アニメ・漫画・ゲーム・コスプレなどの気になるコンテンツ情報が盛りだくさん!

MENU

20

Apr

切なくて、でも温かい。アニメ『3月のライオン』の魅力

出典 : (c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会 : TVアニメ「3月のライオン」公式サイト

『3月のライオン』とは、恋愛少女漫画「ハチミツとクローバー」で大ヒットした人気漫画家・羽海野 チカ先生原作の将棋漫画です。
連載発表当初は、淡く甘酸っぱい恋模様を描くのが得意な羽海野先生に果たして将棋漫画が描けるのか、とSNS上で大きな話題を集めました。
しかし、蓋を開けてみれば、新連載作品こと3月のライオンは、羽海野先生独特の心が温まるようなテイストが加えられた、優しくて温かい将棋漫画でした。

今回紹介させていただくのは、そんな名作将棋漫画『3月のライオン』のアニメ化作品となります。

【あらすじ】

幼い頃に車の事故で両親を失った桐山 零は、父の友人である棋士、幸田 柾近に内弟子として迎えられた。
将棋の才能があった零は、幸田家で将棋の経験を積んでいくうちに瞬く間に腕をあげていき、やがて齢15歳にしてプロデビューを果たす。
プロとしての経済力を手に入れた零は、上手く溶け込めていなかった幸田家から逃げるように一人暮らしを始め、一年遅れて私立駒橋高校へと入学する。
しかし、元々引っ込み思案なことに加えて一歳年上であると言う負い目も重なり、零は友達ができずにいた。
そんな高校での不和だけでなく、対局でもよい結果が残せないでいた零は、自身が停滞していることを感じる。
そんな最中、棋院の先輩に無理やり連れて行かれたバーで、酒を強引に飲まされた零は泥酔して路上で倒れてしまう。
そんな彼は、偶然通りかかった川本あかねに介抱される。
それが縁となって、個性的ながらも温かい川本家と孤独だった零の交流が始まった。

【見所】

・孤独な少年棋士と優しい世界

出典 : (c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会 : TVアニメ「3月のライオン」公式サイト

・・孤独な少年棋士、桐山 零

今作の主人公、桐山 零は天才的な将棋センスを持ちながら、人並みの心を持ってしまっている少年です。
将棋のことは幼い頃の彼曰く、「あまり好きではない」でしたが、忙しい父と触れ合うための手段として、友達も特にいない彼は、毎日のように将棋に励んでいました。

その後、両親と死別してしまった彼は、零を快く思わない叔母さんから施設に預けられそうになった際、そこに居合わせた幸田に救いを求めるようにして内弟子となります。
しかし、それが彼の悲劇の幕開けでもありました。幸田の家には既に子供が二人いたのです。

・・幸田家での零の受難

幸田 柾近は、零いわく「将棋が中心の人間」であり、彼に愛されるには将棋で強くなるほかありません。
そのため、彼の子供たちは幸田に自分を見てもらうために日夜将棋に励んできました。
しかし、内弟子として零がやってきたことが彼らの運命を狂わせてしまいます。
零より4歳年上である姉の香子も、彼と同い年である歩も、零にはかなわなかったのです。
実の子供でもないのに、誰よりも父から愛されているように見えた零に、香子も歩も激しく嫉妬し、やがて二人は全てを諦めて将棋の道から逸れていってしまいます。

彼らの運命を狂わせてしまったことを零自身も重く受け止めており、かねてより自身が幸田家の幸せを壊す邪魔者であると思っていた彼は、プロデビューを機に自ら幸田家から去っていきました。

学校にも家にも、どこにも居場所のない孤独の棋士。
自身が孤独であることを当たり前であると考え、しかし年頃の少年の様に人のぬくもりを求める。
それが、物語開始以前の桐山 零という人物なのです。

・・零を温かい世界に迎え入れるやさしい人達

出典 : (c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会 : TVアニメ「3月のライオン」公式サイト

