17
Apr
「その透明な嵐に混じらず、見つけ出すんだ」アニメ『ユリ熊嵐』の魅力を紹介
出典 : Amazon.co.jp
『ユリ熊嵐』という作品をご存知でしょうか?『ユリ熊嵐』は、タイトルにある通り百合を題材にした学園モノのアニメです。
この記事では『ユリ熊嵐』の概要や魅力をご紹介。
- 隠喩の意味をうんうんと考えていたい方
- 女の子同士の交わりを見ていたい方
こんな望みを持つ、アニメ好きのあなたにおすすめです!
【『ユリ熊嵐』とは?】
『ユリ熊嵐』は、2015年1月〜3月に放送されたオリジナルアニメ作品。ミステリーの要素も入ったシリアスな百合アニメです。
絵柄自体はキュートでデフォルメチックな分、クマや人の残酷さがより印象に残る作品になっています。
作品名の『ユリ熊嵐』は、「百合と熊が出会って嵐が起こる」ということからつけられました。
アニメだけでなく、漫画、小説版なども展開されています。
また幾原邦彦監督の作品としては、初の1クール作品。
監督他作品の『少女革命ウテナ』(全39話)や『輪るピングドラム』(全24話)と違って、一気見しやすいのが嬉しいポイントです。
【あらすじ】
大まかなストーリーは以下の通りです。
「ある時、小惑星クマリアが宇宙で爆発し、それが流星群となって地球に降り注いだ。するとクマたちが一斉決起!クマは人を食べるようになり、人はクマを撃つようになる。そしてクマの脅威を防ぐため、いつしか人とクマの間に「断絶の壁」が建てられた。
時は流れ、またある日。人間界の「嵐ヶ丘学園」に百合城銀子と百合ヶ咲るるが転校してくる。二人の正体は人に化けたクマ。彼女らはクラスで孤立した少女、椿輝紅羽に近づく。そして百合城銀子と百合ヶ咲るるの転校から少ししてある事件が起こる。椿輝紅羽の友人であり恋人、泉乃純花がクマに殺されてしまったのだ。」
誰が純花を食べたのか?なぜ百合城銀子は紅羽に近づくのか?などなど、第一話から最終話まで謎が謎を呼ぶ展開になっています。
【スタッフ・キャスト】
『ユリ熊嵐』を製作した主なスタッフ・キャストの方々、および代表作は以下の通りです(敬称略)。
スタッフ
- 原作:イクニゴマモナカ
- 監督:幾原邦彦(『輪るピングドラム』など)
- シリーズ構成:幾原邦彦、伊神貴世 (『魔法少女サイト』など)
- キャラクターデザイン:住本悦子(『徒然チルドレン』。他作品では作画監督も)
- アニメーション制作:SILVER LINK(『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』)
キャスト
- 百合城銀子:荒川美穂(『輪るピングドラム』高倉陽毬、ペンギン3号)
- 百合ヶ咲るる:生田善子(『輪るピングドラム』柏木雪菜)
- 椿輝紅羽:山根希美(『アズールレーン / 碧藍航線』 ジャベリン、ヨーク、ペンシルベニア)
【『ユリ熊嵐』のここが面白い!】
『ユリ熊嵐』の魅力的なポイントをいくつかご紹介します。
肉感的なユリ
『ユリ熊嵐』というタイトルの通り、この作品のテーマの一つは「百合」です。しかしコメディタッチのようなものではありません。女性と女性が交わるのです。
「百合」のシーンは頻繁に、そして唐突に流れます。割とすぐにはだけますし、シーンが変われば当たり前のようにベッドの上で裸になっていたり…。『ユリ熊嵐』の百合は軽い百合ではなく、洋画のような肉感があるものとなっています。
メタファー(隠喩)に塗れたストーリー展開
『ユリ熊嵐』の監督は、『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』を手がけた幾原邦彦監督。その2作品の例にもれず、本作もメタファーが多用された作品になっています。
言葉で言えば、「約束のキス」や「透明な嵐」など、意味深なワードの数々。またビジュアル面で言えば第4話「私はキスがもらえない」に登場する蜂など。
メタファーの多さから、『ユリ熊嵐』を完全に理解するのは困難です。しかし「このメタファーは何を表現しているのだろう」など、考察を楽しめるのが『ユリ熊嵐』の魅力です。
【ユリ熊嵐の世界観】
「排除」する人間と、「好き」を求めるクマ
『ユリ熊嵐』の構造として、人とクマの対立構造が挙げられます。この対立構造は単なる敵同士、というものではありません。
人とクマそれぞれに、大まかに以下の性質が見られるのです。
- 人=異質なものを排除する生き物
- クマ=好きを食べる生き物
人=異質なものを排除する生き物
『ユリ熊嵐』の舞台である学園内には、「クマから身を守るためには、友達といなくてはならない」という常識があります。
現実の学校でも、近くで不審者が出ると「一人で行動しないでください」といった指示をされますよね?
