30
Mar
【ラブライブ!スーパースター!!】失敗と炎上の原因を徹底検証!2期は何が悪かったのか?
(画像引用 : Amazon)
2022年夏に放送され、多くのファンから不興を買ってしまった『ラブライブ!スーパースター!!』第2期を徹底検証。
一体何が悪かったのか、その失敗の理由や炎上した原因を客観的な視点から、できるだけマイルドに分析していきます!
「シーンありき」でストーリーが崩壊
(画像引用 : Amazon)
『ラブライブ!スーパースター!!』2期が放送されて以降、本作に関してはネガティブな意見が非常に多くなっています。
その反響は大きく、ピクシブ百科事典に「ラブライブ!スーパースター!!アニメストーリー炎上問題」という記事が作られてしまうほど。
ある程度批判に晒されるのは人気作の宿命ですが、本作に関してばそのレベルでは収まらないくらいのブーイングが起こっています。
そこで、2期が失敗だったと言われている理由について検証していきます。
最も多く非難の声が寄せられているのは、ストーリーについてです。
ただ、ストーリーへの不満に関しては過去作でも幾度となく指摘されてきました。
ラブライブシリーズはアニメと音楽を中心とした総合コンテンツですが、キャラクターと担当声優を前面に出したキャラクターコンテンツでもあります。
そういった作品のアニメはどうしても「キャラをどう見せるか」を重要視しなければならず、特にアイドルコンテンツの場合、特定のキャラが目立つとそのキャラに対して他ファンからのヘイトが溜まってしまう可能性があり、自然と制約が多くなります。
その中で作られるアニメは、どうしてもPVのツギハギのような内容になってしまいがちですが……ラブライブは特にその傾向が顕著で、最初に「○○が○○する場面を描く」「○○と○○が○○するシーンを作る」などといった約束事が幾つもあって、後でそのシーンを繋げていく為のストーリーを差し込んでいったような脚本という印象を受けます。
本シリーズで指摘される事が多い「唐突な展開」「説明不足」「整合性のなさ」「ワンパターン」といった問題点は全て、このストーリーの作り方による弊害ではないかと推察されます。
そんなラブライブシリーズの中でも、スパスタは特にこの弊害が色濃く出ています。
それは何故かというと、本作は明確に「澁谷かのんを中心に据えた物語」として描かれていて、彼女の見せ場が前提となっているような構造だからです。
前述したように、特定のキャラばかり目立たせるお話作りはアイドルコンテンツにおいてタブーですが、スパスタは完全にその禁忌を犯しています。
最初にその傾向が見られたのは1期6話。
かのん、可可、すみれは本土から遠く離れた離島「神津島」でのライブに参加し、千砂都は本土に残ってダンスの大会に出場する……というストーリーでしたが、終盤かのんが千砂都の元に駆けつけるという展開に。
場面としては幼なじみの友情が描かれた美しいシーンですが、一体どうやって神津島から短時間で駆けつけたのか説明は一切なく、「かのんが千砂都を救うシーン」ありきで作られたシナリオなのは明白でした。
それでも、この時点では「見たい物を見せてくれた」というファン心理が勝り、不満を訴える声はそれほど多くありませんでした。
しかし既に崩壊は始まっていたのです。
2期に入ると、この「かのんが解決」という結論ありきで作られているようなシナリオばかりになってしまいます。
これによって「唐突な展開」「説明不足」「整合性のなさ」「ワンパターン」というラブライブ名物とも言える問題点に加え「特定のキャラ(かのん)ばかりが目立つ」というアイドルアニメのタブーまで追加され、ファンの不満が噴出する事態に発展しました。
「ムーブありき」でキャラが崩壊
(画像引用 : Amazon)
前述した「シーンありき」に続き、スパスタ2期ではもう一つの「ありき」が問題を生じさせています。
それは「ムーブありき」です。
これも基本的なところは同じで、最初に「○○が○○を○○する」「○○が○○に○○される」といったムーブありきで脚本が作られていると強く推察される場面が多く、その結果、様々な弊害が生じています。
最も顕著なのは可可とすみれのやり取りです。
この二人は典型的な「ケンカするほど仲が良い」という関係性を1期で構築していました。
常にポジティブで人当たりが良い可可が、当初スクールアイドルを軽んじていたすみれには厳しく当たり、それがお互いのキャラを引き立てるという構図で描かれていました。
しかし2期ではこれをまるでノルマのように毎回入れてくる為、可可は「口を開けばすみれを罵倒する人物」、すみれは「仲間から常に白眼視される嘗められた人物」という映り方になってしまっています。
2期9話で「本当は通じ合っている」というシーンを描いていましたが、既に可可の印象が非常に悪化した状態で時既に遅し。
