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ジャンプSQに連載された歴史恋愛物語『大正オトメ御伽噺』のあらすじ・魅力を紹介!【秋アニメ】
少しずつ日が短くなってきましたね。秋の夜長にさくっと読めるマンガが知りたいという方のために、今回は歴史恋愛モノの傑作『大正処女御伽話』について解説して行きます。
大正処女御伽話(アニメは大正オトメ御伽話)は、桐丘さな先生による少年漫画で、集英社の月刊誌ジャンプSQにて2015年8月号から2017年10月号まで連載されていました。全38話で単行本は5巻と短いながら、大正時代を舞台にした心温まる純愛ストーリーを描き切った傑作です。
今回はそんな本作の魅力を、ストーリーに沿って紹介して行きます。
出会い
明治38年、財閥である志摩家に生まれた珠彦は、愛情以外は何不自由なく育てられました。しかしある時、事故によって母・透子と、右手の自由を失ってしまいます。仕事人間の父からは千葉の農村で暮らすよう言い渡されますが、それは事実上の勘当でした。
父の冷酷な仕打ちに傷つき、世の中への希望を失った珠彦は、自分は厭世家(ペシミスト)だと自嘲して暗い日々を過ごしていました。
物語は大正10年から始まります。ある吹雪の晩、珠彦の元に1人の少女が訪れました。少女の名前は夕月(ゆづき)。珠彦の父が借金のカタに買い上げ、珠彦の世話係として送ってきた娘でした。
人間不信に陥っている珠彦は当初、かいがいしく世話してくれる夕月を遠ざけようとします。しかしめげずに身体の不自由な珠彦の面倒を見続ける夕月の優しさに、珠彦はいつしか、冷え切った心がほぐされていくのを感じます。
そんな時、二人の絆を揺るが事件が怒ります。珠彦の誕生日に、夕月はお手製の栞をプレゼントします。栞には桔梗(キキョウ)の押し花が添えられており、花言葉は「変わらぬ愛」。
心のこもった贈り物に浮かれる珠彦でしたが、村にいた不良娘・綾(りょう)によって、栞をバラバラに引き裂かれてしまいます。しかし珠彦は、細かい破片になってしまった栞をノリでくっつけ合わせ再生させます。夜なべをして栞を直す珠彦の姿を見て、夕月の恋心は確かなものになるのでした。
これからずっと幸せな日々が続くかに思えた時。友人の美鳥に会うために東京に出かけた夕月を、悲劇が襲います。時は大正12年。ちょうどあの災害が起こった年でした。
震災の悲劇
東京を大地震が襲ったことを知った珠彦は、いてもたってもいられず、夕月のいる東京へ徒歩で向かいます弟が浅草に奉公に出ていた綾も付いてくることになりました。
東京は地獄と化していました。震災は昼時に起こったため、家々の台所から火が燃え上がり、東京を火の海にしたのです。その規模は、関東大震災では地震よりも火災で亡くなった人の方が多いと言われるほど。
焼死体にあふれた東京で、必死に夕月の名前をよぶ珠彦。途中、神戸から看護隊として駆けつけた珠子とも協力し、3日間に渡って夕月を探し続けますが、なかなか見つかりません。絶望に陥りかけたとき、夕月の友人である美鳥と幸運にも出会うことができます。美鳥は珠彦を夕月のいる看護所まで案内してくれました。
夕月は生きていました。しかし彼女は、美鳥を助けるために頭にガレキをぶつけ、昏睡状態に陥ってしまいました。眠る夕月に名前を読みながら何度も呼びかける珠彦。その時、夕月は珠彦と出会った時の夢を見ていました。
借金に苦しむ両親を助けるため、自らの身を売ると決意したこと。世の中に絶望している珠彦を一目見たとき、この人のために力になろうと誓ったこと。徹夜で栞を直す珠彦を見て、恋に落ちたこと……。夢の中で珠彦への想いを再確認した夕月は、珠彦の呼び声に応えるように目を覚まします。
白鳥兄妹
大きな災害を乗り越え、また一段と絆を深めた二人。そして珠彦は、夕月と幸せな家庭を築くため、稼ぐ力を身に着けようと再び学校に戻ることを決心します。一年半のブランクで勉強は大変なものでしたが、夕月や綾、珠子たちの応援もあり、珠彦は無事に試験を突破します。
悪名高い志摩家の息子ということで、珠彦の旧友からの扱いは冷たいものでした。しかし、そんな転入初日に珠彦は初めての友人ができます。名は白鳥策(しらとり・はかる)。彼は巷で有名な歌姫、白鳥ことりの双子の兄でした。
策を通じて、小鳥とも親交を深めていく珠彦と夕月。策は病気が原因で長い間、音楽を諦めていたのですが、珠彦の助言で再び小鳥のために音楽をしようと決意することができます。小鳥は兄の音楽復帰を涙を流して喜び、いっしょにデュエットするのでした。
そんな時、またしても不穏な知らせが飛び込みます。志摩家の跡を継ぐはずだった長男・珠樹の訃報でした。兄の葬式で、珠彦を田舎に閉じ込めて死人扱いした父から「すまなかった」と頭を下げられます。
父の突然の謝罪に面食らう珠彦。それに合わせるように、夕月が理由も告げずに家を出て行ってしまいます。