者の共感を呼んだり、その後のカタルシスへの布石となったりするため、重要な部分ではありますが、作品の中核を担うことはありません。
4は、異世界転移/転生においては最も重要なパートと言えます。
別世界ではダメダメだった主人公が新天地で最強になり、すました顔で敵を圧倒するところに多くの読者がカタルシスを感じ、その後も次々と生じる問題を実力者の立場で解決していきます。
異世界転移/転生において「承」に該当する部分であり、ここから物語は転→結と続いていきます。
一方、ざまぁ系は4さえも「起」です。
このジャンルにおいては、主人公が最強になることは物語の見せ場ではなく、あくまでも前フリ。
本番は5、すなわち主人公を蔑ろにしたキャラが転落する様を描くパートです。
そのため、ざまぁ系は主人公の視点だけで描かれる訳ではなく、主人公を追放したキャラたちの視点で描写されるエピソードが自然と多くなります。
作品によっては、主人公より彼らの出番が多いこともあるくらいです。
つまり、これまでヒットしてきた多くの作品が主人公の成長物語であるのに対し、このざまぁ系は「脇役の転落物語」なのです。
主人公を冷遇したキャラたちが散々悲惨な目に遭い、その報いを受けたのち、読者にカタルシスを与える6の部分が描写されます。
このパートは異世界転移/転生のお約束エピソード「主人公が事もなげにやった行動を周囲が驚愕し讃える」と似ていて、立場が逆転した主人公がかつての仲間を平然と無視したり、相手にしなかったり、情けをかけて助けたりするところも一応見せ場の一つです。
ただそれ以上に、かつて下に見ていた主人公から逆に軽視され、それでもなお縋り付く元仲間の無様な姿こそが最大の「ざまぁ」ポイントで、ここにカタルシスを感じさせる構造になっています。