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名探偵コナンはなぜ150億超のメガヒット映画になれたのか? ターニングポイントを徹底検証
(画像引用 : Amazon)
今や国民的アニメとなって久しい『名探偵コナン』。特に毎年公開される劇場版は多くの人たちに注目されています。
その劇場版コナンが何故ここまで爆発的なヒット作になったのか、その理由と分岐点となった作品を徹底検証します!
劇場版1作目は期待外れだった
(画像引用 : Amazon)
1994年に週刊少年サンデーで連載を開始し、1996年よりテレビアニメ化された『名探偵コナン』は、30年以上もの歴史を経て今や知らない日本人はいないと言っても過言ではない存在となりました。
日本の国民的アニメといえば『サザエさん』『ドラえもん』『アンパンマン』などが該当するかと思われますが、コナンも既にこれらの作品に並び立つ存在になったと言えるでしょう。
今や日本で一番幅広い世代に親しまれているアニメかもしれません。
そんなコナンの初期を取り巻く環境について、少し振り返ってみます。
1990年代のアニメは、ゴールデンで放送される作品が大半を占めており、コナンも月曜19:30~20:00での放送でした。
初回の視聴率は8.5%と苦戦しましたが、2話目で二桁に乗せると徐々に数字を上げていき、第62話「幽霊船殺人事件(後編)」で初の20%超えとなる20.8%を記録。
その後も高視聴率を持続し続け、当時既に国民的アニメの地位を確立していたサザエさんには及ばなかったもののドラえもんやクレよんしんちゃん、ちびまる子ちゃんと2位の座を競うほどの数字を維持し、人気アニメとしてお茶の間に定着していきました。
一方、当時のアニメは映画という分野においては今ほどの存在感はなく、興行(配給)収入ランキングでは年間上位に名を連ねるものの「子供の観る映画」という印象が根強くありました。
その風向きを変えたのがジブリで、1997年に公開された『もののけ姫』が当時の歴代興行収入記録を塗り替え社会現象を巻き起こしました。
そして同じく1997年の4月19日に発表されたのが、コナンの劇場版一作目となる『時計じかけの摩天楼』でした。
内容はコナン達の住む米花町で起こった爆破事件と、新一と蘭の恋愛模様を並行して描いたエンタメ要素の強いものになっており、ミステリー要素は弱め。
テレビアニメ以上にキッズ層を意識した作りになっており、それはやはり当時アニメ映画がキッズ向けだった事が強く反映されたからだと思われます。
そういう意味では、子供には難解なもののけ姫とは対照的な映画だったと言えるでしょう。
その結果、本作の興行収入は11億円に留まりました。
同じくキッズ向けの映画として作られたクレしんの劇場版一作目が22億円だった事を考えると、その半分というのは寂しい数字と言わざるを得ません。
この状況と比較的似ているのが、2023年の年末に公開された『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』です。
当時のスパイファミリーは飛ぶ鳥を落とす勢いで、特にアーニャが子供の間で驚異的な人気を博していました。
『劇場版 呪術廻戦 0』『ONE PIECE FILM RED』『THE FIRST SLAM DUNK』と興収100億を超えるジャンプアニメが頻出していたこともあり、本作にもその流れに乗って爆発的なヒットになると期待されていました。
しかし実際には興収63.2億円という結果に終わってしまいます。
もちろん大きな数字ではありますが、期待されていた数字はこの倍くらいだった筈。
何故そこに遠く及ばなかったかといえば、この映画もキッズ向けに特化した内容だったのが原因と思われます。
どちらの作品にも共通しているのは、作品そのもののクオリティは決して低くはなかったものの、キッズ層を喜ばせるためエンタメに偏り過ぎた結果、色々と詰め込み過ぎて展開が取っ散らかってしまった点。
それでいて子供に理解して貰えるようシンプルなお話にしているため、そこに齟齬が生じてしまい、子供も大人も「そこそこ良かった」止まりの評価に落ち着いてしまい、リピーターがあまり生まれなかったのだと思われます。
ただ、コナンが凄かったのはここからです。
劇場版では期待されたほどの観客を動員できなかったものの、テレビシリーズは依然として好調を維持。
その勢いを買って、翌年4月に2作目となる映画『14番目の標的(ターゲット)』が公開されました。
本作は『時計じかけの摩天楼』とは対照的に、原作やテレビシリーズではあまり活躍の場がない毛利小五郎にスポットを当てた作品。
サスペンス要素が濃く、キッズ向けだった前作とは打って変わってミステリー作品としてのコナンを前面に出しました。
内容で必ずしも前作を超えたとは言えませんが、明らかに大人も引き込もうという意識を持って作られたこの2作目は前作を大きく超える興収18.5億円を記録。