加えて「文句ばかりだけど本当は……」というフォローありきで作られた、取って付けたようなシーンという印象が否めず、スタッフの思惑とは裏腹に視聴者はあまり感動できないという状況になってしまいました。
この「ムーブありき」の被害者は他にもいます。
2期から登場したウィーン・マルガレーテです。
彼女の役割は「かのんの強力なライバル」であり、かのんが対抗意識を持つ為に不遜な態度を見せるのは、ライバルキャラとしては自然な振る舞いです。
また1期から登場していたSunny Passionが友好的な2人だった為、そことの差別化という点においても十分納得できる範囲です。
しかし物語の終盤までずっと「フラッと出て来ては挑発的な言動をして去って行く」というムーブの繰り返しで、その上1期からのファンにとって思い入れのあるサニーパッションをあっさりと破った事で更にヘイトが溜まり「ただの傲慢で嫌なキャラ」という印象を持たれてしまいました。
この時点でアイドルアニメではあまり歓迎されないキャラになってしまいましたが、それでも最後まで一貫して「かのんの越えるべき高い壁」であり続ければまだ良かったのですが……結局かのんに「(あなたの言う歌は)本当の歌じゃない」と否定された挙げ句敗北し、負けた後も見苦しい言動を残しSNSで炎上するという中学生らしい精神的な幼さを露呈した事で、なんだかよくわからない存在になってしまっています。
1期の恋もこれに近い作られた方をして人気面で相当苦労していましたが、マルガレーテはそれ以上に極端な嫌われ役を担うハメになりました。
3期では彼女の登場がほぼ確実なため、良い意味でも悪い意味でもその動向に注目が集まっています。
「かのん」ありきで新キャラも本人も生きず
(画像引用 : Amazon)
これまでも何度か触れてきましたが、スパスタは明確に「かのんメインの物語」として描かれていて、かのんを中心とした話作りになっています。
アイドルコンテンツとしては決して良策とは言えず、問題も多く生じる事になりますが……それでも「全員がソロでもトップを目指す」というコンセプトで全員を主人公とした虹ヶ咲との差別化、そしてラブライブシリーズとして新たなチャレンジをしたと考えれば、こういう構成もアリと納得は出来ます。
ただ、それによって生じる弊害はやはり大きく、上記のような様々な不満点が生じてしまい、ファンに強い不信感を抱かせてしまいました。
そして、この「かのん」ありきの話作りによって被害者になってしまったのが、新加入した二期生の4人です。
彼女達は元々、難しい立場に置かれていました。
ラブライブシリーズに限らず、既に関係性が出来上がっているメインキャラの間に割って入る新キャラは、どうしてもファンから厳しい目で見られます。
(ラブライブとは関係ありませんが、かつて人気を博していたバラエティ番組『めちゃイケ』でも新メンバー加入は失敗に終わりました。めちゃイケもナイナイの岡村隆史さんを中心に作っていた番組で、そういった中に新規加入するのが如何に難しいかを物語っています)
それでも、メイと四季がメインで描かれた4話は2期で最も評価が高く、彼女達は大いに健闘しました。
その後も二期生を中心に描いていれば……具体的にはオニナッツの加入を二期生だけで完結させていれば、彼女達の見せ場を作る事ができ、関係性もより深く描けたでしょう。
しかし、ここでも「かのん」ありきが発動してしまい、かのんの説得によってオニナッツが加入する流れになりました。
以降も二期生は殆ど一括りにされてしまい「先輩達には全然敵わない。だから練習しよう!」を繰り返すだけで、具体的な成長の跡があまり視聴者に伝わってきませんでした。
そして「かのん」ありき最大の被害者となったのは、他ならぬかのん本人です。
1期当初は、ラブライブシリーズの主人公では初となる後ろ向きな性格で、そんな彼女が過去のトラウマを払拭して成長する1期のストーリーは、多くのファンの心に刺さりました。
けれど、2期になって「何でも解決するかのん」になってしまい、その実績もあって周囲のメンバーもかのんを持ち上げる言動ばかりが目立つようになった結果、当初の本人の個性も、更には周囲の個性までも潰してしまう個性クラッシャーとなってしまいました。
スパスタ2期最大の失敗は、この点に尽きます。
「かのんメインの物語」ではなく「かのんありきの物語」にしてしまった事で、本来かのんが言わないような台詞(前述した「本当の歌じゃない」など)が用意されてしまうなど全方位に亀裂が入ってしまい、崩壊してしまったイメージです。
「ニコ生アンケート低評価炎上」「Youtube公式動画低評価炎上」「縄跳び炎上」といった各炎上も、こういった問題に対するファンの不満が溜まりに溜まった結果と言えます。
近年のネットは「叩いても良い」という空気になると極端に批判を浴びせられる風潮が強まっており、残念ながらスパスタもその状況に陥っていると言わざるを得ません。
本当に失敗だったのか?
