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Mar

【うる星やつら】リメイクはなぜ失敗だったのか? 徹底検証


(画像引用 : Amazon)

2022年秋にリメイク版の放送が始まった『うる星やつら』。非常に期待されていましたが、放送が進むにつれネガティブな意見が見られるようになりました。
そこでリメイクは本当に失敗だったのかどうかを様々な角度から徹底検証し、真相を究明します!

原作は3500万部の大ヒット作! 旧アニメは最高視聴率24.7%の超人気アニメ


(画像引用 : Amazon)

2022年1月1日、産経新聞の全面広告で『うる星やつら』の再テレビアニメ化が発表され、トレンド入りを果たすなど大反響を呼びました。
一方で、若い世代の中には「何でこんなに騒いでるんだ?」と首を傾げる人も少なからずいたようです。

それもその筈。
うる星やつらの連載、及びアニメ放送が行われていたのは1980年代
約40年前の作品となると、今の10代20代にとっては親世代が楽しんでいた作品であり、その凄さを知る機会はほとんどなかったと思われます。

そこで、リメイクの成功不成功を問う前に、うる星やつらという作品がどれだけの実績を残してきたか振り返ってみます。

本作が週刊少年サンデーで連載を開始したのは1978年
当然スマホや携帯電話などなく、まだ家庭用ゲームも全く普及していない時代で、アーケードゲームの『スペースインベーダー』が大ブームとなっていた頃です。
マンガに関しても今とは全然違い、まだ劇画調の絵柄が主流でした。

そんな中でスタートしたこのうる星やつらは、極めて斬新な作風で人気を博します。
本作を構成している要素は「ラブコメ」「ドタバタギャグ」「不条理」「SF」「学園青春」「冒険」「格闘」「怪奇」など多岐にわたり、今でこそこういった「ごった煮」「ジャンルの渋滞」とも言うべき作品は多々見られますが、当時ここまでフリーダムなマンガは皆無。
この作品が登場し、多くの人に受け入れられた事で、マンガで表現できる幅や枠組みが大きく広がりました。

また、所謂「萌え」という概念も、本格的な起点は本作だと言われています。
ヒロインのラムは虎縞のビキニという露出度の高い服を常用していて、アニメ放送開始直後はそれが問題になった事もあるようですが、圧倒的な人気によってそういった声さえも押し切り、若い世代を魅了する女性キャラとして定着しました。
このラムだけでなく、女好きで軽薄な主人公・諸星あたる、イケメンでお金持ちなのに何処か抜けてる2.5枚目キャラの面堂終太郎、当初はヒロインポジションだったのに連載が進むにつれ怪力要素が健在化していった三宅しのぶ、女性なのに父親から男として育てられ一人称も「おれ」の藤波竜之介……など、個性的過ぎるキャラ達がいずれも人気者になり、作品だけでなくキャラに入れ込むファンが急増した事で、「キャラ萌え」の文化が男女問わず広まったのです。

このキャラ萌え要素も、混沌としたジャンルの多様さも、今では当たり前にあるもの。
つまり、うる星やつらが作った「王道」と言う事が出来ます。
本作の最大の実績は、マンガおよびアニメの世界に幾つもの王道を作った圧倒的影響力にあると言えるでしょう。

勿論、それだけではなく記録面でも大きな数字を残しています。
同時期に連載されていた『タッチ』と共にサンデーの二枚看板として1980年代のサンデー黄金期を牽引。
連載中も大ヒットしていましたが、連載終了後に発売されたワイド版や新装版も長く売れ続け、現在では累計発行部数3500万部を記録しています。

1981~1986年に放送されたテレビアニメも大好評で、常時20%前後の視聴率を記録し、最高で24.7%をマークしています。
また劇場版も多数制作され、特に押井守監督が指揮を執った2作目『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』はループものの決定版としてアニメファンから絶大な支持を得ていて、後の様々な有名作に多大な影響を与えたレジェンドと崇められています。

うる星やつらという作品を一行でまとめるなら、「一時代を築き無数のジャンルの王道を作った大正義作品」と言えるでしょう。

放送前の期待度は「激戦クールの目玉の一つ」


(画像引用 : Amazon)

上記のような偉大過ぎる実績があり、当時のファンの心に数十年にわたって棲み着いている作品とあって、36年ぶりのリメイクとなった『令和版うる星やつら』は大きな注目を集めました。
それは、各メディアが調査した期待度アンケートの結果にも表れています。

