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P.A.WORKSの「お仕事シリーズ」をはじめ、特定の職業にフォーカスしたアニメ作品は「お仕事アニメ」や「お仕事もの」と呼ばれ、人気ジャンルの一つになっています。
このお仕事アニメというジャンルは、よく「働きたくなるアニメ！」や「これを観ると明日からのお仕事が楽しくなる！」というアオリで紹介されていますが、果たして本当に働きたくなるアニメなのでしょうか？

特に人気と知名度の高い5つのアニメをピックアップし、徹底検証したいと思います！

アニメ制作の楽しさと苦しさを描いた「SHIROBAKO」

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2014年10月～2015年3月に放送された『SHIROBAKO』は、P.A.WORKSのお仕事シリーズ第2弾として制作されたお仕事アニメの決定版ですね。
監督は『ガールズ&パンツァー』などで知られる水島努さん。
高校時代に同じアニメ同好会で活動していた女子5人が社会人となり、それぞれ自身の得意分野でアニメーション業界へと入り、忙しなくも奮闘する日々を描いた群像劇です。

この『SHIROBAKO』がお仕事アニメの決定版とされる最大の理由は、今まで語られていそうで殆ど語られていなかったアニメーション業界の裏側をかなり克明に描写しているからです。
アニメ制作の楽しさ、尊さ、技術屋のスゴさといった輝かしい部分ばかりでなく、ギスギスした現場の厳しさや苦悩、大人の汚さ、どうにもならないもどかしさといった陰の部分までも（ある程度ブレーキは踏みつつも）キッチリと表現されています。

「アニメ制作は大変だ」という話は聞いていても、実際どれくらい大変なのかなと興味を持っているアニメファンはかなり多いと思いますが、この作品はそのリクエストにしっかりと応えつつ、娯楽作品としても抜群に楽しめる渾身の一作となっています。
だからこそ、アニメ制作を将来の仕事にしたいと考えている人にとっては、厳しい現実を突きつけられるアニメでもあります。

名物祭りを現実に生み出した「花咲くいろは」

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P.A.WORKSのお仕事シリーズ第1弾として制作された『花咲くいろは』も、『SHIROBAKO』に負けず劣らず高い評価を得ています。
2011年に放送された本作は、母親に半ば見捨てられてしまった主人公・松前緒花が石川県の温泉旅館「喜翆荘」に住み込みで働く日常を描いたオリジナルアニメです。
当時のアニメ業界では、日常ものと言えば『けいおん！』に代表される学校を舞台とした作品が大半を占めていた為、職場を舞台とするアニメは比較的珍しい部類でした。

この『花咲くいろは』のスゴいところは、アニメであるのと同時に現実を描いているところです。

舞台の喜翆荘は架空の旅館ですが、モデルとなる旅館があります。
白雲楼ホテルという温泉ホテルです。

そこはアニメ放送よりずっと前に倒産していて、解体までされていた「夢の跡」。
言うなればバッドエンドを迎えたホテルです。
本作を最後まで観た人であれば、そこを敢えてモデルにした理由もわかるかと思いますが、現実の厳しさを思い知らされる筋書きになっています。

ただ、『花咲くいろは』は厳しさだけを描いたアニメではありません。
作中に登場する架空の神事「ぼんぼり祭り」は石川県の湯涌温泉で実際に行われ、「湯涌ぼんぼり祭り」という名称で毎年行われる恒例行事となりました。

それは本作が愛された証拠であり、アニメを観て「これと同じ事をしたい！」と思った人が沢山いた証でもあります。
という事は、『花咲くいろは』を観て旅館でのお仕事に興味を持った人も、少なからずいるのではないかと推察できます。

ゲーム制作への情熱と意義が詰まった「NEW GAME！」

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2016年夏に1期、2017年夏に2期が放送され好評を博した『NEW GAME！』もお仕事アニメの代表ですね。
原作はまんがタイムきららキャラットで連載されている得能正太郎先生による四コママンガで、ゲーム会社「イーグルジャンプ」を舞台に繰り広げられる女性たちのゲーム制作風景が描かれています。

いわゆる「きらら系アニメ」なので、ユルふわな雰囲気がメインなんですが、制作現場特有の修羅場や人間関係の機微がしっかりと表現されていて、場面によっては胸を締め付けられるような思いをする事もあります。
元々は主人公・涼風青葉が作中で言い放った独り言「今日も一日がんばるぞい！」がネット上でウケて人気に火が点きましたが、アニメ1期が終了する頃にはお仕事ものとしての印象が上回り、人気作として定着した印象です。