全く違う切り口で結果を出した事で、劇場版コナンは毎春公開されるアニメ映画の定番となっていきました。
現在、この『14番目の標的』は歴代作品の中で人気上位というポジションにいる訳ではありません。
しかし、劇場版コナンの道筋を作ったという意味では、ターニングポイントの一つだったと言えるでしょう。
30億の壁を破った『ベイカー街の亡霊』
(画像引用 : Amazon)
1999年に公開された3作目『世紀末の魔術師』も、興収面において大きな飛躍を見せます。
灰原哀、服部平次&遠山和葉、高木刑事、怪盗キッドなどお馴染みの面々が初登場を果たした映画とあって、オールスターの様相を呈した本作は26億円を記録。
キャラクターデザインも変更され、今のコナンの作画にかなり近付きました。
しかし4作目『瞳の中の暗殺者』では25億円と、初めて前年の作品を下回ってしまう結果になってしまいます。
こうなると原因は脚本かと思われがちですが、この『瞳の中の暗殺者』は2023年に映画.comが実施した「劇場版名探偵コナン勝手にトーナメント」企画で優勝を飾るなど、歴代の劇場版の中でも屈指の人気作。
にもかかわらず興収を落としてしまったのは、オールスター感が強かった前作と比べると登場人物の時点で華やかさに欠けると当時感じた人が少なからずいたからだと思われます。
コナンのアニメがスタートしてから4年。
登場人物も増え、「子供の姿のコナンが難事件を鮮やかに解決する」という本作の基本フォーマットにも新鮮さがなくなった頃合いとあって、コナンに対し大衆が求めるものが徐々に変わって来ていたのでしょう。
実際、この次の5作目『天国へのカウントダウン』では初めて黒ずくめの組織を劇場版に登場させ、これまでの劇場版のお決まりだった新一と蘭の恋愛要素をかなり抑え、黒ずくめの組織と灰原を巡る物語を描き29億円の興収を記録しました。
そして2001年。
劇場版コナンおける新たなターニングポイントとなる作品が誕生します。
第6作目『ベイカー街(ストリート)の亡霊』の登場です。
本作の脚本を担当したのは、これまで劇場版を毎回手掛けてきた古内一成さんではなく野沢尚さん。
野沢さんといえば『青い鳥』『眠れる森』『氷の世界』など数多くの人気ドラマを手掛けた脚本家として有名ですが、ミステリー・サスペンス作家としても確かな実績を残していて、小説『破線のマリス』では第43回江戸川乱歩賞を受賞しています。
そんな大物脚本家が自ら名乗りをあげ手掛けた本作は、新型仮想体感ゲーム機「コクーン」を用いたバーチャルなゲーム世界と現実世界を交互に描いた物語が展開されます。
新一と優作の親子関係について過去、或いはこれ以降の作品では描かれない踏み込み方をしているところにも普段とは違う分野の脚本家を招いた影響が出ており、必ずしも全てのファンを満足させた作品と言う事はできないかもしれませんが、逆に今までにない『コナン』が描かれた事への称賛の声も多数あがりました。
野沢さんの起用は間違いなく成功したと言えるでしょう。
それは興収面でも顕著に表れ、中々超えられずにいた30億の壁をついに突破。
興収34億円を記録し、2002年日本興行収入年間トップ10入りを果たしました。
『ベイカー街の亡霊』は現在でも非常にファンからの支持が厚く、劇場版コナンの人気投票では常に上位TOP3に入っています。
この名作を生み出した事で劇場版コナンはマンネリを打破し、大人も楽しめるミステリーアニメとして確固たる地位を築きました。
そして同時に、高すぎる壁としてその後の作品の前に立ち塞がっていく事になります。
ルパンとのコラボで停滞感から脱却
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興収30億円という大きなハードルを越えた劇場版コナンですが、ここから長きにわたって横ばいの時代が続きます。
『ベイカー街の亡霊』の翌年に公開された7作目『迷宮の十字路(クロスロード)』も非常に評価の高い作品ですが、興収は32億円とややダウン。
以降、2013年の第17作『絶海の探偵(プライベート・アイ)』までの10年間、ずっと興収30億前後の時代が続きます。
とはいえ、制作サイドがこの間ずっと指を咥えて見ていた訳ではありません。
第8作『銀翼の奇術師(マジシャン)』から、ずっとコナン制作を指揮してきたこだま兼嗣監督が替わり、脚本も古内さんが手掛ける作品もあれば『太陽にほえろ!』『探偵物語』『あぶない刑事』『ルパン三世』などを手掛けた大ベテランの柏原寛司さんを招いたり、長期にわたってビーイングのアーティストが担ってきた主題歌を他の会社のミュージシャンに任せたりと、様々な角度から異なるアプローチを試していました。
内容面においても、10作目『探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』は『世紀末の魔術師』を超えるオールスター感を出すべく主要キャラの大半を投入。
マンネリにならないよう前作とは違う切り口の脚本を用意し、サスペンス重視、ミステリー重視、アクション重視……と様々なタイプの作品に仕上げていましたが、シリーズも長期化したことでファン層の固定化は否めず、大きな変動は見られませんでした。