・dアニメ「今期何見る?2022秋アニメ人気投票」…4位
・アニメ!アニメ!「2022年秋アニメ、期待値の高い作品は?」…4位
・Filmarks「2022年 秋アニメ 期待度ランキング」…4位
・WonderSpace「期待度が高い!秋アニメランキング」…2位
・みんなのランキング「2022秋アニメ期待度ランキング」…9位
・にじめん「2022秋アニメ期待度調査アンケート」…7位

このように、あらゆるアンケートでTOP10入りを果たしています。
しかも2022年秋クールは、圧倒的な前評判を誇っていた『チェンソーマン』をはじめ、『SPY×FAMILY(第2クール)』、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』、『BLEACH 千年血戦篇』『僕のヒーローアカデミア(6期)』『ブルーロック』など話題作が目白押しの超激戦区。
これだけの作品に囲まれ、40年前に放送されていたアニメのリメイクが上位にいる訳ですから、そのネームバリューの凄まじさが窺い知れます。

また、公式Twitterのフォロワー数も順調に伸びていました。
秋アニメの放送が始まる前、2022年9月30日の段階で、うる星やつら公式アカウントのフォロワー数は17万人以上。
ガンダム新作の水星の魔女や、人気原作のブルーロックを上回っていました。

これだけ大きな期待を背負って、令和版うる星やつらは2022年10月14日、ノイタミナ枠で放送を開始しました。

第1話は好評で円盤予約も好調も、2話以降は……


(画像引用 : Amazon)

令和版うる星やつらの第1話は、原作の第1話『かけめぐる青春』を映像化した内容でした。
これは昭和版の第1話『うわさのラムちゃんだっちゃ!』と同じです。
令和版らしく、OP映像ではあたるやラムがスマホを持っていますが、作中ではオリジナル版の時代背景に合わせて黒電話やブラウン管テレビなど昭和の風景そのままで描写されていて、レトロ感が前面に打ち出されていました。

この1話は好評で、放送終了後にBlu-ray・DVD(円盤)のネット予約がスタートするとAmazon、楽天などの主要ECモールで軒並み上位を独占。
トレンドでも複数のワードが上位に入り、上々のスタートを切りました。

しかし、勢いはここがピーク。
2話以降は話題になる事が少なくなり、次第にネガティブな反応も生じてきます
その多くが「思ったより話題にならない」といった内容でした。

果たして本当にそうだったのか。
公式Twitterのフォロワー数の推移を見てみましょう。

・『うる星やつら』公式アカウントのフォロワー数推移

185,000 10月13日(放送前日)
196,000 10月15日(第1話放送翌日)
200,000 10月22日(第2話放送翌日)
201,000 10月29日(第3話放送翌日)
202,000 11月05日(第4話放送翌日)
203,000 11月12日(第5話放送翌日)
203,000 11月19日(第6話放送翌日)
203,000 11月26日(第7話放送翌日)
203,000 12月03日(第8話放送翌日)
203,000 12月10日(第9話放送翌日)
203,000 12月17日(第10話放送翌日)
205,000 12月24日(第11話放送翌日)
211,000 01月07日(第12話放送翌日)
212,000 01月14日(第13話放送翌日)
212,000 01月21日(第14話放送翌日)
212,000 01月28日(第15話放送翌日)
212,000 02月04日(第16話放送翌日)
211,000 02月11日(第17話放送翌日)
210,000 02月18日(第18話放送翌日)
210,000 02月25日(第19話放送翌日)

この表を見てもわかるように、1話の直後では1万人以上の増加がありましたが、以降は急激に増加スピードが鈍っています。
第10話で少し上昇したのは、原作屈指の人気エピソード「君去りし後」が放送された影響でしょう。
その反響などもあって年末年始には若干増えたものの、2023年に入ってからは再び停滞し、2月に入ってからは放送中にもかかわらず減少する事態になってしまいました。

如何に2話目以降の食いつきが弱いかが、この推移に現れています。

フォロワー数がアニメの人気の全てではありませんし、内容が悪いと断じる事も出来ません。
しかし、この状況では「失敗だった」という声が多くなるのも無理はありません。

パイオニアならではのジレンマ


(画像引用 : Amazon)

何故、令和版うる星やつらはこれほど苦戦しているのでしょうか。

理由は幾つかあると考えられますが、ここでは「新規ファン」と「古参ファン」の二つの目線で検証していきたいと思います。

まず新規ファン、すなわちリアルタイム世代ではないアニメファンの視点で本作を観ると、どうしても「古い価値観のアニメ」とならざるを得ません。
近代のラブコメにおいて、ヒロイン以外の女の子を追いかけ回す主人公や、事ある毎に暴力(電撃)を食らわせるヒロインは絶滅危惧種どころかほぼ絶滅状態であり、視聴者に全く免疫がない状態です。
この価値観のズレは致命的かもしれません。

