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Apr

【推しの子】第1話がバズった理由を徹底検証! 「起」に込めた90分間の起承転結


(画像引用 : Amazon)

2023年春クールの話題作として、今最も注目を集めているアニメ【推しの子】。その第1話および主題歌が大々的にバズった理由を、様々な角度から検証!
あの90分間に込められた制作陣の狙いと想いに迫ります!

実は意外と少ない「1話が神回」


(画像引用 : TVアニメ【推しの子】公式サイト https://ichigoproduction.com/

2023年4月12日にアニメ第1話「Mother and Children」が放送され、Twitterの世界トレンド1位を獲得するなど爆発的な広がりを見せている【推しの子】。
原作人気の高さと圧倒的な宣伝量から、2023春アニメの目玉として前評判の高い作品でしたが、想像以上のバスり方でした。

というのも、例えどれほどの人気作であっても、1話でここまで火が点くケースは稀だからです。
のちに社会現象となった『鬼滅の刃』も、本格的に人気爆発となったのは第19話「ヒノカミ」が放送されてから。
1話が「神回」と呼ばれるほど大好評だったケースは決して多くありません。

これには相応の理由があります。
第1話というのは基本、人気エピソードにはなり辛い要素が多数あるからです。

まず情報量の多さ

特にオリジナル作品や原作やあらすじに目を通していない人の場合、その作品がどんな物語でどのような方向性なのか、主人公の目的は何なのか、どんなキャラが出てくるのか、人間関係はどうなっているのか……など、非常に多くの情報を頭に入れなければなりません。
原作組はストーリーやキャラを既に知っている状態ですが、それでも作画や声がどんな感じか、演出はどうか、原作と比べて何処が違うか……など、作品に愛着がある事で別の心配事が増え、結局は情報過多になってしまいます。
これを億劫に感じてしまい、なかなか新しいアニメを観始める事が出来ない(一度観始めると2話目以降はスイスイ観られる)という人は沢山いると思われます。

次に物語の導入という点。
1話というのは作品の世界観や主人公の人となりなど、紹介をしなければならない事が沢山あります。
なので、物語に引き込むよりもキャラの顔見せや舞台の説明を優先するようなケースも多く、純粋な面白さが出難いのです。

更に、原作ありのアニメの場合は単純に「作者がまだ手探り状態」というパターンもあります。
特に初連載作品の場合は、まだ作者が成長前で1話目の時点ではそれほど面白くなく、連載をこなしていく内に力を付けて作品のパワーが増していく……という事例が多々あります。
当然その場合は1話が神回にはなり得ません。

このように、第1話はスタッフ側もユーザー側も余裕がない状態なので、1話目でバズる難易度は非常に高いと言えます。
しかし【推しの子】はこれらの問題点を全てクリアし、スタートダッシュに成功しました。

ここからは、そのクリアした要因を検証していきます。

90分の中に詰め込んだ「起承転結」と「起」


(画像引用 : TVアニメ【推しの子】公式サイト https://ichigoproduction.com/

「情報量の多さ」と「物語の導入」をクリアできた最大の要因は、1話を90分拡大版という異例の放送枠にした事です。
これは通常の約4話分に相当する放送時間。
その為、視聴者もじっくり腰を据えて各種情報を受け止める事が出来たのです。

何より重要なのは、この1話だけで「起承転結」を表現できている点です。
アクアの前世ゴローとアイの出会いに始まり、ゴローの死と転生を「起」、アイと双子の生活を「承」、アイの死を「転」、そしてアイのビデオレターが「結」
90分という潤沢な時間を用いて起伏の激しいストーリーをじっくりと見せる事が出来た為、単なる導入や顔見せでは終わらず、一つの物語を見届けたという満足感や感動が視聴者に提供され、1話でありながら「神回」になり得たのです。

しかも、この1話は【推しの子】という物語における「起」でもあります。

本作は「転生もの」「アイドル・芸能もの」「ラブコメ」といった様々なジャンルを内包している作品ですが、物語の本筋となるのは「復讐」です。
その復讐心がアクアに芽生えるまでの過程を、1話ではじっくりと描いています。
つまり、「起承転結」と「起」を兼ね備えたエピソードという表現が出来るのです。

プロローグを長く書く事で、読み応えのある「起」になっている作品は沢山あります。
しかし、「起」の中にシリアスとコメディを大きな振れ幅で収め、かつサプライズ展開を幾つも用意している作品となると、滅多にお目にかかれません。
【推しの子】の1話は単なる起承転結のストーリーではなく、興味を惹いて、笑えて、驚かされて、泣けるという「感情のジェットコースター」を作るレベルの起承転結が設けられているのです。

ちなみに、この作品の原作を手掛けているのは『かぐや様は告らせたい』でも知られる赤坂アカ先生です。
既に『かぐや様』で成功を収めている作者とあって、その実力は折り紙付き。
1話が神回になり辛い理由として挙げた三つめの「作者がまだ未熟」が本作に当てはまらないのは、言うまでもない事でしょう。

初回90分放送は、話題性というメリットこそあるものの、一歩間違えばダレて離脱する視聴者が大勢出てくるリスクもあり、必ずしも有効な手法とは限りません。
しかし【推しの子】に限って言えば、最高の選択だったと断言できます。

大胆な物語に「丁寧さ」を上乗せ


(画像引用 : TVアニメ【推しの子】公式サイト https://ichigoproduction.com/)

【推しの子】の1話がバズった理由は他にもあります。
アニメ制作スタッフによる「丁寧な作品作り」です。

本作の1話は、アニメ独自のオリジナル要素はほとんどありません
一部セリフの変更、場面の順番の入れ換え、重曹を嘗めるシーン等の追加、ゴローの本名や黒川あかね等の今後登場するキャラの顔見せ……など細かい部分の追加はありますが、それ以外は概ね原作通りです。
また、絵柄に関しても原作の作画担当である横槍メンゴ先生の絵を完璧に踏襲しており、独自のクセはないに等しいと言えます。

