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Mar
【彼女、お借りします】水原千鶴というクズ相手にも救いの手を差し伸べるプロのレンタル彼女
「素の彼女」一ノ瀬千鶴が抱える恋愛問題
出展 : Amazon.co.jp
千鶴は和也と祖母絡みで縁を持って以降、何度もその縁を絶とうとします。
それは、彼が迷惑な客だから……ではありません。
レンカノのバイトをしていることを周囲の人たちに秘密にしている彼女にとって、和也の存在が強い懸念材料になるからです。
というのも、和也が自分と同じ大学に通っていることが後に判明。
しかも住んでいる部屋まで隣同士だったのです。
偶然とはいえ、常に自分のプライベートに関わってくる彼の存在が身バレに繋がると心配するのは当然でしょう。
しかし、和也が家族だけでなく友達にまで千鶴を「彼女」と紹介してしまい、成り行きで和也の元カノのマミにまでそう認識されてしまったため、話が更にややこしくなり、千鶴の世話焼きな一面もあって、関係を継続。
和也の祖母や友達が悉く良い人で、彼女たちのフォローもあって、千鶴の和也に対する印象も少しずつ変化していきます。
そんな折、2人の関係を大きく左右する事件が起こります。
レンカノとして最後の付き合いと決め、和也の友達からもらったフェリー券を使い和也と船上デートする千鶴。
しかしその日は体調が悪く、加えて船酔いも併発してしまい、朦朧とした意識で風に当たろうと甲板に出たところ、バランスを崩し落水してしまいます。
千鶴がフェリーから海に落ちたと知った和也は、躊躇なく海に飛び込み彼女を救出し、どうにか近隣の小島に漂着したものの、そこで意識を失います。
先に気が付いた千鶴は、人工呼吸によって彼の意識を回復させ、お互い無事生還することとなりました。
自分を助けるために危険を顧みず海に飛び込んだ和也の姿を微かに覚えていた千鶴は、その彼の姿を回想し、一人頬を染めます。
この瞬間から、千鶴は和也に対し「レンカノとしてのお客様」以上の感情を抱くようになったと思われます。
ただ、千鶴が和也へ直接自分の感情を見せることはありません。
それは、レンカノの仕事をしているために生まれた問題が影響していると推察されます。
千鶴にとって、レンカノは夢のための資金確保と実践訓練を兼ねたとても重要なアルバイト。
彼女自身の真面目な性格もあって、例えバイトでも一切手は抜かず、カラオケでも相手がどんな世代でも合わせられるように歌えるアーティストを準備しておくなど、常に意識を高く持って客とのデートに臨んでいます。
そして、真面目な彼女だからこそ、仕事とはいえ恋人の真似事をすることに対し逡巡を抱いているようです。
マミが千鶴に接近し「恋人ごっこ」を止めるように言った際には、そういう仕事をやっているからこそ「人の恋心は凄く尊いもの」であり、「誰かをちゃんと好きになるって実は難しいこと」だと自身の恋愛観を吐露していました。
仕事に対し誇りを持っている一方で、疑似恋愛による真心は誠実さからは遠いものであり、相手を傷つけることもある……と考えているからこそ、その裏返しとして本物の恋心に対する羨望があるのだと解釈できます。
レンカノを続けている間、千鶴は常に自分の恋心が本物か偽物か、相手が本物と思ってくれるのか……という苦悩を抱えなければならず、この呪縛から逃れることはできないでしょう。
千鶴のその葛藤こそが、『彼女、お借りします』のラブコメとしての最大の見所であり、彼女のヒロインとしての魅力にも繋がっています。
まとめ
少年誌のラブコメとしてはかなり攻めた設定の『彼女、お借りします』ですが、本作がここまで人気を得たのは千鶴の魅力によるところが大きかったと思われます。
表面上はツンデレっぽく見えますが、彼女の境遇と和也のクズな言動の数々を考えれば、ツンどころか寧ろかなり優しい対応です。
ここまで親身になってくれるレンカノは現実にはまずいないでしょう。
今後アニメ化する可能性もある作品なので、千鶴の声を誰が演じるのか予想するのも楽しいかも?