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May
【イエスタデイをうたって】森ノ目榀子が地雷女と言われている理由とは? 徹底検証
「地雷女」の理由は魔性の女だから?
好きだった人を失った過去を持つ可哀想な女性、として描かれている榀子ですが、残念ながら読者人気は決して高くありませんでした。
それどころか「榀子」でGoogle検索すると、サジェストで「榀子 嫌い」「榀子 地雷」と出て来るほど。
何故、彼女は地雷女認定されているのでしょうか。
その理由は単純で、リクオを完全にキープ扱いしているからです。
前述したように、榀子は幼なじみの湧を忘れられず、リクオの告白を断っています。
その上で「友達のままでいて欲しい」と頼むこと自体は、決して褒められる発言ではないものの、そこまで責められることではありませんが……榀子が地雷女と言われる所以はその後の行動に原因があります。
まず、告白を断って以降も頻繁に2人きりで会って食事したり、買い物に誘ったりしている点。
本人にはその自覚はないようですが、ほぼデートのようなもので、結果的にリクオに「まだ脈はある」と匂わせる行動になっています。
また、リクオの高校時代の彼女・柚原チカ(ゆずはら ちか)が彼の家に転がり込んで来たのを知った際には、圧のある笑顔でリクオを威嚇するなど、嫉妬しているような態度をとります。
榀子のことを諦めきれないリクオは、榀子が気持ちに整理を付けて過去と折り合いを付けるまで待つと宣言しており、にもかかわらず他の女の影をチラ付かせる結果になったリクオの脇が甘いのも事実ですが、それにしたって少々匂わせが過ぎる態度と言わざるを得ません。
その上、困ったことがあるとすぐリクオに相談します。
これは本人も悪いと自覚していますが、それでも気軽に話せる人間が他にいないと理由付けして、現状維持のままでいます。
まさにキープ状態です。
しかし、それでも榀子は作中でほとんど責められることはありません。
というのも、これらの行動を彼女は全て天然でやっているからです。
計算でやっている訳ではないのです。
性格自体は温厚で優しく、他人に対して過保護になるほど面倒見が良く、学校の生徒からも人気があり、周囲の教師にも可愛がられています。
そのため、読者視線だと「男をキープ扱いしてる女がなんの報いも受けないのは納得いかない」「外面が良すぎる」といったヘイトが溜まり、余計地雷扱いされてしまうのです。
ちなみに、作者の冬目景先生いわく「この人、やばいなあって描きながら思っていました」とのこと。
つまり榀子は作者公認の地雷女なんです。
『めぞん一刻』の管理人さんと激似?
出典 : Amazon.co.jp
作者から「ヤバい人」と思われるくらい地雷女の榀子ですが、実はかなり似た設定のキャラがいます。
『めぞん一刻』の管理人さんこと音無響子(おとなし きょうこ)です。
彼女も、若い身空で夫を亡くし、その後2人の男性から言い寄られながら態度をハッキリさせず、ぬるま湯というキープ状態を長年続けていました。
どちらも周囲から見て気立ての良い女性という点も共通しています。
恋愛経験が豊富ではない点も同じですね。
そしてそれ以上に共通しているのは、臆病なところです。
柚原の一件以降、榀子は少しずつリクオを異性として見るようになっていて、その気持ちは次第に膨らんでいきます。
更にその後、自分は湧のことを口実に逃げてきただけ、本当は一人ぼっちになるのが怖いと述懐します。
その上で、「リクオがもっと強引だったら、と思っていたのかも」と話します。
これはつまり「もっと積極的にアタックしてくれれば『こんなに想われてるんだから仕方ないか』と自分を納得させられる」ということ。
自分で決断するのが怖いから、それをリクオに委ねるという意思表示です。
ちなみに、めぞんの管理人さんも同じようなところがあります。
彼女たちのこういった面は、解釈によっては卑怯とも取れ、魔性の女といった印象を与えます。
しかし、魔性に惹かれる男性が一定以上いるのも事実で、この面に関しては榀子の魅力と言える部分でもあります。
地雷女だからといって、決して魅力がないキャラではないのです。
まとめ
リクオ視点で物語を読み進めている時は、そこまで酷いことをしているようには思えなかったんですが、あらためて榀子センセーの行動だけを追っていくと、確かに地雷と言われても仕方ないかも……と思ってしまいますね。
でも、そんな彼女の魔性の一面があるからこそ、積極果敢なハルとの対比になっていて、『イエスタデイをうたって』という作品が名作になり得たのだと思います。