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26

Dec

【葬送のフリーレン】勇者ヒンメル徹底解説。彼はどうして慕われるのか? その胸の内に秘めた「切なさ」とは


(画像引用 : Amazon)

原作・アニメ共に大ヒットを記録し、2023年下半期に最も大きな注目を集めた『葬送のフリーレン』より、勇者ヒンメルを大特集!
彼が何故ここまで多くの人々に愛されているのかを検証しつつ、その豊潤な人となりについて紹介していきます!

ヒンメル キャラクター概要


(画像引用 : アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト https://frieren-anime.jp/

『葬送のフリーレン』に登場する男性キャラクター。
種族は人間。
魔王を討伐し、その名を後世にまで残した伝説の勇者です。

青髪の短髪で、左の目元の泣きぼくろが特徴。
爽やかな顔立ちの美形で、本人もその事をしっかり自覚しています。
勇者一行として旅をしていた頃は中肉中背でしたが、魔王討伐より50年が経過した頃には身長は縮み、頭は禿げ、白い髭を蓄えた別人のような容姿になっていました。

故郷の村で魔物を討伐した際、謝礼として「勇者の剣」のレプリカを受け取り、それを見た幼なじみの僧侶ハイターに「偽物の剣じゃ偽物の勇者にしかなれない」とからかわれた事で本物の勇者になる事を決意。
16歳の時にそのハイターと魔王討伐の旅に出て、その後ドワーフの戦士アイゼン、エルフの魔法使いフリーレンをパーティに加え、10年の歳月を掛けて見事魔王を討伐しました。

その後は凱旋し仲間たちと別れ、魔王討伐を果たした伝説の勇者として50年以上生き続け、フリーレンら3人と再会。
別れる間際に交わした50年に一度の流星群「半世紀流星(エーラりゅうせい)」を一緒に見に行くという約束を果たした直後、老衰で他界しました。

自分の銅像を造らせ事細かに注文を出し、王様にタメ口を叩き不敬罪で処刑されかけるなど、性格はお調子者かつナルシスト
しかし子供をはじめとした弱い者に対しては如何なる理由があろうと手を差し伸べ、助けを乞う者には必ず助力する人格者です。

魔王を討ち取る前から勇者を名乗っていたものの、戦闘スタイルはほぼ剣士で魔法は使っていなかったようです。
勇者らしく成長度が高かったようで、旅の前は「村の中では強い剣士」くらいでしたが、旅の途中で多くの強力な魔族を一瞬で仕留めるなど凄まじいスピードと攻撃力を誇っていた事が示唆されています。
故郷の村で貰ったレプリカの勇者の剣を最後まで使い続けました。

担当声優は岡本信彦(おかもと のぶひこ)さん。

ラクーンドッグで代表取締役を務める男性声優。
2006年に声優デビュー、2007年放送のテレビアニメ『sola』の森宮依人役で初主演を経験し、2008年より『とある魔術の禁書目録』一方通行〈アクセラレータ〉を熱演しブレイクを果たしました。
以降、数多くの作品で主演やメインキャラを務める一方、所属していたプロ・フィットが事業撤退を発表した事を受け2022年より現会社を設立、声優業も引き続き行っています。

その他の代表作はヒンメル、爆豪勝己(ヒロアカ)、西谷夕(ハイキュー!!)、不死川玄弥(鬼滅の刃)、赤羽業(暗殺教室)、フロイド・リーチ(ツイステ)など。

ヒンメルの心の内は?


(画像引用 : アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト https://frieren-anime.jp/

2022年、『葬送のフリーレン』は連載3年目にして100話を突破し、満を持してアニメ化も発表されました。
それを記念して登場キャラ総勢100名を対象とした公式人気投票を実施。
その結果1位となったのは、主人公のフリーレンやメインキャラのフェルン、シュタルクではなく、決して出番が多い訳ではない勇者ヒンメルでした。

しかも2位のフリーレンに圧倒的な差を付けての大勝。
何故、ヒンメルは読者にここまで愛されているのでしょうか。

その理由はあまりにも単純明快。
ヒンメルだからです。
アニメも放送されている今、沢山の人に納得して貰える理由ではないでしょうか。

とはいえ、それでは余りにもシンプル過ぎて説明になっていませんので、蛇足を承知の上で検証していきたいと思います。

YOASOBIが担当したOPテーマのタイトルにもなったように、本作において「勇者」には特別な意味があります。
勇者というと、ドラゴンクエストシリーズによって描かれた「魔王を倒しに行く者たちの中心」「選ばれし者」のイメージが強く、本作でもその意味合いが色濃く反映されています。
また、そこから派生して様々な作品で「勇者」が描かれるようになり、特別な称号として用いられている作品もあれば、作中の民衆に神聖視されている作品もあります。

