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【けいおん】『ゆるキャン』や『ぼざろ』も育てた!? きらら系日常アニメのレジェンド『けいおん!』の影響力とは
出典 : Amazon.co.jp
(2023.1.25加筆)
「きらら系アニメ」という言葉をご存じでしょうか?
芳文社が発行する四コママンガ雑誌「まんがタイムきらら」およびその姉妹誌の連載をアニメ化した作品群を指します。
『ご注文はうさぎですか?』や『ゆるキャン△』などがそうですね。
このきらら系アニメで最も多くの人に愛され、最も大きな経済効果を生んだレジェンドアニメ。
それが『けいおん!』です。
本作は単に人気を獲得しただけでなく、のちのきらら作品やその他の様々な分野に影響を与えたと言われています。
今回、その影響について検証したいと思います!
「きららの中の一連載」から「日常アニメのレジェンド」に
『けいおん!』は2007年~2012年の期間、かきふらい先生が「まんがタイムきらら」および「まんがタイムきららキャラット」で連載していた四コママンガです。
2009年4月~6月に“京アニ”こと京都アニメーション制作によるTVアニメが放送され爆発的な人気を獲得。2010年4月~9月には2期が、2011年12月3日には劇場版が公開され、いずれも異例の大ヒットを記録しました。
でも、『けいおん!』のスゴさはDVD・BDの売上や興行収入だけに留まりません。
この偉大なアニメの登場によって、様々なことが大きく様変りしました。
連載当初の『けいおん!』は、必ずしも大ヒット作という訳ではありませんでした。
当時のまんがタイムきららは、アニメ化を果たしていた『ドージンワーク』、きゆづきさとこ先生の『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~』が表紙を飾ることが多く、アニメ化が発表される2008年末まで『けいおん!』が単独で表紙を飾ることはありませんでした。
つまり、当時はきららの看板作ですらなかったんです。
一方、あの当時の京アニは『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』と大ヒットを連発し、飛ぶ鳥を落とす勢い。
このミスマッチに多くの人が「なんで?」と首を傾げたことでしょう。
しかし結果として『けいおん!』はメガヒットを記録し、シンデレラロードを突き進みました。
これによって、「きらら作品は宝の山だ」「日常モノのアニメ化は勝算アリ」という風潮が広まり、きらら作品および日常モノのアニメ化が急増。現在まで続くトレンドとなりました。
近年の大ヒット作『ごちうさ』や『ゆるキャン』その中でも音楽ジャンルの『ぼざろ』も、もしかしたら『けいおん!』の成功がなければアニメ化していなかったかもしれません。
音楽業界をザワつかせた驚異的な経済効果
出典 : Amazon.co.jp
『けいおん!』がもたらした影響は、アニメ業界だけに留まりません。
音楽業界、そして楽器市場においても凄まじい影響を与えました。
本作は軽音部の日常を描いたお話なので、当然楽器を演奏するシーンも登場します。
唯はボーカル兼ギター、秋山澪はボーカル兼ベース、田井中律はドラム、“ムギ”こと琴吹紬はキーボード、そして唯一の下級生として途中から入部した“あずにゃん”こと中野梓はギターを担当。
「放課後ティータイム」という名前のガールズバンドとして、或いはそれぞれ単独名義で、CDのリリースも多数行いました。
これらのCDはいずれもヒットし、シングルとアルバムの両方で週間1位を記録。
ライブイベントも大盛況で、『けいおん!』のヒット以降アニソンやアニメ関連イベントの地位が向上したとも言われています。
そしてそれ以上に大きなインパクトを残したのが、楽器市場への影響です。
『けいおん!』を観てギターやベースを始めたという人が非常に多く出現し、特に比較的安価で購入できる澪の使用するベースや梓のギターが爆発的な売れ行きを記録。
その流れはアンプなどの機材にまで波及し、アニメの枠を越えた社会現象を生み出しました。
担当声優が現在でも大活躍
爆発的ヒットを記録したアニメのスタッフや声優は非常に大きな注目を集めます。
当然『けいおん!』も例外ではなく、本作に関わった多くの声優にとっての出世作となりました。
本作のメインキャラクターである放課後ティータイムの5人を担当したのは、豊崎愛生さん(唯役)、日笠陽子さん(澪役)、佐藤聡美さん(律役)、寿美菜子さん(紬役)、竹達彩奈さん(梓役)。
アニメおよび声優に詳しい人なら、誰もが知っている5人ですよね。
でも『けいおん!』が始まる前、彼女たちの名前を知っていた人は本当に僅かだったのではないでしょうか。
この中で『けいおん!』以前に主役を演じた経験があるのは豊崎さんだけですし、ほぼ無名の声優が集結したといっても過言ではなかったと思います。
その5人が全員、現在でも毎年多くのアニメに出演しているという事実。
それが『けいおん!』の驚異的な影響力を如実に表しています。
部活のリアリティ
ここまでは作品のヒットが生み出した影響を語ってきましたが、ここからは作品の内容・中身がもたらした影響について見ていきます。
『けいおん!』は、唯が桜が丘高校軽音部に入部するところから物語がスタートします。
よって「部活モノ」というカテゴリーにも含まれる作品と言えるでしょう。
ですが、本作において軽音部での活動は必ずしも“真面目”とは言い切れません。
ちゃんと曲を作って演奏もしてるし合宿もやっているので不真面目とまでは言えないですが、かといって毎日ストイックに練習している訳でもありません。
顧問の山中さわ子(さわちゃん)も交えてムギの持ってきたお菓子を幸せそうに頬張りながらゆるふわトークをしているシーンもたくさん見受けられます。
これって、実はリアルな部活の風景だったりしませんか?