もっとも、これだけ長く続いていながら30億前後をキープしていたのは驚異的です。
2000年代に入り、アニメの在り方は大きく変わっていき、ゴールデンタイムで放送される作品は激減。
コナンのテレビシリーズも視聴率は90年代ほどの数字は取れなくなり、子供の数も年々減少傾向にある中で大健闘とも言える横ばいだったと言えるでしょう。
通常なら、そんな言葉を餞に動員も減少していくところですが……コナンはここからブレイクスルーを果たします。
そのきっかけとなったのはルパン三世とのコラボでした。
ルパン三世はコナンより遥か昔、1967年に連載が始まった作品。
日本テレビ系列で1971年よりテレビアニメ化されると人気を博し、1978年からは劇場版も公開されるようになりました。
特に第2作『ルパン三世 カリオストロの城』は宮崎駿監督の出世作として現在も絶大な人気を誇っており、多くのアニメファンに愛されています。
何より「怪盗」「大泥棒」という、探偵であるコナンとは相性抜群のルパン一味とのコラボは大きな注目を集め、2009年放送のテレビスペシャルは15.2%の高視聴率を記録。
その結果を受け、2013年には劇場版 『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』も制作されました。
このコラボ映画の興収は42.6億円となり、ずっと30億前後で横ばいだったコナンが偉大な先輩の力を借りてついに40億の壁を乗り越えたのです。
そして2014年に公開された18作目の劇場版『異次元の狙撃手(スナイパー)』でも40億を突破し、コナンは新たなステージへと上っていきました。
新星・安室透の登場でファン層が拡大
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連載開始から20年以上が経過し、既に国民的アニメの地位を確立させていたコナンですが、2016年に再びターニングポイントを迎えます。
この年に公開が発表された『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』は劇場版20作目に当たり、10作目の『探偵たちの鎮魂歌』同様にオールスター的な内容になる事が期待されていました。
そしてファンの期待通り、ポスタービジュアルには原作人気キャラが多数登場する豪華布陣となり、その中には劇場版初登場となる安室透の姿もありました。
安室透は「警察庁警備局警備企画課に所属する警察官」「喫茶店ポアロでアルバイトする私立探偵」「黒ずくめの組織内で活動するバーボン」という三つの顔を持つイケメンの青年。
原作で本格的に登場したのは2011年、テレビアニメでも2012年には登場していたので、ファンにとっては待望の映画出演となりました。
その安室の他にもFBIの赤井秀一が登場した本作は、アクション要素が強くシリアスでハートフルな大人向けの内容だった事もあって、これまでコナンに興味を持っていなかった層を取り込む事に成功します。
特に安室と赤井の絡みは、子供を連れて映画館に足を運んでいた母親世代に強く刺さったようで、そこから一気に女性ファンが急増。
その女性層に絶大な支持を得た安室透は瞬く間にコナンを代表する人気キャラクターとなり、各雑誌で特集を組まれ、ananなどのファッション誌や週刊誌の表紙を飾り、一躍時の人となりました。
この安室人気によって作品人気にも火が点き、『純黒の悪夢』の興収は前年の『業火の向日葵』を20億近く上回る63.3億円を記録。
自己最高を大幅に塗り替え、数年前までの停滞感が嘘のように多数の新規ファンを獲得しました。
一人の新キャラクターが作品人気を押し上げたり、再燃させたりするケースはあります。
しかし連載開始から20年以上経った上でそのような事が起きるのは極めて稀。
とはいえこれは決して奇跡などではなく、常にマンネリにならないように試行錯誤し、新たな風を吹き込む努力を怠らなかった青山剛昌先生およびアニメ制作スタッフの執念が実った結果と言えるでしょう。
実際、コナンという作品は決してイケメンキャラを前面に押し出した作品ではありません。
その中に安室のような如何にも女性に好まれそうなキャラを投入するのは、どちらかといえば世界観を壊すリスクの方が強いとさえ言えます。
それでも安室がコナンのキャラとして受け入れられたのは、ミステリー作品のキャラとして魅力的な設定に加え、クールな外見とは裏腹に少年漫画のキャラらしい熱さを兼ね備えていたからだと思われます。
また、作中における立ち位置も絶妙です。
彼がコナンを凌駕するようなポジションで描かれれば、従来のファンからはブーイングを浴びせられていたでしょう。
しかし実際には「目立つ脇役」に留め、本格的な活躍はスピンオフの『ゼロの日常』や警察学校編で描くという線引きをしたのが成功の要因だったように推察されます。
一気に100億間近まで飛躍! 立役者は?