総じて言えるのは、アニメ【推しの子】は余計な味付けを一切せず、原作のブラッシュアップに徹しているという事です。
苺プロの事務所に原作ではいなかった男性職員を追加していましたが、その人物も帰宅のセリフのみで個性となるような言動はさせず、「苺プロにはミヤコ以外にもちゃんと事務職を行っているスタッフがいる」という情報を提示するだけ。
原作の補足・補強を行ってはいても、そこが目立つようにはしていません。

この事から見えるのは、原作ファンにとってノイズとなる要素を徹底的に排除するというアニメ制作スタッフの姿勢です。

原作ファンの大半はアニメ化された事を喜び、純粋にアニメを楽しみたいという気持ちを持っていますが、同時に原作を蔑ろにするようなアニメ化だったら許せないという愛ゆえの過激さも孕んでいます。
人気作でありながら、原作ファンを落胆させ成功に至らなかったアニメは数知れず。
原作知名度が高ければ高いほど、原作との乖離は大きなノイズとなって作品評価に直結します。

その影響を最も受けるのが第1話なのは言うまでもないでしょう。
2話以降は離脱と慣れで徐々に不評は減っていきますが、1話の段階では物語の出来そのものよりも原作との違いを指摘する声の方が大きいケースがままあります。

もし、推しの子の1話にオリジナルエピソードがあったり、絵柄が原作と大きく違っていたりしたら、それらがノイズとなって純粋に楽しめず不満に思う原作ファンが大勢いたかもしれません。
それを完全に排除したのも、1話がバズった大きな理由と言えます。

ただ、一つだけ原作と大きく違う点があります。
インタビューのカットです。

アニメ1話で映像化された原作1巻では、各話の冒頭に「数年後の各主要キャラが誰かからインタビューを受けている場面」が挿入されています。
しかしそのインタビューは、アイを除いて全てカットされました。
このインタビューのシーンは本作のその後を示唆する明確な伏線であり、多くの考察と議論を生みました。

しかし、このカットに関して文句を言う原作ファンは殆ど見受けられません。
理由は主に「原作通りにインタビューを毎回挿入するとアニメだとテンポが悪くなる」「1話で必ず映像化しなければならないシーンではない」の二つだと思われます。
今後の回で挿入されるかもしれませんし、仮にされなくても物語は問題なく成立するので、不満を訴える必要がないのです。

この事からも、平牧大輔監督をはじめとしたアニメ制作陣の取捨選択、作品解像度の精度はかなり高い事が窺えます。
単に原作をなぞるのではなく、原作が大胆かつ起伏の激しいストーリーなので、アニメは敢えて丁寧さに徹して原作の魅力をよりクリアにする事を心掛けた……という狙いがあったのだと推察できます。

主題歌「アイドル」に込められたものとは?


(画像引用 : Amazon)

本作のOPテーマ曲は、YOASOBIの「アイドル」です。
この曲、とんでもない事になっています。

第1話放送直後にYoutubeで公開されたMVは、僅か13日で4000万再生を突破。
400万じゃなく4000万です。
ストリーミングやダウンロードでも驚異的な数字を叩き出しており、2023年度のNo.1ヒットソングになる可能性が極めて高い情勢です。

この曲の歌詞は、赤坂先生の書き下ろし小説「45510」が元になっています。
小説の内容は、かつてB小町に所属していたアイの同僚が、結成当初に自分達だけで作った動画を見ながら当時を振り返る……というもの。
アイに対して抱いていた複雑な心境が「その他大勢の一人」の視点から綴られています。

「アイドル」の歌詞は1番が「ファン」、2番が小説で描かれた「その他大勢の一人」、3番が「アイ本人」の視点になっています。
周囲から見た「偶像のアイ」と、内面から見た「等身大のアイ」の対比が描かれている……という構造です。
言うなれば、アニメ1話(原作1巻)では描ききれなかったB小町内の軋轢やアイに向けられていた感情を補完し、アイの生涯を表現した楽曲なのです。

曲が流れたのはラストなので、この「アイドル」が大ヒットした事自体は、1話がバズった事と直接関係はありません。
しかし、これだけのヒットを記録する楽曲が生み出されるだけの魅力をアイというキャラが持っていた、と言う事は出来ます。
何故なら、「アイドル」はアイそのものを歌った歌だからです。

アイをイメージして作られたこの曲は、ファンとの一体感を打ち出したアイドルソングのようでもあり、聞き手の内面を抉るタイプのボカロPが作った曲のようでもあります。
現実のアイドルと架空のアイドル、その両方を内包しているかのようです。

この多面性、それでいてアイドルという一つの「道」を貫いている楽曲は、問答無用でアイのテーマソングであり、彼女の魅力が残酷なまでに詰まっています。

・YOASOBI「アイドル」 Official Music Video
https://www.youtube.com/watch?v=ZRtdQ81jPUQ

・【推しの子】ノンクレジットオープニング|YOASOBI「アイドル」
https://www.youtube.com/watch?v=PgBvV9ofjmA

まとめ

本当に凄い1話でしたね!
原作を読んでストーリーは全て頭に入っている筈なのに、思わず心が震えました。

何より嬉しいのが、動画工房がこれだけの作品を作ってくれた事。
この作品に賭ける意気込みや熱意、一世を風靡した制作会社の意地とプライドがあの1話に詰まってた気がします。
2話も作画、演出ともに素晴らしく、今後も安心して楽しめそうです!

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