もちろん、顧問の厳しい指導に耐えながら真面目に活動する部はたくさんあるでしょう。
また、最小限の人数でロクに活動もせず仲間と一緒に楽しい時間を過ごすだけの部も同様にいっぱいあります。
でも一番多いのはこの中間、つまり真面目にやる時はやるけどダラけた時間も結構ある、という部活ではないでしょうか。
『けいおん!』で描かれたのは、まさに一般的な中高生の部活動そのもの。
それまでアニメの部活モノと言えば「真面目路線」と「エキセントリック路線」に二極化している傾向が強かったのですが、本作以降は『たまゆら』『ステラのまほう』『この美術部には問題がある!』など等身大の部活を描いた作品も増えました。
意外と斬新なキャラクターデザイン
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『けいおん!』の原作マンガとアニメを比較すると、明らかに違う点がありますよね。
そう、眉です!
眉といってもムギの太眉ではありません。あれは原作でもしっかりたくわんです。
ここで取り上げるのは、唯と律の眉です。
原作では、唯&律の眉は澪&梓と同じように細い線でシュッと描かれています。
それに対し、アニメの唯&律は線を数本並べるような眉になっています。
キャラクターデザイン担当の堀口悠紀子さんは、その後『たまこまーけっと』でも同様のデザインを用いています。
恐らく、眉毛を整えていない素朴さの表現ではないかと思われます。
『けいおん!』以前のアニメでは中々見られない表現です。
かなり細かい部分ですが、こういう「小さな斬新さ」が『けいおん!』のスゴいところであり、緻密に丁寧に作り込まれているのがわかりますね。
ちなみに、この眉のデザインも何気に後発の作品に影響を与えています。
『ゆるキャン△』のなでしこ&しまりんも、この素朴眉ですよね。
アニメ×ガールズバンドの確立
ここまで敢えて触れませんでしたが、『けいおん!』がヒットして以降はガールズバンドが登場するアニメがかなり増えました。
『Angel Beats!』や『BanG Dream!』『ぼっちざろっく』などがその顕著な例ですね。
ガールズバンドをアニメに登場させる利点は沢山あります。
まず単純に絵として華々しく、アニメ映えしますよね。
可愛い女の子がゴツゴツした楽器を持って歌う姿は、ギャップも相まってより魅力的に見えます。
また、嫌らしい言い方になってしまいますが、声優ユニットをそのままガールズバンドとして売り出すことができますし、ライブイベントを行う上でも企画がスムーズに立ち上げられます。
要するに「商業ベースに乗せやすい」ということです。
『けいおん!』という成功例が生まれた事で、アニメ×ガールズバンドの組み合わせは浸透し、アニソンの可能性もより広がりました。
これもまた大きな功績であり、多大な影響と言えるでしょう。
●まとめ
一つの作品がここまで多岐にわたって影響を与えるケースは極めて稀です。
それだけ『けいおん!』がたくさんの人に愛された証でもあります。
これからも日常アニメ、きらら系アニメ、部活アニメ、音楽アニメが流行るたび、またアニソンがヒットするたびに『けいおん!』を思い出す人はたくさんいるのでしょう。
結局のところ、それが『けいおん!』の一番スゴいところかもしれませんね。