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『純黒の悪夢』で50億の壁どころか60億を突破したコナンの勢いは翌年も持続し、21作目『から紅の恋歌(ラブレター)』も68.9億円と大ヒットを記録します。
これは2017年における興行成績では年間4位に相当し、邦画では堂々の1位。
毎年公開されている映画としては『ポケットモンスター』やドラえもんの全盛期をも上回る歴代最高の水準に達し、コナンは名実共に日本を代表するアニメとなりました。
そして、いよいよ70億の壁に挑むかと思われた2018年公開の『名探偵コナン ゼロの執行人』。
しかしこの映画は、そんなファンの期待をも遥かに超え91.8億円という驚きの数字を叩き出します。
その立役者はやはり安室でした。
『ゼロの執行人』は純黒の悪夢以来となる安室のメインキャラクターとしての登場を大々的に掲げ、各ニュースサイトもそれを大きく取り上げました。
2年前とは違い、安室が既に人気キャラとして周知されていた事からファンの食いつきも凄まじく、情報公開当日はコナンと安室の話題で一色になるほど。
実際に公開されると映画館はまるでアイドルのコンサート会場のような雰囲気になり、安室の声が聞こえるだけでファンが歓喜する異常事態となったのです。
内容も、安室がコナンの敵になるかのような構図で展開するためキャラ人気にあやかったものになるかと思いきや、捻りに捻った脚本が用意されており、従来からのコナンファンの評価も上々。
昔からのファンと安室きっかけでファンになった人の両方を満足させる見事な出来栄えだった事が、これほどの動員を記録した最大の要因と言えるでしょう。
コナンシリーズはキャラ人気も非常に高く、コナン(新一)や安室だけでなく怪盗キッド(元々は別作品のキャラ)、赤井、平次といった男陣は総じて多くのファンを抱え、誰でも主役を張れるレベルにあります。
女性キャラも灰原を筆頭に蘭、園子、和葉といったレギュラー陣に加え、ベルモットや世良真純など魅力的なキャラが多数いてヒロインには困りません。
だからこそ、劇場版では中心となるキャラを毎回変えられるし、変えても求心力を落とす事なく続けられるのです。
コナン人気を大きく押し上げたのは安室の功績ですが、その安室を酷使する必要がないくらい分厚い陣容だからこそ、安室人気が自然に定着したとも言えます。
総合力で乗り越えた100億、150億の壁
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『ゼロの執行人』で90億円を突破し、ついに100億が見えた劇場版コナンですが、ここから少し足踏みします。
最大の誤算は2020年に世界中を襲ったコロナ禍です。
これによって日本のあらゆる映画が制作の中断、公開の中止を余儀なくされ、コナンであっても例外ではなく2020年公開予定だった『緋色の弾丸』は2021年に延期される事になりました。
その後、同年10月公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が爆発的ヒットを記録しましたが状況は安定せず、『緋色の弾丸』は中々正式な公開日が決まらない中プロモーションも制限され、2021年4月にようやく公開されたものの興収は76.5億円と前年の『紺青の拳』から大幅ダウン。
大台を目前に予想外の理由で後退せざるを得ませんでした。
しかし翌年公開の『ハロウィンの花嫁』で97.8億円と持ち直し、世の中もようやくコロナ禍の呪縛から解放され、コナンにとって歴史的な一年となった2023年を迎えます。
26作目となった『黒鉄の魚影(サブマリン)』は、早い段階で灰原がメインになる事が発表され、非常に前評判の高い状態で公開を迎えます。
近年は安室を筆頭に男性キャラの台頭が目立ち女性ファンの増加が顕著でしたが、灰原こそがヒロインだと訴える古参の男性ファンもかなり多く、公開が始まると彼らが一気にヒートアップ。
加えて灰原以外のメインキャラにも見せ場が多く、作画、脚本、演出すべてが過去最高と多くのファンが絶賛する出来だった事から、かつてない客足となりあっという間に興収100億円を突破しました。
そして翌年の27作目『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』では150億円&動員1000万人を突破。
毎年のように社会現象クラスのヒットを記録する唯一無二のコンテンツとなりました。
名探偵コナンはなぜ150億超のメガヒット映画になれたのか?
