一枚岩ではない、魔人たちの動向

シュトロームの手足となる配下達は、なぜシュトロームに忠誠を誓うのか？
闇に落ちた者達の酷い過去が強さの根源に垣間見える。

シュトロームの手により貴族や情勢に強い憎しみを持つ平民たちは次々と理性を持った魔人へと生まれ変わり、帝国は魔人・魔物襲来を受けて貴族平民問わずに八つ裂きにされた。これにより目的を果たしたシュトロームは「世界統一」を叫ぶ魔人たちの気持ちに答えることなく、生きる目標もなくただただ変凡な荒野に住まう。これに対し、元々帝国を滅ぼすためだけに生み出された魔人たちはシュトロームに対する忠誠心が薄いため早々に彼の元を離れ、自らグループを作り各国に襲撃。これを倒して回っているのがアルティメット・マジシャンズと呼ばれるシン率いる精鋭部隊だ。
だが、真にシン達の敵となるのはシュトロームに忠義を誓う配下達。シュトローム自身はシンを「自分に手傷を負わせた人間」と評価するが敵意はない。これに対し配下達は主の脅威になりうる人間は早々に摘んでおくべきであると暗躍している。この配下達は元々帝国軍人であり、帝国の貴族主義に辟易していたところをシュトロームに救われた身である。このため、単なる平民が魔人化したのとはわけが違い、元々高い戦闘能力を保持した立派な戦士だ。アルティメット・マジシャンズも今までの魔人とはわけが違い、一筋縄ではいかないどころか窮地に追いやられる。ただ、シンはレベルが違うとしか言いようがなく、シンとの全面戦争を不利に思った魔人配下達が婚約者であるシシリーを狙ったところ、シンの逆鱗に触れ返り討ちにあった。

魔王

英雄なのに魔王とは一体…。世界の価値観や発想が違えばネーミングセンスも異なる！！！

14歳という若さで魔人を2度に渡り撃破したシンが、国王からの受勲時に拝命した二つ名。
元々この語源は、アルティメット・マジシャンズとして各国に攻め込む魔人を迎撃していたシンが、うっかり周囲一帯の麦畑を焼け野原にしてしまい「うっかり世界を滅ぼすのでは？」と周りが心配したためにシンが「魔王じゃないんだから！」と口から滑らせてしまった言葉だった。しかし、問題だったのは異世界に「魔王」という概念がなかったために「魔法使いの王」つまり「魔王」と解釈した面々は納得し、オーグに関しては魔王と呼ばれることを嫌がるシンを見て面白がっていた。そしてあろうことかオーグは、そのことを父である国王に話、受勲時に「魔王」の二つ名を与えてしまったのである。

シンとシシリー

出展 : Amazon.co.jp

公認カップルがずっとファンをもだもださせたが…ついに婚姻？！
両家も認める恋仲になった二人の今後が気になる！

序盤から読者をやきもちさせてきたシンとシシリー。シンは一目で「可愛すぎる！」と激震し、シシリーも困っているところを助けられたために「かっこいい…」と恋に落ちる（本人は無自覚）がその後いい雰囲気になるが中々に発展しない。
オーグやマリアが要らぬお節介を焼く中で、シシリーは「婚約者」だと言い寄ってくる同級生カートからシンの加護で守られ、シン自身も「何があっても俺が守ってやる」と宣言している。
ちなみにシンがシシリーの制服に付与魔法で加護をつけるだけでも「国宝級の防具」に早変わりしてしまうため、最初は導師メリダは反対を見せていた。だがこの一件を経て義祖母のメリダはシシリーを認めるどころかシンの嫁に、と画策することとなる。

また、子爵貴族は平民と恋愛の感覚が異なる。互いに両想いであることが判明し、交際をスタートすることとなった二人だが貴族のシシリーは平民のように恋をして付き合って、別れて、ということは稀にない。交際がイコールで結婚に結びつく出生のため、シンはシシリーの両親に早くも交際の許可をもらうこととなる。その際、シンはマーリンとメリダ以外誰も知らなかった「自分は生みの親もわからない拾われた子」であることを明かす。もとより、賢者の孫という肩書きよりもシン自身を買っていたシシリーの両親は二人の仲を認め、仲間たちもシンが二人の血筋でないことから、賢者様以上の逸材になったことに納得するのだった。

オーグとエリー

オーグの愛称で知られる王子アウグスト＝フォン＝アールスハイドと、エリーの愛称で知られるエリザベート＝フォン＝コーラルは婚約者同士である。公爵家の次女であるエリーと、次期王を約束されているオーグは幼い頃、貴族同士の交流を深める場で出会い、王子であるオーグにすり寄って来ない素っ気なさと、進んでオーグから交友を持とうとしたところ「王子と一緒だと面倒そうなので結構です」と一刀両断にするエリーの媚びない性格に惚れ込んで5歳にして猛アタック。結果、二人は恋愛婚約を成すのだが、今やエリーの方がオーグに入れ込んでいる節があり、シンが現れたことでエリーに構わなくなったオーグを前に「二人は出来ているのではないか？」と問い詰めたことにより、シンからは「腐った脳をお持ちの方」認定をされている。

まとめ

異世界で勇者になる、と言ったあらすじは王道ではあるものの、スペックを徐々に上げていくストーリーではなく、最初から最強でありつつも策を凝らして一人では叶わない敵に仲間を育て攻略していく。そんな一風変わったストーリーとファミ通文庫らしい恋愛要素強めの物語についつい男のロマンと夢を感じてしまうものは多いだろう。また、女性であっても個性豊かな男性キャラ達に夢を追い、中には見目麗しいイケメン集団に禁断な恋を感じるものもいるだろう。ぜひ、今後も目が離せない『賢者の孫』をアニメを通して更に楽しんでもらいたい。