(画像引用 : Amazon)
スパスタ2期に不満の声が多くあがっているのは間違いありません。
とはいえ、まとめサイト等で批判ばかりされている作品がTwitterでは称賛されているケースや、「空気」と揶揄されながら高セールスを記録している作品も少なからず存在するのがこの業界。
スパスタ2期が実際にはどうなのか、Blu-ray・DVD(円盤)の売上を見てみましょう。
・『ラブライブ!』シリーズ円盤全巻平均売上
3.5万枚 ラブライブ!(1期)
6.5万枚 ラブライブ!(2期)5.4万枚 ラブライブ!サンシャイン!!(1期)
4.7万枚 ラブライブ!サンシャイン!!(2期)2.3万枚 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(1期)
1.7万枚 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(2期)1.6万枚 ラブライブ!スーパースター!!(1期)
1.2万枚 ラブライブ!スーパースター!!(2期)
こうして見ると、スパスタの2期が1期より大幅に下落している訳ではない事がわかります。
このデータだけを見る限りでは、2期よりも寧ろ1期の方が失敗しているような印象さえ受けるくらいです。
しかし作品評価と円盤売上の下落率は必ずしも一致する訳ではありません。
円盤は基本的に熱狂的なファンが購入するアイテムであり、ましてラブライブのような長寿シリーズともなると、予約開始直後に全巻予約する猛者がかなりの割合でいます。
そういった人達の多くは、例えアニメの出来がイマイチでもキャンセルまではしないものです。
ただ、出来が余りに悪かったりスタッフや運営に強い不信感を抱いたりした場合、コンテンツそのものへの関心が薄れてしまいます。
そうなると、次シーズンや次シリーズまでは追いかけないという判断に傾きます。
作品の出来が売上に影響するのは、そのシーズンよりも寧ろ次以降のシーズンに対してなのです。
なので、この売上だけを見て判断するのは早計です。
3期の売上を注視する必要があるでしょう。
もう一つのデータとして、フォロワー数の推移も見ていきます。
・『ラブライブ!シリーズ』公式アカウントのフォロワー数推移
1,012,000(虹1期開始)
1,020,000(虹1期終了)1,030,000(星1期開始)
1,047,000(星1期終了)1,066,000(虹2期開始)
1,080,000(虹2期終了)1,083,000(星2期開始)
1,093,000(星2期終了)
1期に関しては、虹ヶ咲よりもスパスタの方がフォロワー数を増やしています。
しかし2期では虹ヶ咲の放送時期の方が伸びています。
シリーズ全般のアカウントなので、アニメの出来とフォロワー数の伸びが直結するとは限りませんが……NHKでの放送という今までとは違う視聴者層へのアプローチを試みておきながら、新規ファンの獲得に伸び悩んでしまったという見方もできます。
とはいえ、「データ上でも2期は悲惨だった」と言えるほどの結果にはなっていないような印象は受けます。
確かに問題点が多いのは事実ですが、「2期にも良い所はあったよ!」という意見や「自分は楽しめた」という人も一定数見受けられます。
「失敗作」というレッテルを貼られつつあるスパスタですが、既に3期の制作は決まっている為、まだ挽回するチャンスは残されてます。
まとめ
……とはいえ、その3期「ありき」のラストシーンも評判が悪かったんですが。
この「ありき」尽しは長期シリーズの弊害でもあるのかなと思います。
全体的にキャラを記号化し過ぎている印象も受けますし、「脚本の都合でキャラが動いている」だけでなく「制作の都合でキャラもストーリーも破綻している」というのが、2期を観た上での率直な感想ですね。
ラブライブの悪い面が全部出てしまった、と纏める事も出来ます。
このまま何も変えずに3期に向かってしまうと、スパスタやLiella!だけでなくシリーズ全体から心が離れて行くファンも増えてしまいかねません。
スタッフ陣にはぜひここで一度、物語作りの原点に立ち返って頂きたいです。