物語は、そんな孤独な彼が、川本家と交流を持ち始めた直後から始まります。
川本家は4人家族で、厳しさと優しさを併せ持つ将棋好きの祖父の相米次、料理上手の母親分・長女あかり、ドジッコで誰より優しい次女のひなた、天真爛漫でいろんなものに興味津々の三女モモで構成されています。
長女のあかりが酔いつぶれた零を解放したことをきっかけに、彼女たちは孤独な零を我が家に招き入れて食事を共にするようになりました。

最初は戸惑いがちだった零も、徐々に川本家が自分にとってかけがえのない存在になっていくことを意識し、次第に彼女達から守られるばかりでなく、彼女たちを守ることのできる存在になりたいと考えるようになります。

今まで積極的に他者と触れ合ってこなかったこともあって、彼女達の守り方や手段は不器用そのもの。一生懸命やっているのに、どこかズレているような零の行動にはついつい見ていて笑みがこぼれてしまいます。

・零の立つ戦場、将棋の世界

出典 : (c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会 : TVアニメ「3月のライオン」公式サイト

・・零の親友、二階堂 晴信

零には学校にも家にも友人はいませんでしたが、そんな彼にも一人だけ友人と呼べる存在ができるようになります。
それが、二階堂 晴信でした。
彼と零は同い年で、昔から将棋大会で度々対局する場面があった因縁から一方的に零をライバル扱いし、半ば押しかける形で彼の下を訪れるようになります。
零との対局には、とにかく並々ならぬ執念を燃やし、対局前には同じ棋院の先輩棋士に「気合が入りすぎて違う漫画の人みたいになってる」と言わしめるほどシリアスな作画になってしまうほど。

しかし、晴信はただ落ち着きがないだけのキャラクターではありません。
棋士としてのプライドや矜持が強く、誰よりも真剣勝負へのこだわりを持っています。
彼は生まれつき身体が弱いので、対局中に気分を悪くすることも決して少なくはありませんが、それでも自身に情けをかけられることを嫌がり、負ける理由に自分の体を使うことは決してない少年です。

将棋に対するひたむきな姿勢を持ち、時に激励を送り、時に負け惜しみを送ってくれる晴信と過ごすうちに、やがて零も彼のことをライバルと認識するようになっていきます。

・・重いものを背負った大人のプロ棋士たち

零は将棋のプロとして生きるうちにさまざまな人間と対局する機会していくことになります。
零よりも強く、彼の奢った姿勢を正してくれた晴信の兄弟子である島田 開や、零の姉である香子と不倫していると思われていた後藤 正宗など、後々主要なキャラクターとなる人物もいますが、中には一度限りの登場ながら、零の心に強く印象づけられるような大人の棋士もいます。

彼らは皆違うものを背負っており、それが零の心を蝕みます。
勝って最後のクリスマスを娘と祝いたかった離婚の決定した男性棋士や、対戦相手の身体が限界であることを利用し、勝つためにわざと時間をぎりぎりまで引き延ばした棋士など、置かれた環境から将棋に対する姿勢・熱意までキャラクターによって、その背景は異なります。

そこには、綺麗ごとだけでは済まない勝負の世界が、非常に生々しく描かれています。

【まとめ】

『3月のライオン』は確かに将棋をモチーフとしたアニメ作品ですが、将棋に関する知識はまったく必要ありません
もちろん、将棋に精通していれば作中に出てくる将棋関連のワードを理解できるので、一層楽しめることは間違いないでしょう。
しかし、『3月のライオン』という作品において、中心となるのは「将棋の戦術」ではなく「将棋をうつ者」だからです。
この作品は、将棋に携わったものの生き方や、プロ棋士という人生の歩み方を描写する、いわばヒューマンドラマとしての面が非常に強いのです。

「将棋アニメだから」と敬遠してる方も心配ありません。
このアニメを見る上で必要なものは、他者に共感することのできる心だけです。
世の中は冷たい人ばかりではなく、温かい人達も確かに存在していることを教えてくれる優しいアニメです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です