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Mar
【100日後に死ぬワニ】は何がダメだったのか? けもフレ騒動との共通点・相違点とは
一大ブームとなっていた『100日後に死ぬワニ』ですが、最終回直後に盛大なメディアミックスとグッズ展開を発表したことで大炎上してしまう騒ぎとなりました。
一体何が問題だったのか、先の「けもフレ騒動」と比較しつつ、あらためて検証していきます!
「自分たちが育てたコンテンツ」の崩壊
出典 : Amazon.co.jp
200万人以上のフォロワーを集め、最終回更新日にはトレンドランキング上位を独占し世界1位に輝くほどの盛り上がりを見せた『100日後に死ぬワニ』が、その直後に大々的なメディアミックスと怒濤のグッズ展開を発表し、大炎上をしてしまったのは記憶に新しいところ。
「露骨なビジネス展開にせっかくの余韻が壊された」「最初から仕込みだったのか」といった失望の声が目立つ一方、「ビジネス展開自体は正当だが発表のタイミングを誤った」「あまりにグッズが多すぎて用意周到な印象を受けた」「死を扱った作品で軽々しく金の臭いを出し過ぎた」などの冷静な意見も各所で見受けられます。
どれも一理ありますし、1月16日(36日目)の時点で商標登録が申請されていたこともネガティブなイメージに拍車をかけたようです。
この100ワニの炎上騒動から、2017年に起こった「けもフレ騒動」を連想した人もいるようです。
実際、ほのぼの系コンテンツが爆発的な人気を獲得し、その後作品の内容とは別のところで炎上騒ぎになってしまった……といった概要だけを見ると、この2つの騒動はかなり似ています。
そして何より最大の共通点は、ファンが「自分たちが育てたコンテンツ」という自覚を持っている点でしょう。
100ワニの特徴はタイトルの通り、最初から主人公のワニが死亡することを提示し、その死までの日数をカウントダウンしている点です。
何気ない日常描写でも『死まであと○○日』と付けるだけで途端に切なく奥深いものに思える……と多くの読者が感銘を受け、次第に「日常描写の中に死への伏線が隠されているのでは」「この表現は実はこんな意図があって……」といった考察を行う人が増えていき、読者層を拡大させていきました。
作品に強い関心を抱き、様々な描写に対して自分なりの解釈を行って想像を膨らませていくユーザーは、一部で「考察班」と呼ばれています。
明らかに作者が想定していないであろう曲解も多々ありますが、彼らが示す見解は多岐にわたり、成程と思わせるような深い考察も少なくありません。
考察班の深読みによって該当作品を含蓄のある高尚な内容と感じ、ファンになった人も大勢います。
そのため、考察班が多数生まれた作品は爆発的な人気を生むことがあります。
最も有名なアニメ作品はエヴァでしょう。
そして近年で言えば、けものフレンズが該当します。
考察班の特徴は、作品に対して強い愛着を持ち、ほとんどの要素を好意的に解釈する点です。
作者はあらゆる描写に意味を持たせていて、しっかりとした考えに基づいて作品を制作・発表している……という前提で考察を行っています。
そして、考察をして行く中で「この作品はこういうテーマで作られたに違いない」「だからこの描写はこういう理由でテーマに繋がっている」などの願望が一人歩きし、自分の中の理想像を構築していきます。
考察自体は、多少行き過ぎたとしても決して悪いことではありません。
自分の考えを他人に押しつける等の過激な行動を起こすのは問題ですが、自分なりの解釈を持ち、その考えを発信すること自体はむしろ健全です。
よって、考察班の存在自体は決して否定されるべきではありません。
一方、考察班の一部には、作品に対し愛着を持ち過ぎるあまり「自分たちの考察が作品を盛り上げた」「自分たちが作品を育てた」と自覚する人がいます。
例えそこまではいかなくても、人気に火が点き一緒に盛り上がっていく中で一体感を覚えるファンは少なくないでしょう。
特に、初期から目を付けていたファンほどその傾向が見受けられます。
そういった状態になると、「裏切られた」と感じた時の憤りもまた、より大きくなります。
けもフレ騒動は「先行リリースされたゲーム版が振るわず、最悪の状況でスタートしたアニメ版がたつき監督の手腕によって大成功した」というサクセスストーリーがあって、それが監督降板によって裏切られたことでファンは激しく反発しました。
ただ、この作品が普通のヒット作であれば、同じ経緯でもあそこまでの大炎上にはならなかったでしょう。
考察班をはじめとしたディープなファンたちにとって夢の楽園だった場所が奪われたことで、より猛烈なバッシングが生まれたのです。
100ワニも同様で、単に「ほのぼのコンテンツから生々しいビジネスの話が露呈したことへの嫌悪感」だけなら、ここまでの騒ぎにはならず、ネタ的な盛り上がりで済んでいたかもしれません。
しかし本作もけもフレ同様、考察を楽しむ中で愛情を育み、優しい世界に浸っていたファンに水を差したことで、大炎上に発展したと推察されます。
加えて、両騒動に共通しているのは、その原因として槍玉に挙がっているのが大手企業という点です。
真相に関しては外部からは知りようもありませんが、大手企業が絡んでいると噂された時点で「彼らの都合や仕掛けに振り回された」とファンが感じ、自分たちが一体になって盛り上げ育てたコンテンツが破壊された、もしくは幻想だったと思うのはごく自然な流れ。
その反発に加え、性急な商業展開に対する不信感も相まって、作品が好意的に考察されていた頃とは逆に、ほとんどの要素がマイナス方向に解釈されるバイアスが生まれていると思われます。