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【怪獣8号】はどうしてここまで話題作になったのか? 検証まとめ
出典 : Amazon.co.jp
2020年12月4日に発売された『怪獣8号』のコミックス第1巻がメガヒットを記録中です!
そこで今回、この漫画がどうしてここまで話題作になったのかを徹底検証。本作の特徴や設定の妙など、魅力に繋がっている要素を満遍なくお届けします!
ジャンプラ史上最速3000万閲覧! 大反響の人間×怪獣バトル
少年ジャンププラスにて、怪獣8号第5話が配信されました!
始まる最終選考。スーツ適応検査でライバル達が次々と記録的な数字を出す中、カフカも負けじと新記録を叩き出す!よろしくお願いします!https://t.co/SMy5gMZh41#怪獣8号#ジャンププラス pic.twitter.com/qLt9JHBe1a— 松本 直也 怪獣8号連載中 (@ringo_inuS) July 31, 2020
少年ジャンプ+で2020年7月3日より連載を開始した『怪獣8号』は、その第1話が公開された日に突然トレンド入りを果たし、翌日には100万閲覧を達成するなど大反響を呼びました。
人気作家の待望の新作であれば、こういったことも起こり得るかもしれません。
しかし怪獣8号の作者・松本直也先生は過去にヒット作を出した経験はなく、2009~2010年に週刊少年ジャンプで連載した『ねこわっぱ!』、2014~2015年にジャンプラで『ポチクロ』はいずれも短命に終わっています。
作者のネームバリューによって引き起こされた現象ではありません。
だったら、何か特別な仕掛けがあったとか、極端に奇を衒った内容がネットでたまたま受けたとか、そういった飛び道具的な要因があったのでは……と思わず疑いたくなりますが、そうではありません。
漫画としての完成度の高さだけで、その異例の事態を巻き起こしたのです。
怪獣8号は、人間にとって自然災害と同等の存在である怪獣が出没する世界を舞台にした物語。
この世界の日本は怪獣発生率が世界屈指の高さで、怪獣を直接討伐する「日本防衛隊」、討伐された怪獣の後処理を行う「怪獣専門清掃業」などが存在し、怪獣討伐のノウハウが確立されています。
ジャンルは怪獣アクションですが、変身ヒーローやダークファンタジーの要素も備えた物語。
作風も、全体的にはシリアス寄りですがコミカルな描写も多く、少年漫画らしい熱血や友情といった面も売りになっていて、かなり幅広い層をターゲットにした作品になっています。
それが見事にハマり、第2話以降も凄まじい勢いでファンを増やし、8話目の時点で1000万閲覧を突破。
連載開始から僅か5ヶ月で3000万閲覧に達しました。
このペースは、既にメガヒット作になっている『SPY×FAMILY』すらも上回っており、コミックスが発売される前にジャンプラの看板作品となったのです。
強烈すぎた第1話のインパクト! 王道と変化球の融合
ジャンププラスにて、怪獣8号の第10話が配信されました!試験結果発表当日、カフカの道はミナの隣へと続いているのか!?よろしくお願いします!#怪獣8号#ジャンププラスhttps://t.co/JfoQLdSlZV pic.twitter.com/7hYBq4oE4J
— 松本 直也 怪獣8号連載中 (@ringo_inuS) September 11, 2020
ここまで怪獣8号がバズった最大の要因は、第1話のクオリティにあります。
ただし、それはストーリーの内容の良さだけを指している訳はありません。
絵や設定など、1話目で提示されたあらゆる要素が数多の読者に刺さったからこその大ヒットなのです。
まずは絵に関して。
松本先生が過去に手掛けた2作は、決して画力が売りの作品ではなく、見やすさと丁寧さが目立つ漫画でした。
しかし怪獣8号では、最初の3ページで読者を唸らせるレベルの画力を見せつけています。
特に印象に残るのは、討伐された巨大な怪獣が街に横たわる見開きのページ。
怪獣モノは丁寧な描写以上に迫力やインパクトが重要ですが、1話目の時点でそれを完璧に備えています。
また、怪獣のデザインも秀逸。
一目で人類の脅威とわかる、おぞましさと不快さがしっかりと表現されているので、敵を倒す際に生じるカタルシスも一入です。
そして、設定とストーリーも多くの読者の関心を惹き、共感を得ました。
主人公の日比野カフカ(ひびの かふか)は、怪獣専門清掃業者「モンスタースイーパー(株)」に務めている32歳の男性。
少年期に5歳年下の幼なじみ・亜白ミナ(あしろ みな)と「怪獣を全滅させよう」と誓い合ったものの、才能に恵まれず防衛隊入りを諦め、今や防衛隊のエースとなったミナの活躍を裏方として見守ることしかできない日々を送っていました。
そんなカフカが、一回り以上年の離れた後輩の市川レノ(いちかわ れの)に触発され、最後のチャンスと一念発起し防衛隊の試験を受ける決意を固めるのですが……何の因果か、謎の生物に体を内側から浸食され、異形の怪獣に変身するという衝撃的な展開で、この物語は幕を開けました。
「衝撃的な展開」と書きましたが、主人公が人類の敵である異形に変身するという展開自体は、『デビルマン』から長らく続く王道の系譜です。
挫折を味わった主人公がラストチャンスに賭けるという展開も、王道のストーリーと言えるでしょう。
ヒロインが主人公より遥かに強く最強クラスというのも、『Fate/stay night』や『進撃の巨人』など様々な作品で見かける設定です。
一方、主人公が32歳、ヒロインが27歳という設定は、少年漫画ではかなり異質。
近年は『小説家になろう』のコミカライズなどでオッサン主人公の漫画は割とよく見かけるようになりましたが、ヒロインが20代後半というのは相当レアです。
これらの王道と変化球が融合したことで、怪獣8号の第1話は「わかりやすさ」と「意外性」、「インパクト」と「安定感」という本来正反対の要素をそれぞれ兼ね備えた内容になっています。
しかも、絵に関しても元々松本先生の魅力だった「丁寧さ」に「迫力」が加わったことで、ダイナミックでありながら読みやすい漫画になっているのです。
それらがギャップを生み出し、尚且つ作品の幅広さに繋がったことで、多くの読者を惹き付けたと思われます。