では、果たしてヒンメルはそういったイメージ通りの勇者なのでしょうか?
答えはイエスでありノーです。
ヒンメルは既存のイメージ通りの勇者であり、同時にイメージを超越した勇者でもあります。

ヒンメルは勇者になる為に人助けをしていた訳ではありません。
人助けの理由として「勇者だから」と答えた事はありますが、それはカッコつけのようなもので、実際には「自分の存在を覚えて貰いたい」という願いを叶える為でした。

大勢の人の記憶の中に自分を残したい。
だから魔王討伐とは関係のない人助けでも積極的に行う。
その動機には、心の何処かに「何かを成さなければ覚えて貰えない」という自信のなさを汲み取る事が出来ます。

ヒンメルは「魔王を倒しに行く者」ではありますが、「選ばれし者」ではありませんでした。
彼は伝説の勇者の血筋でもなく、勇者の剣にも選ばれませんでした。
旅の間は「勇者候補」若しくは「勇者になろうろしている剣士」が本来すべき表現だったのでしょう。

彼は表面上、自分の容姿に自信のあるナルシストとして振舞っています。
けれど本質的な部分は寧ろ逆で、自分に対する自信のなさを道化じみた自己愛的な表現で覆い隠していると推察されます。
本当のヒンメルは常に自分を疑い、「自分は勇者に相応しい人間なのか」と葛藤していたのではないかと思わずにはいられません。

それでも彼は、自分を卑下する事は一切しませんでした。
恐らく内々に抱えていたであろう葛藤や苦悩は決して表に出さず、常に明るく気高く振舞っていました。
これは言うまでもなく「勇者」らしい振舞いを見せる為であり、同時に仲間たちに心配をかけない為でしょう。

作中のヒンメルが、そういった裏側を見せる事はありません。
当然です。
本作におけるヒンメルの描写は全て、彼が「勇者ヒンメル」であり続けた姿をずっと近くで見て来たフリーレンの記憶によって形成されているのですから。

しかし読者や視聴者には、そのヒンメルの弱さ、自信のなさといった心の内が伝わっている筈。
何故なら、結局彼は最後までフリーレンに自分の想いを伝えられなかったからです。

フリーレンへの想いは胸に秘め


(画像引用 : アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト https://frieren-anime.jp/

ヒンメルのフリーレンへの好意は、作中で描写される過去回想において幾度となく示唆されています。
その最たるエピソードが第30話「鏡蓮華」での回想シーンで、ヒンメルは恋人に贈る者とされる鏡蓮華の意匠が入ったリングをフリーレンに贈り、跪いて左手の薬指にはめていました。

フリーレンは鏡蓮華の意味を知らず、ヒンメルも知らずに贈ったんだろうとタカを括っていましたが、リングを眺める彼の顔を見る限り、間違いなく知っていたと思われます。

しかしそこまでしても、ヒンメルがフリーレンへ自分の気持ちを伝える事はありませんでした。
その理由はヒンメル本人にしかわからない事ですが、一番の理由は「優しさ」でしょう。

長寿のエルフに人間が好意を伝えても、すぐにいなくなってしまうという現実があり、フリーレンも諦観の念を幾度となく口にしていました。

もし自分が好意を伝えれば、フリーレンはそれをどう思うのか。
より諦観の念が強まってしまうだけなのではないのか。
彼女に余計な足枷を付けてしまうのではないか。

恐らくヒンメルはそのような事を考えていたのでしょう。
それは彼の優しさであり、同時にフリーレンを幸せに出来ないという自信のなさでもあります。
何より、フリーレンの事を誰よりも見て来た彼は、きっとフラれるだろうと思っていたのかもしれません。

ヒンメルが読者・視聴者に愛されたのは、勇者だからではありません。
勇者である事が当然という涼しい顔をしながら、心の奥底ではずっと「自分の存在を忘れないで欲しい」とフリーレンに願っていた。
その強さとカッコ良さ、そして切なさが、多くの人々を惹き付けたに違いありません。

勇者ヒンメルの名言・迷言集


(画像引用 : Amazon)

あまりにも多くの金言を残し、その一言一言がフリーレンに多大な影響を与えた勇者ヒンメル。
そんな彼の名言・迷言をまとめました!
なお、一級魔法使い選抜試験編(60話)までの範囲からの選出です。

歳をとった僕もなかなかイケメンだろう?

