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2015年公開の劇場版第19作目、『劇場版名探偵コナン 業火の向日葵』。2019年4月公開の『紺青の拳』でも大活躍の怪盗キッドがメインを張る作品であり、「駄作」と言われることもしばしばあるこの作品。名作なのか駄作なのか、検証してみました。
『業火の向日葵』のあらすじ
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ニューヨークで行われたオークションで出品された、失われたはずのゴッホのひまわり。かつて焼失したはずのひまわりとそっくりなその絵画は、間違いなくゴッホ自身が描いたものであることが証明されています。
新たに発見されたそのひまわりを驚愕の3億ドルで落札したのが、鈴木次郎吉。園子の叔父であり、様々なビッグジュエルを手に入れては怪盗キッドに挑戦状を叩きつけている男です。
そんな次郎吉が今回手に入れたのは絵画であり、その目的は日本でゴッホのひまわりを全て集めた「日本に憧れたひまわり展」を開催することでした。
落札時の記者会見でそのことを大々的に発表した次郎吉と園子、そして次郎吉が展覧会を成功させるために集めた「7人のサムライ」の前に現れたのが、怪盗キッドです。
なぜかビッグジュエルではなく絵画であるひまわりを狙っているらしいキッド。コナンは、キッドのいつもと異なる様子や、周りの人間の危険を顧みない手段に疑問を覚えますが、ひまわりがキッドに盗まれるのを防ぐべく動き出します。
怪盗キッドが「悪役」っぽく描かれた、珍しい作品です。
史実との違い
鍵は「芦屋のひまわり」
☞続き 銀行などからも保管を断られ、山本氏は芦屋にある自宅で「ひまわり」を保管することに…。しかし、1945年8月5日、アメリカ軍による大空襲で焼失してしまったと言われています。「名探偵コナン 業火の向日葵」放送中⭐️ #コナン pic.twitter.com/G1s7qHPEII
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『業火の向日葵』は劇場版シリーズ初のアートミステリーということで、タイトルにもあるゴッホのひまわりを中心に話が展開していきます。
史実において、ゴッホのひまわり(花瓶にささった構図のもの)は七点制作され、六点現存しているとされています。失われたのは二枚目のひまわりで、武者小路実篤の依頼によって実業家の山本顧彌太が購入したものです。兵庫県芦屋市の山本宅に飾られていましたが、1945年に空襲によって焼失しました。「芦屋のひまわり」とも呼ばれます。
この芦屋のひまわりこそ、『業火の向日葵』の鍵となる作品です。次郎吉が3億ドルで落札したのはこのひまわりに酷似したものであり、作中では「芦屋のひまわり」と落札したひまわりは、片方がもう片方をゴッホ自身が模写したものではないかという説が出ていました。
どちらがオリジナルなのかは分かりませんが、どちらもゴッホが描いたものであることは間違いありません。
つまり、次郎吉が落札したひまわりは、「芦屋のひまわり」のオリジナルまたは模写。そのためレイクロック美術館では「二枚目のひまわり」として展示されました。
『業火の向日葵』オリジナルのロマン
「向日葵の花言葉“私はあなただけを見つめる”。でもね、見つめているだけではいつかきっと後悔する。」
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『業火の向日葵』終盤になって、次郎吉が落札したのは正真正銘「芦屋のひまわり」であることが明かされます。実は作中の「芦屋のひまわり」は、空襲当時実業家に雇われていた大工によって救出されていたというのです。その大工は燃え盛る屋敷の中に飛び込んで壁に固定されたひまわりを救い、それを駆け付けた実業家の娘・ウメノに託し、業火に焼かれて亡くなりました。
その後、娘と一緒にひまわりを受け取った書生によって「芦屋のひまわり」は贋作を装って海外へと運ばれました。フランスのアルルへと流れついたそのひまわりこそが、今回新たなひまわりとして発見されたものです。
つまり『業火の向日葵』では、「芦屋のひまわり」は焼失していなかったという設定になっていて、史実を知っている人からすればびっくりな展開となっているのです。
この「芦屋のひまわり」の救出には、ウメノの大工への悲しい恋やキッドの助手・寺井も絡んでおり、「芦屋のひまわりの現存」と合わせて大変ロマンがあります。
この史実を踏襲しつつそれを覆すドラマとオリジナリティはよく考えられており、『業火の向日葵』の魅力のひとつといえるでしょう。