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6

Mar

【東京喰種】残酷な世界が私たちに教えてくれた「生きる尊さ」について

金木の覚醒

https://twitter.com/sotonami/status/1077576573031596032

一期の最終話、敵の喰種に拉致された金木は厳しい拷問を受けることになります。監禁され、自分を助けようとしたカップルの喰種を目の前で殺され、金木は深い思考の中に潜ります。
その思考の最中でとうとう自分の哲学を確立するのです。
人間として喰種を恨み恐れながら生きていては決して到達し得なかった思考を手に入れ、歯が立たなかった相手を圧倒、隻眼の喰種として名を馳せるほどの強さを手に入れるのですが、重要なのはその気づきの部分。
金木は幼い頃に父親を亡くし、学校でも基本的にひとりぼっち。本を読むことだけが楽しみだった彼は常に寂しさと戦って生きていました。
それでも、女手一つで自分を育ててくれた母親を「優しい人」と称し、自分を育てるためにたくさん働いて、親戚がお金の無心をしてきたときにも厳しい中から援助してあげる姿をみていました。
忙しい母の手を煩わせないようにと幼心に気を使う彼は、家でも本を読んで時間を潰していました。
そしてある日、過労で倒れた金木の母はそのまま帰らぬ人となったのです。
拷問の中、自分の精神世界と向き合う金木はその事実に向き合います。自分のなかに眠る喰種と対話し、最後まで金木は母親を「優しい人」だったと表現します。その優しさを、金木も持っています。
しかし金木の中に住まう喰種は、今自分が受けている拷問を引き合いに出して問いかけます。
「この苦しみは誰のせい?」と。
金木は答えあぐねてしまいます、しかし本当はすでに分かっているのです。
母が過労で死んでしまったことも、今自分がキツい拷問を受けていることも、目前で自分を助けようとした仲間が殺されたことも、全て自分が「選ばなかった」せいなのだと。
選べば、せめてどちらかを救うことができたでしょう。
選ばなければどちらも失う状況を強いられたときに、選ばず傍観するのは「優しさ」ではなく「弱さ」なのだと、金木は喰種に諭されるのです。
母の優しさが大好きだった金木はその言葉を否定しますが、押さえつけていた自分の気持ちは言うことを聞きません。
本当は母親に自分を選んでほしかった、金の無心をしてくるような親戚は切り捨てて自分のために生きてほしかった。
これまで「選ぶ」ことで何かを捨てなければならないというネガティブな面にばかり目が向いていた金木ですがこの作品世界における喰種にとっては「生きる」「人を殺す」は同義。命を奪ってまで生き永らえたいと思うかどうか、極限の選択を常に迫られていました。
なにかを選ぶということは、なにかを犠牲にするということ。
金木は「選ばれなかった」人間である自分の辛さを自覚します。同時に「選ぶ」ことで救える存在にも気づくのです。それは自分が何かを捨ててでも得たい結果を見つけるということ。人生に責任を持つということです。
金木は喰種の言葉に対し叫ぶように答えるのです。
「奪ってでも生きたい」と。
この過酷な宿命を強いられた世界で生きていく上で、最も大切な哲学を金木は手に入れたのです。
選ばずに生きることは無責任で、もろく、弱い生き方です。
何も選ばずに生きて、大切なもの、大切な人を失ったとして、その理由を世界になすりつけても何も変わりはしない。怖くても、辛くても、選ばなくてはいけない。
金木はこの瞬間、選ぶのです。大切な仲間たちの命を。
同時に、捨てるのです。人間だった自分自身を。
喰種と人間のハーフだった金木はこの瞬間から本物の喰種になり、格上の喰種を圧倒していきます。
このシーンはただ「かっこいい」だけで済まされる話ではありません、もっと大きな、人間が生きていく上で感じる矛盾や疑問を撃ち抜き、脳をぐらんぐらん揺さぶるような衝撃を与えるシーンです。
もしまだ観ていない、という方はぜひ、ぜひご覧ください。

『東京喰種』は世界の残酷な取捨選択を描き出してくれる

何かを選んだり、成し遂げたりするためには何かを捨てなければならない。
これって現実の世界でも一緒ではないですか?
私達も毎日何かを食べて、何かを殺して生きている。その瞬間が日常生活から隔離されているから実感がないだけで、と畜場では今日も何千、何万といった生き物が命を落として食肉加工されていきます。
私達はいつからか、選ぶことを放棄してはいませんか。
スーパーに行けば食肉が並んでいる、豚や牛という生き物の形、鳴き声は知っているけれどもそれらが死ぬ瞬間を目にしたことはありません。生きた動物の死体と、今夜のカレーの豚バラ肉が結びついていないのです。
『東京喰種』はそうした世界の残酷さを「人間が屠られる側」の世界から描き出して私達に伝えています。
選ぶことの辛さ、選ばれないことの辛さ、生きることの無情さ。
そうした、できることなら避けて通りたいことがらをこれでもかと見せつけてくるのです。
それでも、その作品に私達が魅力を感じてしまうのは、そこに圧倒的な「生」を見るからでしょう。
生きることの尊さ、美しさを、『東京喰種』はその独特の世界観でもって私達に教えてくれるのです。
もしまだ観たことがない、漫画を読んだことがない、という方は是非この機会に触れてみてはいかがでしょうか。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

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