魔王討伐から50年後、フリーレンと50年振りに再会を果たした際に発した一言。
年齢を重ね若かった頃の面影は目元くらいになっていても尚、彼はフリーレンに対して「勇者ヒンメル」であり続けました。

フリーレン。いつか君に見せてあげたい。

花畑を出す魔法をフリーレンが使った際、そのお返しに故郷の花「蒼月草」を彼女に見せてやりたいと願い、口にした言葉。
勿論それは「いつかフリーレンを故郷に連れて行きたい」という意味でもあるのでしょう。

何やっとんじゃクソガキィィッ!!

立ち寄った村の少年がフリーレンのスカートを捲った事にブチ切れた一幕。
子供には優しい彼ですが、やはりフリーレンへのセクハラは許容できなかったのと羨まし過ぎたようで、直後に「ぶっ殺してやる」とまで叫んでいました。

フリーレン。撃て。

対象者の記憶の中にいる死者の幻影を可視化し人を誘い込む「幻影鬼」が生み出したヒンメルの幻影がフリーレンに言い放った一言。
なので厳密には「フリーレンの記憶の中のヒンメル」ですが、間違いなく彼自身も同じ事を言った筈です。

君が未来で一人ぼっちにならないようにするためかな。

各所で銅像を造らせている理由をフリーレンに聞かれた際の返答。
当時は全くピンと来ていなかったフリーレンですが、実際にヒンメル達がいなくなった後の世界において、その言葉の正しさと真心を知る事となります。

いいじゃないか偽物の勇者で。僕は魔王を倒して世界の平和を取り戻す。そうすれば偽物だろうが本物だろうが関係ない。

剣の里に刺さっている本物の「勇者の剣」を抜こうとしたが抜けず、当時の里長に勇者である事を否定された上での堂々たる宣言。
その後、勇者の剣に頼らず見事に魔王を倒し有言実行、彼は真の勇者となりました。

心の支えが必要なのは子供だけじゃない。

フリーレンが病で倒れうなされていた際、彼女の手を握って告げた一言。
フリーレンだからそうしたのではなく、弱っている者に対して寄り添う精神が標準装備されているからこその言葉でしょう。

フリーレン。確かに僕達はその首飾りのことは知らない。でも、僕達は君が凄い魔法使いであることを知っている。それでいいじゃないか。

遥か昔、優秀な魔法使いに授けられたと思われる「聖杖の証」をフリーレンから見せられたものの、それが何なのか知らず落胆させてしまった事に対しての言葉。
短命な人間の記憶はすぐに消えてしまいますが、同じように思ってくれる人間はまた現れるのです。

生きているということは誰かに知ってもらって覚えていてもらうことだ。

フリーレンに人助けをする理由を問われ、あらためて自分自身を見つめ直し、誰かに自分を少しでも覚えておいて欲しいからだと結論付けた際の台詞。
彼にとっての人助けは生きる実感を得る為のものでもあるのでしょう。

ほんの少しでいい。誰かの人生を変えてあげればいい。きっとそれだけで十分なんだ。

前述の台詞の直後、「覚えていてもらうためにはどうすればいいんだろう?」とフリーレンに問われての回答。
ほんの少し、しかしそれが途方もなく困難である事を、恐らくヒンメルは知っていた筈です。

楽しんで人助けができるのならそれが一番じゃないか。

迷宮(ダンジョン)攻略は全ての階層を踏破すべきとの持論に対して呆れるフリーレンへの釈明。
「楽しむ」というのも、ヒンメルが人生において最も重要視していた事の一つで、それはもしかしたら幼少期に楽しい経験をさせて貰った魔法使いの影響かもしれません。

綺麗だと思ったんだ。生まれて初めて魔法が綺麗だと思った。

初めてフリーレンと出会った際、不安そうにしていた自分にフリーレンが魔法で出した花畑を見て感じた率直な感想。
彼にとってはこの瞬間が初恋だったのでしょうか。

きっとこんなことをしたって世界は変わらない。でも僕は目の前で困っている人を見捨てるつもりはないよ。

魔王討伐の旅の最中、その時間を割いてまで小さな人助けをする理由をアイゼンに問われての返答。
ヒンメルにしてみれば、魔王討伐も「小さな人助け」の延長線上にあるのかもしれません。

勇者ヒンメルの死から○○年後。

ヒンメルの台詞ではなく、各エピソードの頭に必ず付くナレーション。
彼が本作における中心人物であり、主人公フリーレンの新たな旅の主題である証です。

まとめ

この名言集も、数ある中から一部抜粋したに過ぎません。
作中では既に故人なので出番はかなり少ないのですが、その僅かな出番で必ず名言を残していくのが勇者ヒンメル。
彼が冒険中に見せた生き様の一つ一つがフリーレンによって次世代へと伝えられていく度に、その偉大さを噛みしめる事ができますね。

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