また、当時は斬新だった「多種ジャンルの混在」「個性的過ぎるキャラ達」「なんでもありの世界観」は、うる星がヒットして以降の40年で定番化し、珍しいものではなくなっています。
うる星が素晴らしい作品だからこそ、多くのクリエイターがそれをお手本にし、それらの作品がまたヒットして普及し続けた結果、大元となったうる星が現代の視聴者にとっては特別ではなくなってしまったのです。
いわば「パイオニアのジレンマ」ですね。

そして古参ファンからも、一部で厳しい意見が出ています。
よく見られるのが「中途半端」という意見ですね。

本作を象徴するOP曲「ラムのラブソング」を敢えて起用せず現代に合わせたかと思えば、声優陣はオリジナル版を尊重し過ぎて声を寄せている為、本来の個性が発揮できていない。
本作の特徴である軽妙なハイテンションと流れるようなテンポも、再現されているようでイマイチされていない。
そういった「どっちつかず」な感じが、古参ファンも今一つ乗り切れていない要因かもしれません。

加えてもう一つ、古参ファンには大きな問題があります。

某人気漫画家の方が「好きな作品なだけに観るのが難しい」と呟いていましたが、これと同じ事を思っているうる星ファンはかなり多いと推察されます。
リメイクされるアニメは一作目がそこまで評価されていなかったり、賛否両論あったりするケースが多いのですが、うる星の一作目(1981年版)は物凄く深い思い入れを持っている人がかなり多いだけに、「思い出を汚されたくない」という人は相当数いるでしょう。
これらはリメイク作品には必ずついて回る問題ですが、長年にわたって視聴率20%前後取っていたアニメとなると、人数の桁が違います。

同じ人気作でも、例えば『おそ松さん』はターゲットとなる層を『おそ松くん』と明確に変える事で成功しましたが、うる星の場合は演出や台詞回しを現代向けにしつつもほぼそのままの形で世に出している為、余計に過去作と比較せざるを得ないという難しさがあります。
制作する側が過去の作品を意識し過ぎる事はままありますが、このうる星に関しては視聴者の方も大きくなり過ぎた思い出を意識し過ぎて、素直に楽しめないのかもしれません。
かといって、現代の若い世代が楽しむには、昭和と令和ではズレが大き過ぎるという大きなハードルがある為、現在のような状況になっていると考えられます。

主題歌は好調! ED曲は新たな作品の顔に


(画像引用 : Amazon)

どうしてもネガティブな意見ばかりになってしまいますが、想像以上に高評価を得ている要素もあります。
それは主題歌です。

前述したように、古参ファンの多くはOP曲として「ラムのラブソング」を希望していました。
「あんまりソワソワしないで♪」から始まるこの曲は、オリジナル版の第1話~第77話まで起用された最初のOPテーマであり、うる星を語る上で欠かせない主題歌です。
カラオケで歌う人も今尚多くいる、不動の人気ソングですね。

その為、令和版うる星のOP曲として起用された「アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti」には厳しい評価が下されると思われましたが……そんな不利な状況を吹き飛ばし、好評を博します。
OP映像の再生数は2023年2月28日現在、1194万回を記録。
同じ秋アニメの大ヒット作『ぼっち・ざ・ろっく!』のOPでも480万回、OP映像が話題になった夏アニメの『リコリス・リコイル』ですら500万回ですから、これが如何に凄い数字かわかりますね。

更に、ED曲「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」に関しては、ED映像も530万回と絶好調ですが、楽曲人気は更に凄まじく、MV再生数は2700万回を突破。
ストリーミングでも5000万再生を突破しており、アニメのED曲としては異例のヒットになっています。
今後は「うる星のEDと言えばトウキョウ・シャンディ・ランデヴ」と言われる事になるかもしれません。

まとめ

成功か失敗かは、放送が全て終わってから評価する事ですので、少なくとも現時点で断定する訳にはいきません。
ただ「苦戦している」とはハッキリ言える状況ですし、そういう意味では「ここまではどちらかというと失敗」という評価にならざるを得ません。
とはいえ、「最後のデート」をはじめ人気エピソードはまだまだ残っているので、これからの巻き返しに期待したいですね!

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