自身を守るために、群れを成す。それがこの学園に染み付いた常識です。そして、群れに馴染めないものを排除する。
これが『ユリ熊嵐』における「透明な嵐」です。
つまり「透明な嵐」は、現代社会における「いじめ」のことを指している、と考えられます。
『ユリ熊嵐』全編を通して、紅羽は「透明な嵐」に翻弄されます。
紅羽自身も心を閉ざし、人と積極的に話す、というキャラクターではありません。
そして紅羽の心情としても、「排除」の気持ちが頻繁に描かれています。
紅羽の排除とは「クマを許さない」というもの。
紅羽の母はクマに殺されました。母を殺したクマを殺すために、紅羽は銃の訓練を欠かしません。
このように『ユリ熊嵐』においては、人は「悪」に注目しそれを排除しようとする生き物、として描かれています。
クマ=好きを食べる生き物
一方のクマは、悪を排除するのとは正反対の行動をとります。それは「好きを追い求める」、ということ。そしてその結果が捕食なのです。『ユリ熊嵐』のクマは、好きになった人間を最終的には食べます。文字通り「食べちゃいたいほどかわいい」というわけです。
『ユリ熊嵐』のクマは、基本獲物を食べるためならなんだってします。例え同じクマでも、捕食の障害となるものは全て排除。
その欲深さはメインキャラクターの銀子も持っています。
銀子の「好き」にまつわる行動がどんな葛藤を引き起こし、どんな結果を引き起こしたのか?これも本作の謎の一つです。
現実においても、人との違いに注目して相手を排除しようとする人間と、自分の好きなことを追い求める人間がいます。
そういった現代社会との接点が垣間見えるのが、『ユリ熊嵐』の魅力の一つです。
人とクマが巻き起こす嵐
本作のタイトル『ユリ熊嵐』は「百合(女性愛)と熊が出会って嵐が起こる」ことから来ている、と述べました。
人である紅羽と、クマである銀子とるるが出会うことで巻き起こる嵐。これも本作の魅力の一つです。
『ユリ熊嵐』全12話の中で、何回も紅羽と銀子・るるは衝突し、またすれ違います。
しかしそういった衝突を乗り越えて、3人は仲を深めていきます。
紅羽と銀子・るるの出会いと交流は、現代社会でいう異文化交流に近いものでしょう。
私たちと、異文化を持つ人々の間には、文化や言語の壁があります。
自分と異なって見えると、なんとなく恐れを抱いてしまう。
しかし交流を重ねるごとに、相手の良さにも目がいくようになります。
そういったコミュニケーションの過程を感じさせてくれるのも、『ユリ熊嵐』の魅力です。
【気になる評判は?】
ネット上では「よくわからない」といった感想が多く見られました。
おそらくメタファーの多さが原因でしょう。
またハマった人も『ユリ熊嵐』の良さをうまく言葉にできない、といった感じです。
そしてハマった人は、自分なりの解釈や考察を書き残しています。この作品が考察好きな人に好かれている、ということでしょう。
【まとめ】
『ユリ熊嵐』の概要や、その魅力を紹介してきました。『ユリ熊嵐』は百合をまっすぐに描いた、ミステリアスな作品です。
この記事を読んで『ユリ熊嵐』が気になった方は、ぜひ第一話を見てみてはいかがでしょうか。