特に印象深いシーンは、アニメ2期6話です。
初めてゲームのキャラクターデザインを任される事になった青葉が商業戦略の観点からキービジュアル担当から外されてしまう……というエピソードで、このお話には仕事の厳しさ、理不尽さ、やるせなさが詰まっています。
そして、そんな憂き目に遭ってもゲームとゲーム制作を愛し続ける青葉の姿に「自分もゲームを作ってみたい」と思った視聴者はきっといるのではないでしょうか。

お仕事よりも恋愛が大事！？な人々が魅力の「WORKING!!」

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ここまでは仕事の楽しさと切実さを描いた作品を紹介してきましたが、次は敢えて仕事がメインではない作品をご紹介します。
高津カリノ先生がヤングガンガン誌上およびWEB上で連載していた『WORKING!!』です。
前者は「犬組」、後者は「猫組」と呼ばれ、どちらもA-1 Pictures制作でアニメ化されましたが、特に「犬組」は3期まで作られる大ヒット作になりました。

本作はファミリーレストラン「ワグナリア」で働く人々を描いたアニメで、ジャンルとしては立派なお仕事ものです。
ですが、仕事風景をメインとしたエピソードは極めて少なく、この作品で最も力を入れて描写されているのは職場恋愛であり、登場人物たちによる狂演です。
アクの強いキャラクターたちがワイワイと個性をぶつけ合う様を面白おかしく描いたラブコメディですね。

現実に即した設定で進行する作品が多いお仕事アニメにおいて、帯刀したウエイトレスが普通に登場する『WORKING!!』は異端と言えば異端です。
恐らくこのアニメを観て「ウエイターやウエイトレスは素敵な職業だ！」と思う人はそう多くないでしょう。

しかし本作は大ヒットを記録し、今も根強いファンが沢山います。
面白いからです。
その結果、「ファミレスって楽しい職場なのかな？」と思ってアルバイトを始めてみたファンも結構いるのではないでしょか。

お仕事をキチンと描くだけがお仕事アニメではない、という好例ですね。

寂れたテーマパークが舞台の「甘城ブリリアントパーク」

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『WORKING!!』よりも更に現実離れした設定のお仕事アニメ。それが『甘城ブリリアントパーク』です。
潰れかけていたテーマパーク「甘城ブリリアントパーク」を再建させるというお話ですが、ファンタジー色が非常に強く、他のお仕事アニメとは一線を画した作品です。

テーマパークの再建を現実的な方法で成し遂げるというストーリーではなく、どちらかと言うとテーマパークという非日常の小さな世界をシニカルに、またブラックユーモアたっぷりに描いたコメディですね。
その為、お仕事ものという印象はやや薄まりますが、主人公の可児江西也らクセの強いキャラ達が本気で悩み、本気で働く姿はしっかりと描かれていて、芯の部分にはちゃんと「お仕事」があるアニメでもあります。

「お仕事アニメは現実の厳しさを突きつけて来るからヤだ」という人にオススメの作品ですが、別の厳しさを突きつけられる恐れもあるのでご注意。
ただし、テーマパークを舞台としているだけあってエンターテイメントに富んだ観やすくて面白いアニメなのは保証します。

●まとめ

今回ご紹介した作品以外にも「お仕事アニメ」はたくさんあります。
ただ、その全てが「働きたくなる！」と思うような作品とは限りません。
お仕事アニメと一言で括っても、実際にはその根底にあるテーマや描いている内容によって、「こんな仕事したくない！」と思うような作品もあれば「今やってる仕事を辞めてこれをやりたい！」と思わず本気で考えてしまうような作品もあります。

ここで一つ訴えたいのが、「こんな仕事したくない！」と思わせるアニメが悪い内容とは限らない点です。

例えば今回ピックアップした中の一つ『SHIROBAKO』を観た人の中には「このアニメを観てアニメ制作に携わりたくなった」という人もいれば、「アニメーターを目指そうとしてたけどキツそうだから止めておこうかな」と思った人もいるでしょう。
アニメ制作の辛い面もたくさん描いているからです。

また、『WORKING!!』や『甘城ブリリアントパーク』のように現実とはかけ離れた設定のお仕事アニメもあります。
それらを観て現実のお仕事の参考にするのは難しいでしょう。
でも、「働く事の楽しさ」ではなく「職場の仲間とワイワイやる楽しさ」なら十分に伝わってきますし、それは現実世界でも参考になり得ます。

これから既存のお仕事アニメを観てみようという方、また今後放送されるお仕事アニメに着目しようとしている方は、「働きたくなるアニメ」という言葉に惑わされず、先入観を持たずに観る事をオススメします。
それが面白いアニメなら、自然と得るものはある筈です。