4
Apr
【進撃の巨人 考察まとめ】12年の進撃を振り返る(あらすじ・ネタバレ解説)
肌がなくて、赤い肉が丸出しの、不気味な『巨人』。それが表紙の1巻を渡された。
なんでも、『この漫画がすごい!』というランキングで上位に入っているらしい。早速読んでみた。
夢中になって読み終わった。「なんだこれは!」 既存のどの漫画とも違う。世界観の独走性が凄まじく、続きが気になってしょうがない。
強大な巨人に、ちっぽけな人間がどう立ち向かっていくのか、その命懸けの攻防から目が離せなくなった。
同時に、「これを描いているやつは確実に頭がおかしい」と思った。
作者は一体どんな野郎なのかと気になって、スマホで調べてみた。
①シガンシナ区陥落(進撃の巨人 考察まとめ)
今でこそ『進撃の巨人は北欧神話を元にしている』というのが周知されているが、当時はそんな説は流れていなかった。私はかなり北欧神話には詳しいので、巨人といえば北欧神話だなと思っていたのだが、1巻を読んだときには、確かに北欧要素はあまりないなと思っていた。主人公の一家もヒロインも黒髪だし。
これは諌山先生の上手いところで、北欧モチーフを徐々に解禁していったのだ。また、いかにも少年漫画らしい『巨人同士の闘い』も序盤はほとんどない。”本番”が遅れてやってくるのだ。
”本番”までに時間をかける作品は名作なことが多い。例えば映画『マトリックス』ではキアヌ・リーブスが超人的なアクションを披露するまで、たっぷり時間をとってストーリーを進めている。これにより厚みのある人間ドラマが出来上がるのだ。
他には『ウルトラマン』もだ。諌山先生は「ウルトラマンにプロレスをさせたい」と思っていたことをインタビューで語っていた。
それでも進撃の巨人が「パクリ」と言われないのは、『巨人』という他に類を見ない題材のおかげである。
確かにドラゴン、吸血鬼、狼男などを扱った作品は多くあるが、巨人をモチーフにしているものは少ない。
つまり既存の名作に『巨人』という新しい要素を掛け合わせて世界を構築していったといえる。
自身の経験もブレンドして、この他に類を見ない、三重の壁の世界を創り上げたのだ。
それにしても、巨人が気持ち悪い。「巨人はかっこよく描くのではなく、意図的に気持ち悪くした」らしいが、最初に読んだときは本当に問題作だと思ったし、アニメ化決定の報を受けたときには放送コードに引っかからないか不安だった。
しかし進撃の巨人は、その新しい作風や、読者に媚びたお色気がないことから国民的ヒットとなり、主題歌は紅白歌合戦で披露されるわ、Final SeasonはNHKで放送されるわで、予想以上の反響を生んだ。
② トロスト区奪還作戦(進撃の巨人 考察まとめ)
シガンシナ陥落から5年後。主人公エレンが立体機動を習得したことで、巨人VSちっぽけな人間という構図が展開される。
大人VS子供のような展開が残酷すぎる……命懸けで訓練しても、結局巨人の前には無力という現実。このトロスト区襲撃でエレンが初めて巨人化するわけだが、巨人のような異常なものに対抗するには、結局異常なものじゃないとダメなのだろう。
無茶苦茶シリアスな展開だが夢中になってしまう。現代人が決して味わうことのない、『狩られる恐怖』。
生物にとって原初的な危機だからこそ目が離せないのかもしれない。
ミカサも5年が経ち、体格は大人っぽくなったが、まあ色気のないヒロインだなと(褒めてます笑)
子供の頃のミカサは女の子らしくて可愛かったのだが……。
子供のときといえば、このトロスト区襲撃編で、ミカサの過去が描かれる。両親が殺されてエレンの家に入るエピソードなわけだが、ここでエレンが人攫い二名を殺害しているのだ。
私は「このシーン要る!?」と常々思っていた。巨人に立ち向かう物語なのだから、エレンに100%感情移入したいし、人類VS巨人という構図においては、物語のリズムを乱すノイズだと思っていた。
諌山先生も落ち込んだと言っている。しかしそれを乗り越え、自分の描きたいものを貫いたからこそ、ここまでのメガヒットとなったのだ。
巨人化したエレンはプロレスかよってほど、大きく振りかぶったテレフォンパンチ(予備動作の大きいパンチ)ばかり打つ。トロスト区では初の巨人化で暴走気味なので、荒々しさがぴったりなのだが、後の女型の巨人戦、鎧の巨人戦でも同じような殴り方だ。
エレンは対人格闘の成績が同期でナンバーワンだったので、これにはいささか違和感を覚える。
『グラップラー刃牙』で見られるような、『間合いに入ったときの挙動の読み合い』は皆無である。
諌山先生は格闘技好きで有名だが、恐らく格闘技経験のない素人だ。
しかしそれでいいのである。この理不尽に対する怒りを体現したかのような、大きく振りかぶったパンチが、見ていて気持ちいいのだ。
エレン以外の104期が、知恵と力を合わせて巨人たちを倒すシーンには感動しかない。貴重なライナー、ベルトルトとアニの、裏切りトリオの会話が見れるのも読み返したときに面白い部分だ。
この後、アルミンの決死の説得シーンがあるのだが、このように戦闘以外のシーンが面白いのも『進撃』の大きな長所だろう。
ドット・ピクシスの登場後、物語はトロスト区奪還作戦に入る。
はっきりいってモブキャラなのだが、『イアン』というエレンの護衛隊長がいい奴すぎて泣けてくる。イアンだけではない。エレンの護衛を任された者たちは、作品全体を見ても、エレンに理解のある優しい兵士たちだった。
③第104期訓練兵時代(進撃の巨人 考察まとめ)
ウォール・マリアが破壊されたあと、エレン、アルミン、ミカサは年寄りとともに2年間農業に従事していた。私が『進撃』の世界の住人だったら、農業で家族を養っていきたいと思う。収入がいくらかにもよるが。
食糧生産に貢献したあと、エレン達は第104期訓練兵団に入り、命懸けの訓練を3年間もする。あまり描かれていないが、立体機動の修得過程で命を落としたものもいるだろう。
しばらくは巨人が登場せず、エレンたちの訓練兵生活が描かれる。
ここで非常に怪しいのが、ライナーとベルトルトだ。
このときのライナーはまだ二重人格になっていないし、思わず素の反応をしてしまったのだろう。
この訓練兵時代はアニメだと時系列順になっており、トロスト区襲撃の前に描かれる。個人的にはそのほうが、超大型巨人の2回目の襲来までに、様々なドラマが描かれるので好きだ。