この問いに対し答えを提示するために長々と解説をしてきたのは、短い文章で説明しても伝わらないという判断からです。
『100万ドルの五稜星』も非常に高い評価を得ており、『黒鉄の魚影』に勝るとも劣らない人気作となっています。
近年の劇場版コナンは櫻井武晴さんと大倉崇裕さんが一年ごとに脚本を担当し、監督は毎年替わっており、この2作品も不動のスタッフで制作されている訳ではありません。
しかし青山先生を筆頭に、コナン制作チームには「マンネリを許さない」という確固たる理念があり、上手くいっている時も停滞している時もそれを続けて来た結果、どの制作陣が作っても『コナン』という作品を最高の形で届けられる陣容が出来上がったのです。
様々な試行錯誤を重ね、その中で沢山の魅力的なキャラを創出し、彼らがその魅力を存分に発揮できる舞台を整えた上で、スリリングな謎と迫力あるアクションで最高のエンタメを提供する。
この積み重ねがあるからこそ、ファン離れが起きず新規ファンが増え続け、現在の数字に至ったのです。
まさに「総合力の勝利」と言えるでしょう。
劇場版名探偵コナン 興行収入まとめ(1997~2024)
(画像引用 : Amazon)
*11.0億円 時計じかけの摩天楼(1997)
*18.5億円 14番目の標的(1998)
*26.0億円 世紀末の魔術師(1999)
*25.0億円 瞳の中の暗殺者(2000)
*29.0億円 天国へのカウントダウン(2001)
*34.0億円 ベイカー街の亡霊(2002)
*32.0億円 迷宮の十字路(2003)
*28.0億円 銀翼の奇術師(2004)
*21.5億円 水平線上の陰謀(2005)
*30.3億円 探偵たちの鎮魂歌(2006)
*25.3億円 紺碧の棺(2007)
*24.2億円 戦慄の楽譜(2008)
*35.0億円 漆黒の追跡者(2009)
*32.0億円 天空の難破船(2010)
*31.5億円 沈黙の15分(2011)
*32.9億円 11人目のストライカー(2012)
*36.3億円 絶海の探偵(2013)
*41.1億円 異次元の狙撃手(2014)
*44.8億円 業火の向日葵(2015)
*63.3億円 純黒の悪夢(2016)
*68.9億円 から紅の恋歌(2017)
*91.8億円 ゼロの執行人(2018)
*93.7億円 紺青の拳(2019)
*76.5億円 緋色の弾丸(2021)
*97.8億円 ハロウィンの花嫁(2022)
138.8億円 黒鉄の魚影(2023)
158.0億円 100万ドルの五稜星(2024)
まとめ
毎年コナンを観に映画館に足を運んでいる人が大勢いるのは、飽きさせない工夫を常に怠らないからで、その積み重ねが150億という途方もない数字を記録した最大の理由でしょう。
勿論、その背景には他にも「アニメに対する一般人の意識の変化」や「広告戦略の妙」など数多くあります。
でも、これらはあくまで副次的な理由で、最大の要因はやはり妥協なき作品作りにあったのではないでしょうか。
初期の脚本を手掛けた古内一成さんをはじめ、既に亡くなったスタッフの方もいます。
彼らの作り出してきたもの、作品に込めていた魂を継承しブレずにきた事で、ファンと作品との間には確固たる信頼関係が築かれているように感じます。
今後もコナンは国民的アニメの座を降りる事はないでしょう。